ワクチンの接種を巡って、愛知県西尾市の副市長が、スギ薬局を展開する「スギホールディングス」の会長夫妻の予約を優先確保するよう、便宜を図っていたとして謝罪しました。

■秘書とやり取り10回前後・・・感じた“強い圧力”

 愛知県西尾市は11日、“特定の市民”に対し、ワクチン接種の予約枠を優先的に確保していたことが判明し、謝罪しました。

 市が便宜を図ったのは、ドラッグストアのスギ薬局などを全国に1400店舗以上展開する、「スギホールディングス」の杉浦広一会長と、妻で相談役の昭子氏です。

 西尾市・簗瀬健康福祉部長:「4月12日にスギホールディングス秘書から健康課保健センターに電話がありました。会長夫妻のワクチン接種について、4月19日から始まる高齢者入所施設、『その枠で受けることができないのか』と」

 市は当初、高齢者入所施設の枠では接種ができないことを伝えましたが・・・。

 スギホールディングス秘書:「夫妻は薬剤師であるので医療従事者の枠で絡められませんか?」
 西尾市担当者:「医療従事者の接種は県の実施のため、市では行っていません」
 スギホールディング秘書:「会長の意向が強い。何とかならないでしょうか」

 市によりますと、秘書は一旦断っても、また別の理由で要請を続けたといいます。秘書とのやり取りは、10回前後にも上り、市の職員は通常の要請ではなく、強い圧力を感じたといいます。

 西尾市・簗瀬健康福祉部長:「かなりしつこかったと。再三にわたり要請があったと」

 最終的には、近藤芳英副市長が、会長夫妻に便宜を図ることを決めたということです。

 西尾市・近藤芳英副市長:「会長ご夫妻には、西尾市はこれまで様々な形でご支援を頂いております。何らかの形でお返しができないかと考えたものでありますけども、本当に浅はかであったとみております」

■西尾市民「市も強い人には巻かれるのか」

 西尾市在住の杉浦夫妻は、スギ薬局1号店跡地に、高齢者向けの運動施設を建設し、市に無償で提供するなど、市への支援を続けてきました。

 近藤副市長は、こうした支援を理由に、5月10日分の予約を確保するよう指示しましたが、内部告発を受けた報道機関が指摘すると、予約は接種予定の当日に取り消されたということです。

 西尾市・近藤芳英副市長:「ご夫妻はすでにワクチン接種会場に向かってお見えになりましたけど、説明させて頂き、ご理解されて接種を取りやめて頂きました」

 今月6日からの予約枠は対象の高齢者4万6000人に対し、わずか2200人分しかなかっただけに、特別扱いに対し、市民からは不満の声が上がりました。

 ワクチン接種に来た人:「皆、やっぱり苦労して(接種予約を)取っているから、公平にしてもらいたかったなと」
 ワクチン接種に来た人:「市も強い人には巻かれるのか。一般市民とは違うのか。普通に考えておかしいとは思う」

 “ワクチン接種担当”の河野太郎大臣も、「(市の対応は)全く必要のないことだと思います」と、強く批判しました。

 スギホールディングスは謝罪したうえで、背景について、「会長の妻である相談役が、肺がんで手術を経験していたことから、一日も早い接種ができるよう、秘書が問い合わせた」と釈明し、「会長自身は過去にアナフィラキシーショックを経験していて、ワクチン接種を希望していない」などとコメントしています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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