
プライベートスタジオに反映された
制作を支える空間の整え方
L’Arc-en-Cielのリーダー&ベーシストで、ソロ活動やL’Arc-en-CielのトリビュートバンドLike-an-AngelなどもこなすTETSUYA。彼は長年、建築やインテリアに深い関心を寄せており、その視点を新たなプライベートスタジオ=SPROUSE STUDIOに生かしている。ここではSPROUSE STUDIOの全容と、音響設計を担当したアコースティックエンジニアリングとのコラボレーションサービス“音楽スタジオ監修|Music Studio Supervision by TETSUYA”の真髄に迫る。
Text:Taichi Tsuji Photo:Yosuke Komatsu(ODD JOB LTD.) Hair & Make:Hisako Araki
Music Studio Supervision by TETSUYA
音楽制作をはじめ 4つの機能を持つスタジオ
TETSUYAが2025年に新しく構えたプライベートスタジオ=SPROUSE STUDIO。主宰レーベルと同名のこのスタジオは事務所ビルの2階にあり、ステンレスで仕上げた防音ドアを開くと右に録音ブース、奥にコントロールルームが見える。ブースの防音ドアはオークの無垢材を貼って仕上げており、床はヘリンボーン貼りの明るい色調のフローリング、そしてアールを描く天井、円柱状のディフューザーやヴィンテージの音響機器をしつらえた空間だ。また、壁にはファブリックやブリックタイル、モルタルなどを使用し、ビニールクロス(壁紙)は一切使用していない。アーティストとして確固たる地位を築いているTETSUYAだが、長きにわたり建築やインテリアにも深く関心を寄せてきたと言う。
「これまでに多くの建築物を見てきました。スタジオはもちろんマンションからホテルまで、かなり見ているんです。ラルクのファンクラブ会報で、新しくできたホテルやマンションのモデルルームなどを取材させてもらう機会もあるので、人一倍見ていると思います」

TETSUYAが2025年に構えたプライベートスタジオ=SPROUSE STUDIOのコントロールルーム。床はオークの無垢材をヘリンボーン貼りにしたフローリングで、チェアの可動域のみ消耗を防ぐべく大理石を埋め込んでいる。スピーカーは、天井設置のELECTRO-VOICE ZX1-90Bがリハーサル用、4台でL/C(ファンタムセンター)/Rを再現するBWV H-1がホームシアター用、GENELEC 8341 40th Anniversary Edition(サファイアブルー)とFOCAL SM9が音楽制作用で、TRU-SONIC E3がリスニング用。写真右に見えるのは録音ブースだ
「TETSUYAさんは建築にとても詳しく、知識をうまく生かすセンスもお持ちです」と語るのは、SPROUSE STUDIOの音響設計、施工を手掛けたアコースティックエンジニアリングの代表で一級建築士の入交研一郎氏。プロの建築士がうなるほどのリテラシーは、商業スタジオのプロデュースによっても培われたようだ。「ここと自宅のプライベートスタジオのほかに、商業用のレコーディングスタジオを2カ所プロデュースしているんです」とTETSUYAは語る。SPROUSE STUDIOで使用する音響機器もレコーディングスタジオクオリティだ。
「ここで歌を録るときはTELEFUNKEN ELEKTROAKUSTIK Ela M 251 Eを使うことが多いですね。jekyll(Like-an-Angelのヴォーカリスト)もEla M 251 Eが好きなんです。僕はNEUMANN U 67を使う場合もあります」

コントロールルームから録音ブースを見たところ。防音ガラス窓が床まで角度を付けて二重になっており、意匠としても美しい。このブースは、歌はもちろん弦楽器やパーカッションなどの録音にも対応し、レコーディングに適したドライな音場に調整されている
音響機器を動かす根幹である“電源”についても抜かりない。鈴木洋氏のEMC設計が幹線の引き込み、分電盤の設置、分電盤以降の配線、コンセント器具の取り付けなど、スタジオの電源工事を一通り手掛けている。
「鈴木さんにお願いして良かったです。すごく音がいいのは、電源によるところも大きいと思っていて。音のスピードが上がって、パッと明るくなった感じです。EMC設計についてはサンレコの本間昭光さんの記事で知って、いつか自分もお願いしてみたいと思っていたんです。入交さんが既にお知り合いだったのもあって、今回ご一緒することになりました」

EMC設計の分電盤。同社の電源工事により、スピード感のある明るい音が得られるようになったという
SPROUSE STUDIOでは、プリプロから本番のレコーディング、ミックスまで行える。こうした音楽制作に加え歌のリハーサルも可能で、オーディオルームやホームシアターにもなるため、大きく分けて4つの機能を有していることになる。音声信号用の配線は、スタジオイクイプメントとサウンドクリエイトが連携して手掛けた。
「プライベートスタジオなので自宅みたいな使い方というか、音楽制作以外にも活用したいなと思って。だから、あえて靴を脱いで入る部屋にしました。自宅スタジオとの違いは、外部の人を入れて作業できる点です。好きなときに使えて、共同作業もできる場としてここを造りました」

スタジオを考える上で、もうひとつ大きなテーマがあった。
「“とりあえず、おしゃれにしたかった”というのが、正直なところかもしれません。海外のスタジオには、それが“特別”ではなく、ごく自然に存在している空気がある。例えば、かつてニューヨークにあったスターリング サウンド。初めて足を踏み入れたとき、理屈より先に“かっこいい”と感じました。一方で、日本のスタジオには、無意識のうちにどこか昭和的な空気や、事務所の延長のような雰囲気が残っていることが多いとも感じていた。だからこそ、音を鳴らす前の段階で、空間のあり方をきちんと考えたかったんです」
内装には最も好みの木材 =オーク材を活用
イメージを具現化するために、パートナーに選んだのがアコースティックエンジニアリングだ。TETSUYAのベースの機材システムを組んでいるFREE THE TONE林幸宏氏からの紹介で、入交氏と知り合うことができた。
「林さんのスタジオはアコースティックエンジニアリングさんが造っていて、訪問したときに“良いな”と。あと、アコースティックさんが施工したプライベートスタジオって、サンレコにもよく載っていますよね。それを前から見ていたし、経験を重ねられている分、こちらの意図もきちんと共有できると思いました」
TETSUYAの読みは的中した。入交氏は自社の特性について、こう説明する。
「弊社は、商業スタジオのように不特定多数の人が使う場所よりプライベートスタジオを造ることのほうが多く、その場合は仕上がりがある意味、偏っていてもいいと考えています。意匠的にも音響的にもクライアントの好みに合わせて、さまざまなパターンを造ってきました。スタジオ施工会社の業界にも、餅は餅屋みたいなのがあると思います。弊社はプライベートスタジオこそ得意ですが、映画会社のダビングステージを造るようなことはありませんし」

SPROUSE STUDIOの音響設計を手掛けたアコースティックエンジニアリングの入交研一郎氏。“音楽スタジオ監修|Music Studio Supervision by TETSUYA”のサービスにもコミットする
2人は、スタジオ造りと直接の関係がないことまでやり取りし、親交を深めたという。例えば、TETSUYAが“このインテリアのこういうところが良い”と、入交氏に写真付きでメッセージするようなコミュニケーションだ。「内装において、こだわっていないところは1つもありません」とTETSUYAは言う。
「例えば壁。ビニールクロスで囲まれた部屋はケミカルな感じがするので嫌なんです。だから基本的に塗り壁にしていて、それ以外の部分には…
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