歌舞伎は、
「歌(音楽)」「舞(踊り)」「伎(演技)」
の3要素からなる総合芸術です。
明治以降、近代化の波が押し寄せ、
西洋のリアリズム演劇の影響下に
「新歌舞伎」が次々執筆されます。
そして「歌」「舞」の
要素はしぼみ、せりふと
演技中心になっていきました。
近代歌舞伎が軽視した「歌」「舞」を
取り戻そうと考えたのが、
昨年亡くなった市川猿翁さんでした。
「スーパー歌舞伎」と銘打った作品群は
せりふに現代口語を取り入れながらも、
「宙乗り」
「早替がわり」
「立ち回り」
の演出で、江戸歌舞伎への
回帰を目指しました。
スーパー歌舞伎の記念すべき
第1作「ヤマトタケル」が今月
〔2024年6月〕、大阪松竹座で
上演されています。
タイトルロールを演じるのは、
猿翁さんの孫・市川団子さん。
團子さんは、初舞台を踏んでから
12年が過ぎ、20歳になりました。
昨年は、団子さんら澤瀉屋おもだかや一門に
とって試練の年でした。
一門を率いた四代目市川猿之助さんが
両親への自殺ほう助罪で有罪判決を受け、
長い間、総帥だった猿翁さんは83歳で、
息を引き取りました。
渦中にあって団子さんは、
急きょ猿之助さんの代役を勤めるなど、
奮闘してきました。
「ヤマトタケル」は、猿翁さんと
作者である哲学者・梅原猛さんの
熱い友情から生まれた作品です。
親子の確執、青春の夢と挫折が描かれ
ています。
〈天翔あまがける心から私は多くの
ことをした。天翔ける心、それがこの私だ〉
という主人公のせりふを読んだ猿翁さんが
「私のことを書いてくださったのですね」
と梅原さんに感謝を述べると、
梅原さんは
「私のことでもあるのだよ」
と答えられたといいいます。
「私たちには同じ血が流れている」
と互いに深く共感されたと言います。
タケルは無敵の英雄ではなく、
痛みや悔恨を抱えた人物。
その人物像には、後ろ盾のない
「劇界の孤児」だった猿翁の人生、
哲学の枠組みを打ち破り、
大胆な発想で時に異端視された
梅原さんの歩みも透けて見えます。
梅原さんは
「異端児が大きな仕事をして、
報われずに死んでいく。
報われることを期待もしないで死んで
いく英雄の悲劇が描きたかった」
と生前、語っています。
幕切れで、タケルの魂は白鳥として
よみがえり、天高く舞い上がる。
その姿には、亡き猿翁さんと梅原さん
2人を追いかけ、未来へ羽ばたく
団子さんが重なります。
団子さんに心からの声援を
おくりたいですね。
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