SKTが販売する「BOOX Palma 2 Pro」は、6.13型のカラー電子ペーパーを搭載したAndroid端末だ。最大の特徴はデータ通信に対応したSIMスロットを備え、Wi-Fiのない屋外でも電子書籍のダウンロードや地図アプリが使えること。スタイラスにも対応し、手書きメモも可能になった。価格は6万9800円で、2025年11月18日に発売された。

 この「スマホ型電子書籍リーダー」によって、デジタルライフがどう変わったのか。実際にメインSIMを挿入し、その実力を検証した。

●ポケットに収まり、片手で持てるサイズ感

 本体サイズは80(幅)×159(高さ)×8.8(奥行き)mmで、重量は175g。最近の6型台スマートフォンと比べると、ベゼルがやや太めで全体的に大きく見える。ズボンのポケットに入れるとはみ出すくらいの存在感がある。ただし重量は一般的なスマートフォンより軽く、持ち歩いていても負担にはならない。

 片手で持って親指だけで操作できるサイズ感は、電車の中でつり革を持ちながらでも使いやすい。以前試用したBOOX Go Color 7は7型で、ジャケットのポケットにも入れづらかったが、Palma 2 Proなら自然に持ち運べる。読書端末は持ち出せなければ意味がない。その点でこのサイズ感は大きな強みだ。

●読書体験は快適、カラーマーカーが便利

 6.13型のKaleido 3カラー電子ペーパーは、モノクロ表示時は300ppi、カラー表示時は150ppiの解像度となる。文字主体の電子書籍を読む分には、解像度の低さは気にならない。Kindleアプリで文字サイズを最小にしても、文字のにじみやかすれは感じなかった。

 ページめくりの速度は、体感でiPhone 17 Proの1.5倍ほど遅い。電子ペーパー特有の画面書き換え処理が走るためだ。設定から「高速更新」モードに切り替えると、ほぼ同等の速度になるが、表示がやや濃くなる副作用がある。

 Go Color 7と同様に、Kindleアプリで4色のカラーマーカーが使えるのは便利だ。重要度や分野ごとに色分けしてマーキングでき、後から復習する際の効率が上がる。

 コミックも読みやすい。ディスプレイが縦方向に長いため、1ページ表示では上下に余白ができる。横向きにすれば見開き表示も可能だが、せりふがかすれて読みづらくなる。カラーコミックの表示品質はGo Color 7と同等で、マゼンタ系の鮮やかさがやや鈍い点は気になるが、十分に楽しめるレベルだ。

 一方、雑誌アプリでは細かい文字がつぶれてしまい、拡大しないとほぼ読めない。カラー表示時の解像度低下が顕著に影響するジャンルだ。

●カラー電子ペーパーは角度によって見え方が変わる

 カラー電子ペーパーは見る角度で色味が変わる。正面から見るとコントラストがはっきりし、斜めから見ると青みがかった淡い印象になる。手に持って読むときと机に置いて読むときで雰囲気が変わるのは、紙の本を読む感覚に近いかもしれない。

 カラー表示は、一昔前の雑誌の後ろの方のページにあるカラー広告のような質感だ。非光沢紙に印刷されたあの独特のくすみ。青・シアン系はしっかり出るが、マゼンタ・赤系が抜けて全体が青緑っぽく偏る。写真の鮮やかさを期待すると違和感があるが、コミックのイラストなら気にならないレベルだ。SNSで写真を見たり、カメラで撮った画像を確認したりする用途には向かない。

 アプリごとに表示設定を調整できる「EinkWise」機能も搭載している。リフレッシュモードやカラーモード、コントラストなどをアプリ別に保存でき、Kindleは高精細、SNSはスピード重視といった使い分けが可能だ。電子ペーパーの表示特性を理解した上で設定を追い込めば、用途に応じた最適な表示を得られる。

 操作体系も独特だ。Android標準のジェスチャーナビゲーションに対応しているが、BOOX独自のカスタマイズが加わっている。画面下端からのスワイプは左・中央・右で異なる機能が割り当てられており、右下からスワイプすると電子ペーパーの表示設定を呼び出す「E-Inkセンター」が開く。画面左端を上下にスワイプするとボリューム調整になるなど、慣れれば便利だが、一般的なAndroidスマートフォンとは操作感が異なるため最初は戸惑うかもしれない。

●データ通信だけじゃない、実は「電話」もできる

 発売当初はソフトバンク系のSIMしか使えなかったが、ソフトウェアアップデートでAPN設定が可能になり、ドコモ系やau系のSIMも利用できるようになった。筆者はUQ mobileのSIMを挿して試したところ、問題なく認識された。APN設定画面が英語表記で少々手間取ったものの、設定自体はスムーズに完了した。

 屋内での実測では、ダウンロード速度8.81Mbps、アップロード速度18.9Mbpsを記録した。5Gのピクトが表示されており、電子書籍のダウンロードには十分な速度だ。テザリングも利用できる。

 興味深いのは、公式には非対応とされている音声通話とSMSが実際には使えたことだ。Google Playストアから「Google メッセージ」アプリをダウンロードして設定したところ、SMSの送受信ができた。さらに「Google 電話」アプリを導入したら、音声通話も発着信できた。画面には電話アプリのアイコンが表示されないだけで、内部的には通話機能が有効になっているようだ。

 ただし再起動するたびにデフォルトアプリの選択を求められるなど、挙動は不安定だ。公式にサポートされた機能ではないため、今後のアップデートで使えなくなる可能性もある。通話機能を期待して購入するのはおすすめしない。

 LINEも動作し、音声通話も問題なく使えた。音質は一般的なスマートフォンと変わらない印象だ。

●GPS搭載でGoogle マップも利用できる

 A-GPSを搭載しており、位置情報の取得精度や速度は一般的なスマートフォンと変わらない。ただし、初回起動時に「このデバイスの位置情報へのアクセスを許可しますか」という画面で選択ボタンが反応しないバグがあり、設定アプリの位置情報メニューから手動で許可を設定する必要があった。

 Googleマップはプリインストールされていないが、Google Playからダウンロードすれば普通に使える。

 電子ペーパーでの地図表示は、カラー対応の恩恵を感じる場面だ。駅や公園などの施設が色分けされていないと、モノクロでは判別しづらい。ただし画面の更新速度は液晶より遅いため、リアルタイムで動くナビゲーションには向かない印象がある。

●スタイラスは「書ける」が「使える」かは微妙

 別売りのInkSense Plusスタイラスに対応している。USB Type-Cで充電する方式で、余計なケーブルを持ち歩かなくて済むのはありがたい。

 書き心地は自然で、ペン先の追従に遅延は感じにくい。プリインストールされているノートアプリではページ送りができるため、長文のメモも取れる。ただし6型という画面サイズでは、1ページに書ける文字数は限られる。細かく書こうとすると、ペン先の柔らかい部分がへこんでポインターが不安定になることもあった。

 「とっさにメモを取りたい」という場面では、スマートフォンのメモアプリと大きな差は感じなかった。アプリを起動する手間は同じだからだ。スタイラスを本体に固定して持ち運ぶ方法がないため、常にポケットに入れておく必要がある。スタイラス機能は「あれば便利」程度で、必須ではないと感じた。

 別売りのケースを装着すると手帳のように本体を保護できるが、重量は合わせて268gになる。スタイラスペンを一緒に持ち運ぼうとすると収まりが悪く、ケースに挟む場所もない。スタイラスの携帯方法は課題として残る。

●ディスプレイの表示品質は改善を求めたい

 ディスプレイの表示品質は、電子ペーパーとしては標準的だが、改善の余地がある。カラー表示時の解像度向上と、フロントライトの明るさ改善が待たれるところだ。特に屋内ではフロントライトをオンにしないと暗く感じる場面が多かった。

 日本語入力は実用にたえないレベルだ。標準搭載のONYXキーボードはQWERTY配列のみでフリック入力に対応しておらず、変換精度も低い。「ジェスチャー」と入力しようとすると「ジェス家ゃー」になり、「コントロール」は「今んトロール」になってしまう。Google Playから「Gboard」をダウンロードすれば、フリック入力も使えるようになり、変換精度も改善される。購入したら真っ先に設定しておきたい。

 APN設定やアプリのインストールなど、初期設定には一定のリテラシーが求められる。電子書籍リーダーとして購入した人が、箱から出してすぐに使えるわけではない点は留意すべきだ。

●バッテリーと「スマホ断ち」の結果

 4G/5G通信をオンにした状態で1日使ってみた。朝9時半から夕方4時半までの約7時間で、バッテリーは100%から61%まで減った。内訳はBlueskyを15分ほど、オンラインのマンガアプリで約2時間、Kindleで1時間利用した。SIM通信オンでも1日は余裕で持つ計算だ。

 ただしバックグラウンド再生には難がある。radikoでラジオを聴こうとしたところ、5分ほどでプロセスが強制停止されてしまった。再生し直しても3分で止まる。電子ペーパー端末は省電力のためにバックグラウンド処理を積極的に切る設計なのだろう。ながら聴きには向かない。

●読書に集中したいなら検討の価値あり

 BOOX Palma 2 Proは、携帯型電子書籍リーダーとして優秀だ。この端末があるとKindleを開こうという気分になる。スマートフォンで読書しようとすると通知やSNSに気を取られがちだが、Palma 2 Proなら読書に集中できる。

 6万9800円という価格は、サブ端末としてはやや攻めた設定だ。「BOOX Go Color 7」(4万9800円)との差額2万円の価値は、モバイル通信とGPS、スタイラス対応にある。Wi-Fiのない環境でも単体で完結できる点は、Go Color 7にはない大きな強みだ。

 向いているのは、スマートフォンに依存していて少し距離を置きたいが、完全に手放すのは不安という人だ。APN設定やアプリのインストールを自分でできるリテラシーがあれば、快適に使いこなせるだろう。逆に、動画やゲームがスマートフォン生活の中心という人には物足りないはずだ。電子ペーパーの特性上、動きのあるコンテンツには向かない。

 「スマホ断ち」は成功したか。答えは「半分成功」だ。SNSやゲームから距離を置いて読書に集中する時間は確実に増えた。しかし通話もSMSもLINEも使えてしまうので、結局のところ「画面が見づらいスマホ」として機能してしまう。それでも、見づらいからこそダラダラ見続けることがない。その絶妙な不便さが、デジタルデトックスには効果的だった。

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