その“ゲーム”をシーズン1で体現していたのは、どの人物の側に立ちたくなるか、という感情を揺さぶる構造である。それがシーズン2においては、「予測できない驚き」へとシフトするという。

その変化を成立させるうえで重要なピースが、二階堂ふみ演じる「落葉の方」の存在だ。「シーズン1では鞠子(アンナ・サワイ)が重要な役割を担い、アメリカ側の物語の一部として機能していました。パート2では落葉の方が物語の中心に据えられます」と、コンドウは説明する。

豊臣秀吉の側室だった淀君をモチーフとする彼女が担うのは、歴史を再現するという枠を超えた役割だ。これにより女性たちの政治力学が物語の主軸として浮かび、政治劇としてのスケールも高まっていく。

一方で、歴史ドラマ特有の課題もある。歴史ファンや特に日本の視聴者は、関ヶ原の戦いから10年後の歴史的な帰結をすでに把握しており、そこから外れると違和感を感じてしまうからだ。

それでもマークスは自信を見せる。「日本の歴史に詳しいファンや、歴史愛好家の皆さんを歓迎します。わたしたちが語るのは実在の歴史をもとにしたフィクションです。事実とフィクションが融合していく様子に必ず驚くはずです」

現代の歴史ドラマに求められるのは、歴史を「既知の事実」としてではなく、物語として再編集する発想だ。それゆえ、文化や歴史の整合性を担保する制作プロセスが不可欠になる。それは真田をはじめとする日本人クルーとの協働によって、シーズン1ですでに証明された。

だからこそ、マークスは断言する。「文化間の相互尊重は、より優れた物語を語るための共通言語になる。そして、より優れた物語は収益性ももたらすのだと、本気で信じています」

つまり、文化や歴史、言語を“材料”ではなく“構造”として扱うのが、マークスの制作哲学だ。その上に時間軸の飛躍や、物語を動かす女性の視点が積み上がっていく。シーズン2は、こうした複数のレイヤーが交差した物語として構想された。

Shōgun star Hiroyuki Sanada with exec producers Justin Marks and Rachel Kondo at the Disney Originals Preview 2025

11月に香港で開かれた「ディズニープラス・オリジナル・プレビュー 2025」では、マークスとコンドウ、主演でプロデューサーの真田広之がトークセッションを繰り広げた。

Photograph: The Walt Disney Company

異文化への“切符”としての時代劇

一方、アルゴリズムが視聴者に「観たいもの」を見せるよう誘導するかたちで視聴体験を最適化することが当たり前になり、物語は“消費”される傾向が強まっている。こうしたなか、なぜ「SHOGUN 将軍」のような時代劇が世界で存在感を示すようになったのか。

その理由をマークスは、「切符」に例えて説明する。「時代劇は別の文化への“切符”であり、別の時代への切符であるとも言えます。現代の生活を完全に断絶できる体験こそが、人々が物語に没入する理由であり、物語を語り続けたい理由なのです」

つまり、似たものを並べるアルゴリズムの性質とは逆の、人を異なる世界へ連れていく力が物語には本来あるということだ。時代劇は、その最もわかりやすく強力なフォーマットといえる。

さらにコンドウによると、現代の動画視聴のスタイルも影響しているという。「飛行機に乗っていたとき、ショート動画を延々とスクロールしている方を見かけたんです。コンテンツへの意識が細切れになる様子が目に見えてわかりました」

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