シリーズ「現場から、」です。都内の大学病院では救急の患者に少しでも新型コロナを疑う症状があれば念のため、感染者と同様の対応を取らざるを得ません。感染者が減っても、ひっ迫が続く救急医療の現場を取材しました。

 救急搬送されてきたのは90歳の女性。しきりに息苦しさを訴えていました。

 「昨日から咳が出てきて、今日がひどいと言っています」(消防)

 ここは日本医科大学付属病院の「高度救命救急センター」。コロナ禍の今、少しでもコロナが疑われる症状があればスタッフ全員、防護衣などをフル装備し対応しています。

 「心臓の動き、少し悪いなと思って」

 三宅のどか医師が真っ先に疑ったのは心筋梗塞。しかし、コロナ感染の可能性は捨てきれません。

 「コロナの人と会ったとか、そういうのない?」(日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 三宅のどか医師)
 「ない。私自身、家出ない」(患者)

 三宅医師は上司に判断を仰ぎました。
 「呼吸苦だけでなので、COVID(コロナ)対応解除して」
 「レントゲンとCTだな」(上司)
 「CTまで撮ります?」
 「撮りましょう」(上司)

 さらに肺のCTを撮って見極めることに。しかし、CT画像の診断でもコロナの可能性は否定できませんでした。

 「コロナの可能性ある?」(患者)
 「多分、ないんじゃないかと思うけども」

 「コロナを疑わなくちゃいけないから、治療が遅れてしまう。カテーテル室やオペ室でも、全部、養生して陰圧にしてっていうところで、時間がかかってしまいますし」(日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 三宅のどか医師)

 女性はコロナ専用病床に入院し、心臓の治療をしつつ、PCR検査の結果を待つことになりました。

 こうした“コロナ疑い”の患者は、病床を圧迫する要因となっています。去年4月以降、この救命救急センターに搬送されてきた患者は2052人。その4人に1人、525人がコロナ専用病床に入院しました。しかし、このうち4分の3にあたる393人は、実際はコロナではありませんでした。先ほどの90歳の女性も、のちに“コロナではない”と判明しましたが、それが分かるまでの間・・・

 「今ね、呼吸の疑い(コロナ疑い)の病床が取れないの」

 コロナ専用病床は満床となり、新たな入院患者を断る事態が起きていました。感染者は徐々に減少していますが、コロナ禍である限り、救急の現場はひっ迫し続けるのです。

 「もしコロナがなければ、受け入れて助けられたような患者がいたのにとか、コロナの影響で一般のコロナじゃない救急患者にもかなり影響が出ていて、通常だったら受けられたけど今、受けられないってところで、ちょっと歯がゆい思いをすることはあります」(日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 三宅のどか医師)
(22日11:00)

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