10月26日、あるK-POPグループの日本人メンバーが30歳の誕生日を迎える。NCT127のメンバーYUTA(ユウタ)だ。1995年生まれ、大阪府出身の中本悠太は、韓国の芸能界で大きな一歩を印してきた存在でもある。
【画像】「日本人差別されている?」NCT127のメンバーと写真に映るユウタ

NCT127のユウタ(中本悠太) ©Imaginechina_時事通信フォト
韓国の大手事務所から初の日本人としてデビュー
「韓国の大手事務所・SMエンタテインメント(以下、SM)から、初めてデビューした日本人」
もともと東方神起に憧れていたユウタは、2012年に大阪で行われたSMのグローバルオーディションに合格。その後16歳で渡韓し、練習生期間を経て、2016年にNCT127のメンバーとしてデビューを果たした。NCT127はこれまで、韓国の音楽番組で計40回の1位獲得、4度のワールドツアーを成功させるなどの実績を誇る。
ユウタは近年、日本でのソロ活動も盛んに展開。来年には初の武道館公演も控える。
残り2ヶ月となろうとしている今年は、日韓国交正常化60周年の年だ。そのなかで「K-POPグループの日本人メンバー」の歴史は27年に及ぶ。1998年に「サイクル」という同国史上初の多国籍グループがデビュー。そこに女性の日本人メンバー2人が在籍したのが始まりだ。
その時期と前後して、彼の所属するSMは韓国から先陣を切る形で日本進出に取り組んできた。1998年のS.E.Sの日本デビューを経て、2001年にはBoAが大ブレイク。このような「韓国から日本に進出」を目指してきた事務所にあって、ユウタは2010年代に初めて「逆進出」した存在なのだ。
彼はいったい、韓国でどう見られているのか?
「パフォーマンスの実力があり、グループによく溶け込んでいるイメージです。例えば(6人組ガールズグループ)IVEの日本人メンバー・レイのようにバラエティ番組に多く出演してその言動が注目されてきたというよりは、グループのなかで自分の役割をしっかり果たしているという印象です」(現地テレビ局の芸能担当記者)
ユウタに対する“誠実”という印象は、「韓国語がかなり流暢」「ボーカルとしてオーディションに合格しつつも、デビュー後はメインダンサーも任されている」といった点も影響しているだろう。
韓国語に関しては、渡韓後わずか3年の2015年に、JTBCのトークバラエティ番組『非首脳会議(韓国語では非頂上会議)』にレギュラー抜擢(当時は「SMROOKIES」というグループを組み、プレデビュー的な活動をしていた)。各国の若者が、スーツなどフォーマルな衣装に身を包み、韓国語で文化や歴史などについてあれこれ語り合うという番組内容だ。
ここでの、韓国語でのしっかりとした掛け合いのほか、集中して他のパネラーの発言を聞く姿に、「韓国内で好感度が上がり、ファンが増えていったんです」(韓国スポーツ新聞歌謡担当記者)。
「クビになりそうな時があった」
また、パフォーマンスに関しても、本人の才能はもちろん、ストイックな努力も評価されてきた。過去の韓国でのインタビューでは、こんな発言をしている。
〈「僕は母にも自信をもって『韓国で成功する』と言ってきたのだから、逃げられませんでした。自ら決定したことなので。(K-POPアイドルへのチャレンジを)人が決めたことなら耐える力もなくなるでしょうし、言い訳だけが生まれていったでしょう」〉
日本のメディア(「メンズノンノウェブ」2019年3月9日配信)でもこんな発言が。
〈Q. 最後に、日本から韓国へと旅立つ決意をした16歳の自分に今言葉をかけるなら?
A. 悩み抜け、もっと成長できる。〉
これらは、大手事務所SMにあって、たった1人の日本人練習生として厳しいレッスンの日々を送ったことの証だろう。2025年10月23日のフジテレビ『トークィーンズ』でこんな話も披露している。
〈「(韓国の)事務所に受かってもゴールじゃなくて、そこから入れ替わり入れ替わりなんです。週1で評価会もあったし」
「俺も1回クビになりそうな時があった」〉
韓国に渡ったばかりの頃は、「『どうですか?』『ごはん食べたい』といった基本的な韓国語から覚えた」(2018年「週刊アイドル」)という。そのうえで「決まったルーティーンのダンスレッスンが繰り返される日常」だった。
2023年11月に配信されたオリジナルコンテンツ「What’s NCT!?~welcome to NCT Universe EP.9」では、事務所の後輩で同じ日本人の、ショウタロウ(現RIIZE)、ショウヘイ(現MYTRO)という2人と鼎談した。
後輩から「苦しかった練習時代を乗り越えた秘訣は?」と聞かれるや、ユウタはこう答えている。
〈「自分は父親には事前に『韓国に行く』とは言っていなかった。初めてそれを伝えた時、父は泣いた。そして『日本には戻らない覚悟でやれ』と言われた」〉
さらに後輩2人に対し「羨ましい。2人は一緒にいて、お互いの存在だけでも力になる関係だから」とも。
ただいっぽうで、自分自身は「大手SMにおける初の日本人練習生」という意識は、じつはあまりなかったとも明らかにしている。
〈「その話はよく聞くけど、『日本人初』という考えはあまり持たなかった。なぜなら(それに関係なく)周囲の人が助けてくれたから。自分一人でデビューを成し遂げたとは思わない。(後に共にデビューする)メンバーも一緒にいてくれたわけだし」(前出「What’s NCT!?」)〉
激しいダンスが「ギャップ萌え」で大きな話題に
とはいえ、「マジメ」だけではないのもユウタの魅力なのだという。現に、韓国での認知度がグッと高まったのはバラエティ動画からだった。
正式なデビュー前の2015年、前出の『非首脳会議』収録中に、共演者から「楽屋でめっちゃ踊りの練習をしている」と暴露された。「じゃあ、踊ってみて」と司会に促されると、そこまでのニコニコ顔からは一転、ジャケット姿のまま真顔で激しいダンスを披露してみせた。これが「ギャップ萌え」として、大きな話題となったのだ。
コメント欄には韓国語で「こんなにカッコいい人が、自国・日本でデビューできないのが不思議なくらい」「ホントにかっこよすぎ」といった内容が書き込まれた。
いっぽうで、韓国では「実物が、よりカッコいい」キャラクターでも知られる。もちろん写真や映像でもカッコいいが、本人に直接会うと、驚く人が多いという。
「彼はヒーリングスマイル、という代名詞でも知られています。言葉通り、爽やかな笑顔でファンを癒やすという意味ですね」(前出のスポーツ紙記者)
韓国で人気のYouTubeコンテンツとして「顔分析」というジャンルがある。美容外科医たちによる芸能人の顔チェック番組が多く存在するが、そのうちのひとつ「Dr.trio」では、3人の男性美容外科医がユウタについてこんなトークを展開している。
「笑顔は確かに美しいです。ふだんの顔では口はそんなに大きく見えないんですが、笑うとぱっと大きく開いて、歯が多く見える。歯が見えるというのは、相手の印象がすごくよくなるんです。(顔のつくりと合わせて)笑い方自体も上手いですよね」
「日韓関係」問題にぶつかることも
韓国で活動する日本人メンバーの多くがぶつかるのが、「日韓関係」という複雑な問題だ。
2022年10月には韓国でのライブで「ユウタのソロステージ中にトイレに行くファンが多かった」「悪意を感じた」「差別的行動だ」という内容が韓国のオンライン掲示板に投稿された。これが拡散されると、ほかのファンは「そんなことはない」「他のメンバーでも席を外すファンはいた」と猛反論。論争が巻き起こった。
「ユウタが差別されている」疑惑がネットで論争に
また、「ユウタのSNS投稿に会社理事からのいいね! がなかった」「ライブ映像のエンディングでユウタがカットされていた」というファンの指摘が、「日本人差別」という言説としてネット上で広がり、事務所に抗議する人が出るほどの騒動になったこともある。
いっぽうで、社会問題や歴史や文化についてもしっかりと意見を述べるのが、韓国でのユウタの特徴のひとつだ。2015年には前出の『非首脳会議』で日本の「さとり世代」について「無気力に生きる若者が社会的に問題になっている」と発言。また話が近現代史に及んだ際には、「日本全体の意見ではないが」と断ったうえで、「被害者が納得するまで謝るべきだと思う」と踏み込んだ発言も行っている。
30歳の誕生日を迎え、ソロでの武道館公演に臨む
K-POPきっての大手事務所で初の日本人メンバーとして活躍するユウタ。10代の頃の強い決心を胸に、誕生日を迎える10月26日からは30代のキャリアを歩んでいくことになる。
今秋は、ソロ活動での日本ツアーが続いている。10月末以降も9公演を予定しており、追加公演として初の武道館公演が千秋楽として決まった。自身が好むというロックのジャンルでのツアー。新しく披露する音楽スタイルで、その内面を強く表現していくのだろう。
(吉崎 エイジーニョ)
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