アマゾンが、薄型テレビやモニターなどの映像機器が搭載するHDMI端子に直結して使えるメディアストリーミングプレーヤー「Fire TV Stick」シリーズの新製品を発表しました。

今回登場する新商品は「Fire TV Stick HD」。2024年10月下旬に発売したモデルの後継機種であり、Fire TV Stickシリーズの中での位置づけは「HD(フルHD)対応のベーシックモデル」です。

Amazon.co.jpでの出荷開始は4月30日を予定しており、5月からは家電量販店でも展開されます。価格は6,980円。

同時に、4月15日からFire TVシリーズのホーム画面も一新されます。日本語にも対応する新しいユーザーインターフェースが、対象となるFire TVシリーズのモデルに向けて無料のソフトウェアアップデートにより提供されます。

米国のAmazon本社から来日した、Amazon Fire TVバイスプレジデントであるジョシュア・ダノヴィッツ氏に新製品と、Fire TVの新しいユーザーイターフェースの特徴を詳しく聞きました。

30%のスリム化達成!テレビに挿しやすくなった

最初に、新しいFire TV Stick HDの特徴を解説します。

まずは本体が大幅にサイズダウンして、スリムになりました。2024年にアマゾンが発売した前世代モデルから約30%のスリム化を果たしています。特に、本体の短手幅のサイズが、テレビやモニターのHDMIポートの横幅とほぼ同じになりました。横幅の寸法は、前世代が30mmなのに対し、新世代は21.1mmとかなりスリムです。

背面側に複数のHDMIポートがひしめき合うテレビの場合、Blu-rayレコーダーやゲーム機などにつながるHDMIケーブルを接続していると、従来のFire TV Stickの幅だと割り込むすき間がない場合もありました。

仮に、スティック本体までは接続できても、給電のためのUSBケーブルを本体側面に挿して引き回すことが困難でした。スリムになった新しいFire TV Stick HDには、本体側のコネクタをL字にしたUSB電源ケーブルが付属します。ポートが密集する背面スペースを有効に使えるようになります。

USBケーブルは本体側がUSB-C、反対側がUSB-Aの形状になっています。以前のモデルまで、Fire TV本体に給電するため、ケーブルをUSB充電器に挿して使う必要がありました。新しいFire TV Stick HDはテレビのUSBポートにケーブルを挿して、直接給電する使い方を正式にサポートしています。テレビから給電する場合も、電源投入からの高速起動に対応します。

商品パッケージは、USB充電器とHDMI延長ケーブルが省略されたので、同梱品もシンプルになりました。Alexa対応の音声リモコンは従来通り付属します。

機能面では、動画のストリーミング再生を行っていない時に、テレビをAlexa搭載スマートディスプレイとして使えるようにする「アンビエントディスプレイ」の機能に、ベーシックモデルのFire TV端末として初めて対応しました。アマゾンが提供する約2,000点のアートコレクション、またはユーザーが撮影してAmazon Photosに保存した写真を背景として表示すれば、テレビをアートディスプレイのように使えます。背景アートを表示しながら、バックグラウンドでオーディオを再生する使い方にも対応します。

Vega OS搭載で変わること

Fire TVシリーズには、2025年にアマゾンが発売した「Fire TV Stick 4K Select」から搭載するVega OS(ヴェガOS)が、新しいFire TV Stick HDにも採用されました。

従来のシリーズは、Android Open Source Project(AOSP)を基盤にして、アマゾンが独自に最適化したFire OSが搭載されてきました。今後もテレビメーカーと共同で開発するFire TV搭載スマートテレビには、カスタマイズ性の高いFire OSを引き続き使うようですが、Fire TVシリーズにはLinuxベースのVega OSが特徴とする効率性の良さが活かされるようです。デバイスのコストパフォーマンス向上に寄与することも、またVega OSのメリットとされています。

この新しいVega OSを搭載し、さらに後述するユーザーインターフェースの刷新を図ったことによって、新しいFire TV Stick HDは前世代のモデルから平均30%の動作高速化を果たしています。アマゾンは「HDモデル史上最も高速」であるとうたっています。電源立ち上げ時の起動時間、タブの切り替え、アプリの立ち上げやコンテンツの読み込みが高速化されました。

細かいところでは、ストリーミング動画再生時の画質や安定性の向上に寄与する、新しいAV1コーデックに対応しました。アクセシビリティを高めるための機能として、サムネイルなど画面の表示サイズが拡大できるようになります。ワイヤレス接続も、Wi-Fi 6にアップグレードしています。

さらにコンテンツが探しやすくなる「新ホーム画面」

Fire TVシリーズのホーム画面も刷新されます。Fire TV Stick HDは、初期状態が新しいホーム画面になっていますが、現行モデルとしてアマゾンが販売するFire TV Stick 4K Max/4K Plus/4K Select、Fire TV Cube、およびパナソニックとJVCのFire TV搭載スマートテレビも、4月15日以降から順位展開を予定しています。

新しいホーム画面で大きく変わるポイントは3つあります。

1. カテゴリータブによるブラウジング機能を新設

従来のFire TVのホーム画面では、「メニュー」が中段にレイアウトされていました。これを画面左上に移動させて、「映画」「TV番組」「ライブ」など各カテゴリーのタブを切り替えながら目当てのコンテンツを探しやすくしています。各タブ内のコンテンツは、ユーザーのパーソナルレコメンデーションに沿って表示されます。

このタブに、日本向けの専用タブ「アニメ」を新設しています。アマゾンのダノヴィッツ氏は「Fire TVのプラットフォームで見られるアニメのコンテンツを探しやすくしてほしいという声が、特に日本のユーザーの皆様から多く寄せられていた」と語ります。このアニメタブは、日本のユーザーだけが使える機能になるそうです。

タブを切り替えて表示される画面内に「今週のおすすめ」のほか、「2026春アニメ」「新着」「カテゴリー」「エモーション」など、さらに細かくテーマごとに分類されたおすすめのアニメコンテンツが並びます。もちろん「続きを見る」から、現在視聴しているアニメ作品にもすぐにたどり着けます。

2. アプリアイコンの並べ替えに対応

Fire TV端末にダウンロードして、ホーム画面に配置できるアプリの数が増えました。従来は最大6件でしたが、アイコンのサイズを最適化して、最大20件のアイコンが並べられるようになります。ホーム画面から一目で確認できるアプリの表示件数は10件ですが、横にスライドさせると最大20件のアプリにアクセスができます。

3. 各機能へのアクセスを改善

先に触れたカテゴリータブのほか、動画の再生中でも、リモコンのホームボタンを長押しすると画面の右側に「ショートカットパネル」が表示され、再生を中断することなく画質や音質の調整が行えます。

ほかにもホーム画面にオーバーレイする形で、画面左側にナビゲーションのメニューが表示できるようになります。アプリストア、Fire TVと同じホームネットワークにつながるスマートホーム機器にもナビゲーションメニューからアクセスできます。

スマートホーム連携も充実。一家に一台のFire TVになる

昨年、アマゾンが4K対応のエントリーモデル「Fire TV Stick 4K Select」を発売したときに、アマゾンジャパンでFire TV製品を担当する西端明彦氏も「発売されて時間が経つスマートテレビよりも、Fire TV Stickシリーズの方が動作が高速で、操作性全般が快適であることから、スマートテレビに挿して使っているユーザーが少なくない」と語っていました。アマゾンが2024年に行った利用者調査によると、その数はFire TV Stickユーザーの半数に近い47.6%にも上っています。

Fire TV Stickシリーズは4K対応モデルが3機種(Cubeを除く)と、HD対応の新製品が1機種という内訳になります。

ドノヴィッツ氏は「HDモデルが従来より高速化・機能強化されたことをアピールしながら、4Kテレビで視聴されるユーザーの皆さんは、テレビの性能に応じた4K対応のFire TV Stickを提案できる。ラインナップが充実したことにより、各モデルのポジションが明快になった」と語っています。

ただし、Fire TVシリーズは「ユーザー全員を4Kに誘導するのではなく、ユーザー環境に応じた最適な選択肢を揃える」ことを戦略の柱としています。本体がスリムになり、テレビからの給電にも正式対応したことも含めて、先駆けてHD対応モデルがより便利になったことには重要な意味があります。ドノヴィッツ氏に「4K対応のモデルも、今後同じようにスリムなデザインになるのか」を聞いてみましたが、新しいHDモデルが発売される直前でもあることから、明快な回答は得られませんでした。

新しいVega OSは、昨年から提供を開始しています。新しいFire TV Stickシリーズを新規に購入、または買い換えたユーザーが困らないよう、スタート当初からメジャーな動画サービスのアプリを中心にVega OS対応を完了した状態でローンチしていますが、ドノヴィッツ氏によると「既存エコシステムとの連続性も重視しながら、段階的にFire OSアプリのVega OS対応を順調に拡充している」そうです。

新しいOSになったことで、例えばAlexaによる音声操作に対応するスマートホーム機器との連携も含めて、Fire TV Stickシリーズの使い勝手が悪くなる心配はないと思います。

現在、Fire TVのプラットフォームでは70万本以上の映画やテレビ番組、日本で特に充実するアニメなどの動画コンテンツが楽しめます。Amazonプライムビデオに限らず、NetflixやHuluなど他社が提供する動画配信サービスをまとめて1つの製品で楽しめるのが特徴です。また、複数のサービスから視聴したいコンテンツに狙いを定めて横串検索もでき、その時の操作に対するレスポンスがとても機敏であることも、またFire TVシリーズの魅力です。

ドノヴィッツ氏は、アマゾンには「まだDay One(創業当日)。いつでも新鮮な気持ちでプロダクトやサービスをお客様に提供する」という確固たる理念があり、Fire TVシリーズもまた同じ企業の考え方に基づいて、従来の製品も「初心に戻りながら常に改善を重ねてきた」といいます。

Fire TVシリーズには、アマゾンのEchoシリーズのスマートデバイスや、Amazon Ringブランドのホームセキュリティデバイスと連携する機能が充実しています。メディアストリーミングプレーヤーとしての進化だけでなく、ユーザーの生活を豊かにする総合プラットフォームに進化するFire TVシリーズが、ますます「一家に一台、不可欠なデバイス」になることも期待されています。

WACOCA: People, Life, Style.

Pin