1月期の冬ドラマがほぼ終了しました。ミラノ・コルティナ冬季五輪や衆院選による中断もありつつ、全体的に快作多めだった印象です。振り返ると、個人的には火曜日が激アツ。主要枠4作品すべて見ごたえありという心躍るクールでした。いずれの最終回も期待の上を行き、最後まですてきな見ごたえでした。
◆NHK「テミスの不確かな法廷」(主演松山ケンイチ)
発達障害のある主人公が独自の視点で突破口を開く、というテーマはよくありますが、すべての伏線が「再審請求」という後半の大波につながっていく作品性は圧倒的でした。
遺族関係者やジャーナリストが再審請求の“開かずの扉”をこじ開けるドラマではなく、裁判所、検察、弁護側のすべてが「司法界が犯した罪」の当事者として再審請求と向き合っていく世界観は画期的。主人公が、独自の視点の集大成を発揮する最終回は、法廷ドラマ史に残る新しさだったと思います。「正しいことがしたい」という法曹関係者共通の志がそれぞれの組織でどう形を変えていったのか。主人公の問いかけは、全文メモしておきたいほど胸を打つものでした。
人物たちの造形がチャーミングで、重いテーマでありながら笑いあり涙ありのバランスも抜群。法廷に立つ齋藤飛鳥はこんなにうまかったのか、検事役の山崎樹範はこんな苦悩の横顔も見せるのかと、俳優陣の新たな一面を引き出していたのもいいドラマならではでした。
◆TBS系「未来のムスコ」(主演志田未来)
28歳崖っぷち女子の元に「未来から来た」という5歳の“息子”が現れるSFヒューマンドラマ。設定こそトンデモですが、保育園探しに必死になったり、迷子になって探し回ったりという日常のドラマが丁寧に描かれ、1歩ずつ親子になっていく様子がとてもハートフルでした。父親かもしれない「まーくん」候補3人も人間味にあふれ、チープなラブにしなかったところに、制作の志と原作愛を感じます。
特に、格調高いルック(映像の雰囲気)やカメラワークのうまさは今期ずばぬけでした。アップとロング、手持ちカメラの長回しなど、キャラクターの心情への寄り添いが巧みなのです。冷たそうな空気や広々とした夕焼けなど、風景の美しさも素晴らしかったですね。この世界の美しさ、尊さがあってこそのSF。親とは何かを考えさせられる最終回のまさかの展開とともに、生きる勇気をもらえた作品でした。
◆テレビ朝日系「再会~Silent Truth~」(主演・竹内涼真)
23年ぶりに再会した幼なじみ4人(竹内涼真、井上真央、瀬戸康史、渡辺大知)の誰かが殺人事件を起こすミステリー。テレ朝なのでラブ甘めの作風かと思ったら、何重もの謎と事情が交錯する本格ミステリーに仕上げてきて、「ハヤブサ消防団」(23年)以来の驚き。いい意味で今期いちばん裏切ってくれた快作でした。
4人を追い詰めて真相に迫っていく南良刑事役・江口のりこさんの「圧」は、女性刑事キャラ史の中でも画期的。ネチネチと友情の切り崩しが始まった3話あたりからぐいぐい物語を動かし、奇妙さと大胆不敵の妙味を毎週わくわくと見ました。挑発する時に飛び出すタップダンスも絶妙で、SNSの客寄せ感がしっかりはまっているのも痛快。最終回は南良刑事の底力が全開放で、何度でも見たい名場面です。
◆フジテレビ系「東京P.D.警視庁広報2係」(主演・福士蒼汰)
個人的に今期イチオシはこのドラマでした。警察と記者の間に立つ「広報」から事件を描くかつてない挑戦。元警視庁記者らが原案とあって、捜査現場、取材現場ともにリアリティーがハンパなく、「実名報道の是非」「報道協定」「リーク」「刑事部VS公安部」など各話のテーマもガチンコ。令和になってまだ“見たことない警察ドラマ”を楽しめる幸せを満喫しています。
この作品はまだ放送中で、31日は「再捜査」をめぐる攻防の続きを描く第10話が放送されます。
ちなみに、4月期春ドラマの各局の火曜後枠は以下の通り。
◆NHK「魯山人のかまど」(3月31日スタート、火曜10時)主演藤竜也
◆TBS系「時すでにおスシ!?」(4月7日スタート、火曜10時)主演永作博美
◆テレビ朝日系「リボーン~最後のヒーロー~」(4月14日スタート、火曜9時)主演高橋一生
◆フジテレビ系「夫婦別姓刑事」(4月14日スタート、火曜9時)主演佐藤二朗、橋本愛
面白いドラマがあると、1週間が楽しみ。4月期の春ドラマも、1月期に負けない好勝負を繰り広げてくれることを期待しています。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)
