“本当の家康”の集大成となった「鯉のエピソード」は、講談「鈴木久三郎 鯉の御意見」にもなっている逸話(江戸中期の兵法家・大道寺友山の著書「岩淵夜話」)を見事にアレンジした。

 恐ろしい相手(信長)からの贈り物ならば、鯉1匹と家臣1人、どちらが大切かも分からなくなる、という“忠臣・久三郎の諫言”。数々の歴史小説を生んだ作家・山岡荘八のベストセラー「徳川家康」(全26巻)第4巻「葦かびの巻」にも登場し、同作を原作とした83年の大河においては石川数正(江原真二郎)の諫言(第11回「興亡の城」)として描かれた。

 “戦なき世”と引き換えに失われていった家康の日々の、ささやかな幸せが、家族や家臣団と一緒に笑う光景とともによみがえった。

 「岡崎時代に戻る終わり方にして、この作品本来のテイスト、本来の家康に戻して幕を閉じようと(笑)。どのキャラクターも自分の想像を超える働きをしてくれましたが、やっぱり一番は家康ですかね。こんなにも可哀想な人になるなんて、書き始める前は思っていなかったので。書いているうちに辿り着いた、自分の想像を超える境地です。天下を獲っても可哀想と思われる家康なんて、今までいなかったんじゃないでしょうか。そういう意味で、自分なりの新しい家康像は出来上がったんじゃないか、そこへの大きな挑戦はやり切れたんじゃないかなと我ながら思います」

◇「どうする家康」作・古沢良太氏インタビュー

 嵐の松本潤(40)が主演を務めたNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は17日、15分拡大で最終回(第48回)「神の君へ」が放送され、完結した。齡70の主人公・徳川家康は、豊臣との最終決戦「大坂夏の陣」(慶長20年、1615年)に勝利。“戦なき世”の宿願を果たした。翌年、天に召され…時は永禄10年(1567年)へ。ラスト約25分が“走馬灯&新規回想”という大河最終回としては極めて異例&異色の展開となった。第24回「築山に集え!」(6月25日)と第36回「於愛日記」(9月24日)に登場した「松平信康と五徳が祝言を挙げた時の鯉」の伏線を最後の最後に回収。大河初挑戦となった脚本家・古沢良太氏(50)に最終回に込めた思い、作劇・執筆の舞台裏を聞いた。

WACOCA: People, Life, Style.