2022年5月、アラスカ高峰での撮影中、事故で亡くなった山岳カメラマンの平賀淳。彼は、NHKの山岳番組撮影などで活躍する、現役世代を代表するカメラマンだった。アラスカ撮影の直前、彼は私の書店を訪れ「アラスカで読む本を買いに来ました」と告げた。私は「帰ってきたらゆっくり会いましょう」と話したが、彼は帰らなかった。
平賀と中学時代からの同級生として多くの思い出と嫉妬、愛憎入り乱れる複雑な思いを抱えてきたのが著者の小林である。うつ病を抱える小林は、天真爛漫(らんまん)な平賀とは対照的に人生に行き詰まる。そんな人生の岐路には、必ず平賀がいた。
共に育ち、仕事をし、互いの人生に関わり合ってきた友が、突如山に消えた。小林は平賀の生きた足跡を求め、彼に関わった多くの人たちを取材する。そこには、小林も知らなかった平賀の姿があった。
小林は、平賀の足跡をたどる最後に、彼が亡くなったアラスカの氷河を訪れる。登山経験もない小林は、山岳ガイドに導かれて平賀の生きた最期の地にたどり着く。小林が平賀に語りかける。「だって、お前はそれを俺に託したんだろうよ」。小林は、平賀から魂を託された。友を失い自らも失っていた小林は、友の最期の地点で自らを取り戻す。
小林の親友は山に消えたが、彼の手によって平賀は新しい形で生き続けるのだろう。親友と自己の輪郭を探し続けた一人の男による、喪失と再生の物語だ。
店長から一言
現在、カナダ北極圏のケンブリッジベイという村にいます。昨年のグリーンランドに続き、今年も北極を旅しています。冒険研究所書店は元気に営業中。帰ったら旅の報告もするのでぜひお店にお越しください。私が不在の間も、店番栗原を励ましに来てください。
▼冒険研究所書店
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