PROFILE: 左:(はせがわ・よくな)

PROFILE: 1985年生まれ、栃木県那須塩原市出身。新潟県在住。ヨクナ・パトーファ(Yokna Patofa)名義で、2006年よりインターネットに映像作品を発表。写真家として、キヤノン写真新世紀2013 佳作(佐内正史選)。10年代、南北に分断された日本を舞台に描くSF三部作「日本零年」の第一部「イリュミナシオン」(14)と第二部「デュアル・シティ」(15)を監督。5月2日より最新作「コスモ・コルプス」とデビュー作「イリュミナシオン」がシアター・イメージフォーラムにて2週間限定上映。

PROFILE: 右:(ほそくら・まゆみ)

PROFILE: 触覚的な視覚を軸に、身体や性、人と人工物、有機物と無機物など、移り変わっていく境界線を写真と映像で扱う。主な個展に個展「曖昧な決定、肉、光」(2025年、COPYCENTER GALLERY)、「散歩と潜水」(2023年、Takuro Someya Contemporary Art)、「Sen to Me」(2021年、Takuro Someya Contemporary Art、東京)、「NEW SKIN |あたらしい肌」(2019年、mumei)、「Jubilee」(2017年、nomad nomad)、「Cyalium」(2016年、G/P gallery)、「クリスタル ラブ スターライト」(2014年、G/P gallery)、「Transparency is the new mystery」(2012年、関渡美術館2F展示室)など。

写真と映像の間を浮遊するイメージ

――お二人の出会いは長谷川さんの写真作品「アセンション・リバー」がきっかけと聞きました。当時のお二人のエピソードから教えてください。

長谷川億名(以下、長谷川):2013年に写真新世紀で佳作をもらった「アセンション・リバー」という作品があって。それを真弓さんが見てくれたのが、話すようになったきっかけなのかな。キッド・フレシノくんと、インターネット上で知り合った中国人の女の子を被写体に、複数のイメージで架空の街をマッピングしたシリーズです。

細倉真弓(以下、細倉):スナップっぽいけど、セッティングして撮った感じもあり、写真なのか映画なのか、なんか気になったんですよね。ブルーシートの上に人が立っている写真とか。

長谷川:確かに、1作目の映画「イリュミナシオン」の企画書用に撮ったカットも含んでいたので、不思議なバランスだったのかも。背景にストーリーがある状態で撮ったので。

細倉:すごく印象に残っていて。初めて億名さんの写真を見てから少し時間が空くのですが次に会ったのは、16年頃かな? 当時私が友人と企画立案した「SPACE CADET」という若手写真家のためのプラットフォームがありまして。写真家たちの作品をまとめたウェブギャラリーで、そこに億名さんが応募してくれて。そこから「SPACE CADET」を運営していた鈴木正義さん、写真家の小阪吾郎さんとか、他の友人も交えて会うようになり、自然と距離が縮まっていきました。当時、私も映像を撮ってみたいと思い始めていた時期で、億名さんにいろいろ聞いたり。

長谷川:そのメンバーで石原海さんの個展「頭のいかれた悪魔の泥沼」にも行ったよね。その後はわりと2人で遊ぶようになって、その理由は覚えていないけど(笑)。

細倉:短期間にすごく距離が縮まって、なんか一緒にやりたいねと話していたんですが、億名さんが突如ベトナムへ短期留学に。

長谷川:ベトナムから帰国し、今回の映画の舞台にもなっている佐渡島に行ったんです。で、佐渡島から帰ってきたタイミングで、新宿三丁目のタリーズで細倉さんと会ったよね。

細倉:待ち合わせしていたら、億名さんが木刀持って現れて(笑)。その日の写真はまだ残っているはず。

長谷川:当時ね、木刀で素振りを練習していて(笑)。

週1のトークから生まれたグループ展

――目的があったり、なかったり、お二人の緩やかなコミュニケーションが面白いですよね。19年からはお二人でポッドキャストを始めました。今のポッドキャスト流行を考えると、わりと早めのスタートです。

細倉:「なにか一緒にやりたいね」って言い続けてきたので、「なんかやるか!」と。でも億名さんが栃木に住んでいた時期だったので、遠隔でできることを探したんです。展示の話も挙がっていたのですが、2人とも良い案が思いつかず。手っ取り早く取り組めたのがポッドキャストだったっていう。一応「公開する」っていう枠組みがあったほうが真面目に喋れる気がして、週1回ペースで収録&公開していました。

長谷川:そして、気づけば計45回(笑)!

細倉:終わるともなく、21年に終わって。話すトピックは、まあサブカル色強めでしたね。詳しくは話しませんが(笑)。

――21年には細倉さんが所属する「Takuro Someya Contemporary Art」で、グループ展「ジギタリス あるいは1人称のカメラ|石原海、遠藤麻衣子、長谷川億名、細倉真弓」も企画されました。

細倉:この企画も億名さんと2人で話す中で固まっていきました。ラジオの中で遠藤麻衣子さんや石原海さんの話もでていたりして。当時興味があったのは映像と映画の境界線。私も映像を始めたタイミングだったので、この4人でのグループ展がすんなり決まりましたね。あと「一人称」という視点についても改めて着目していた時期で。誰かの目の裏をなぞるような、カメラとカメラを持つ人が一緒に動くような映像がなぜか面白かったんです。遠藤さんの作品にも感じていたし、石原さんの場合はメンタルの一人称っていうのかな。あと億名さんのデビュー作「イリュミナシオン」にも一人称的視点を感じます。

長谷川:実はけっこう三脚を使っているのですが、最初と最後だけは夢の中のような雰囲気を出したくて、カメラの経験が全くない人たちに撮ってもらいました。でも、私も人体や物をじーっと撮るのが好きなんです。

細倉:カメラ自体を固定しているか否かではなく、視線に沿って動く「ピント移動」みたいな感じかな。

長谷川:そうそう。「ジギタリス あるいは一人称のカメラ」では、佐渡島の海に初めて潜る少年を撮った「First Memory of the Ocean」を展示しました。この作品と「さどの島銀河芸術祭2021」で発表した「函数の部屋」(山井隆介+長谷川億名)という作品が新作「コスモ・コルプス」のはじまりになったように思います。

「コスモ・コルプス」で描いた循環する時間軸

――最新作「コスモ・コルプス」では「遠い存在とのコミュニケーション」をテーマにされたそうです。「コスモ・コルプス」の構想が出来上がるまでについて教えてください。

長谷川:「さどの島銀河芸術祭2021」で展示した作品は「二万年後の存在とのコミュニケーション」がテーマだったのですが、やりきれなかった実感があったので、もう一度映画でそのテーマに取り組みたくて。まず、地球があって、最近ではイーロン・マスクが地球外に出ようとしていますよね。多分今のままいけば、地球に残る人類と外に出る人類で二分される気がしていて。でもきっと、地球が出た人類にも感覚みたいな概念は残るだろうし、地球のことをまた思い出すようになるんじゃないかと想像から、「コスモ・コルプス」の構想が出来上がっていきました。昔から「記憶している人」が好きで。ウィリアム・ギブソン(William Gibson)が書いたSF短編小説「記憶屋ジョニイ」も心に残る1冊です。映画の中で描いた地球は、シミュレーションの地球なのか、誰かの記憶の中の地球なのか、本当にあるのかが、わからない中で未来から女の子が来てそれを体験するというストーリーです。

―「FUTURE | 未来編」「FUTURE JOMON | 未来縄文編」「CONTEMPORARY | 現代編」の3部で構成されています。「未来縄文編」はどういう位置付けですか?

長谷川:縄文時代ではなくて、未来で私たちが縄文時代のような狩猟・採集生活をしているとしたら?というイメージです。時間がぐるぐる巡りたまに重なるような時間感覚を投入したくて。映画全体を通して、未来から現代に戻っていくのですが、未来では言葉はなく、だんだん出来上がってきて、現代では普通に会話しているっていう。ちなみに「未来縄文編」では、あるルールにのっとり、このためだけに作られた特殊な言語を話しています。

――第一部「イリュミナシオン」(14)と第二部「デュアル・シティ」(15)を振り返ってみても、一貫して時間軸というテーマに興味があるのでしょうか?

長谷川:そうですね。物理学者の高水裕一さんの本で「時間は過去からだけでなく、未来からも流れている」と知り、すごく面白いなと思って。クロマニヨン人よりもネアンデルタール人のほうが、脳が大きいっていう説もあり、それってもしかしたら未来からの時間を受け取るための脳だったのでは!という説もあったり。

細倉:すごい!ラジオを思い出してきた(笑)。

――細倉さんは「コスモ・コルプス」の6年に渡る制作を近しい距離で見ていたかと思います。些細なことでも、お互いからの影響を感じることはありますか?

長谷川:私は真弓さんからの影響はすごくありますね。なんの関係もない映画の話をしていた時に真弓さんが発した話から、このカットは甘いから消そうかなとか。自分に甘くなってしまう時もあるのですが「やっぱもう一回やってみようと」思わせてくれたり。間接的にですが。

細倉:映画をかなり観るようになったのは億名さんの影響が大きい。ポッドキャストで話している時も、けっこう固有名詞がでてくるんですよ。大文字の男らしさとは違う男性性というトピックで、デレク·ジャーマンとかライナー·ヴェルナー·ファスビンダーみたいな映画監督の話が出て、その流れで女性のクレール·ドゥニの話になり気になって観てみるとか。短歌の話した後に、与謝野晶子の本を読んだり。

長谷川:ちゃんと観たり、読むのが真弓さんのすごいところ。あと、私たちは読書会もしているんです。

細倉:コロナが終わるくらいの頃、二人とも「暇を持て余している大人」状態で。遠隔でできることとなると、スポーツは無理だし、次は読書会を(笑)。初回はヴァージニア・ウルフの『灯台へ』で。共有ドキュメントを作って、知らない固有名詞を書き出し、とにかく調べる。そして、視覚的なリファレンスも貼り付ける。クレマチスの花についてとかね。

長谷川:一人だと逃すけど、二人だとできる。交代で一週間ごとに気になることを調べるんです。加えて、20ページごとに朗読する読書会も開きます。ディスカッションタイムももちろんあります。

細倉:わりと独自システムです(笑)。

――暇な時間を学びに変える。二人の興味が相互作用で拡張されていくのが面白いですよね。そして、最近は文芸クラブに参加されているそうで。

細倉:億名さんがずっと「小説書いてみたいんですよね」って言っていて。はじめは「そうなんだー」と受け流していたんですが、去年くらいから私もすごく書きたくなって。話の流れで文芸サークルが発足しまして。少しずつ書き進めています。

長谷川:真弓さんの興味としては、人に見せることで表現がどう変わるかなんですよね?

細倉:書く小説は見せるあてが一切ないから、一回外に出してみようっていう感じかな。最近はシール作りにもハマっているのですが、ひたすら数が溜まっていくばかりで(笑)。

「関係ないこと」が導くこと

――作品制作と趣味的ともいえる好奇心、その関係性も気になります。

細倉:シール作りは写真の延長でもあったりして。一見関係がないことも、完全に関係がないわけではない。私、一瞬だけハマることがけっこうあるタイプで。編み物にもハマったことがありますが、あれは関係がなさすぎた(笑)。関係なさ過ぎると続かないし、シールや小説は薄く作品とも関係しているから良いわけで。写真から遠すぎないところにずらしていくっていう作業は面白い。たまにオーバーラップしたり。

長谷川:細倉さんにとって、「なんで写真なのか」を知るための作業なのかもね。

細倉:小説も離れているかと思いきや、意外と近かった。自分がずっと考えてきた「一人称」が、またここで小説により回収されたんですよね。小説を書く時も「一人称」でしか書けないし。

長谷川:私は小説で言うと、一人称も二人称も三人称もいれたいタイプ。フォークナーの「響きと怒り」も大好き。

――今は小説が作品制作を刺激する存在かと思いますが、これからまた別の存在が現れたりもしようですよね。

細倉:どんどん横ずれしているというか。iPhoneに眠っている使い道が一切ない映像にも興味があって。本当に全ての人のiPhoneに無数の映像が眠っていそう。

長谷川:気になるよね。オウンファンドというか。

細倉:いっぱい撮っているからこそ忘れる。でも消さない。あ、今そんな小説を書いているところです(笑)。

◾️映画「コスモ・コルプス」
5月2から15日までシアター・イメージフォーラムにて2週間限定上映
出演:鮎川唯子、野澤健、横山裕子、山本史恩、いまいずみちよ
監督・脚本:長谷川億名
配給:セントラルゲーム
2025年 /134分 / 16:9 / 5.1chサラウンド / カラー / DCP
©2026 Yokna Hasegawa
https://yoknahasegawa.com/cosmocorpus

◾️映画「イリュミナシオン」
5月2から15日までシアター・イメージフォーラムにて2週間限定上映
出演:KID FRESINO、山本祐生、澤田ミキ、水田諒(Zenarchy)、橋本富夫、石田法嗣
監督・脚本:長谷川億名
配給:セントラルゲーム
2014年 / 59分 / 16:9 / ステレオ / カラー / DCP
©2026 Yokna Hasegawa
https://yoknahasegawa.com/illuminations

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