2018年にリリースしたデビュー・アルバムで注目、その後21年発表のシングル「Little Bit Of Love」は翌年の【ブリット・アワード】で<ソング・オブ・ザ・イヤー>にノミネート、さらに英ロンドン・O2アリーナ公演を大成功させるなど、英国/EUを中心に人気を誇るシンガー・ソングライター、トム・グレナン。8月にリリースされたばかりのアルバム『エヴリウェア・アイ・ウェント、レッド・ミー・トゥ・ホウェア・アイ・ディドゥント・ウォント・トゥ・ビー』も3作連続で全英チャート1位を獲得、さらにプライベートでは父親になるなど公私共に絶好調な彼が、1年ぶりに来日し、初のヘッドライン・ショーを敢行した。そのバックステージで語ったアルバムについて、そしてまもなく日本での再結成公演を控えたオアシスへの思いを聞いた。(Text & Interview: 松永尚久)
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──昨年の【GREENROOM FESTIVAL】から1年ぶり、そして初のヘッドライン・ショーを大盛況のなか終了しました。日本のファンの印象は?
トム・グレナン:日本の映画やドキュメンタリーを観て育ったので、最初の来日は食べ物、文化、人など体験したすべてに興奮したし、さらに大好きになったんだ。今回においても驚きの連続で、日本のことがさらに好きになった。また、日本のファンやオーディエンスって特別な雰囲気で、ミュージシャンへのリスペクトを強く感じる。音楽というものの大切さを理解している気がした。だから、ここでしっかりと足場を固めて、コミュニティーを広げなくてはいけないという思いがますます強くなったんだ。
──また、この1年の間にはアルバムを完成させたのはもちろん、30代を迎え、さまざまな変化があったかと思いますが。
トム:20代はとても素晴らしい経験ばかりをさせてもらった。自分は音楽一家出身でもないし、知り合いに音楽関係者もいなかった。ごく普通の世界で過ごしてきた人間がショウビズの世界で生き抜くため、一生懸命に過ごしていった感じだったけれど、本当に新しい出来事ばかりだったし、クレイジーな時代だったと思う。この1年は、30歳になっただけではなく父親にもなったし、さまざまな変化が起こった。また新たなチャプターが開かれた感じがするんだ。
──最新アルバム『エヴリウェア・アイ・ウェント、レッド・ミー・トゥ・ホウェア・アイ・ディドゥント・ウォント・トゥ・ビー』は、どこに行っても自分の想像のつかない場所へと導かれるという意味だと思うのですが、その発言を聞いているとここにはポジティブな思いがこめられているように感じました。
トム:20代は本当にさまざまな旅を経験した。楽しいことはもちろん、失敗もしたし、自分のなかの悪魔との闘いもあったんだ。それを経験して、現時点ではスピリチュアルな境地に達している気がするというか。自分が自分らしくいる状態。タイトルに関しては、人生でいろんな間違いを起こしながら、それでもなんとか何かを成し遂げて、前に進んでいくっていうようなフレーズを選んだんだ。人間は、時に失敗してしまうもの。それでもなんとかやっていけるし、心配しなくて大丈夫というメッセージを届けたかった。また、自分自身ファイティング・スピリットが旺盛で、努力家でもあるので、ネガティブなことがあっても、絶対に自分は這い上がってやるという思いも表現しているんだ。
──だから、アートワークもボクサーに扮しているんですね。
トム:うん、その通り。日々、自分のなかで自分と闘っているところがある。メンタル的に大変なことがあったりとか、打ちのめされたりすることがあっても、それを最終的には倒してチャンピオンになるという強い意思の現れなんだよ。
──サウンドに関しては、ソウルやファンクなどを駆使したセレブレーション感に溢れた仕上がりになっていますね。
トム:今回は歌詞を深みのあるものにしたかった。これまでの自分とこれからの自分像を真摯に描きたかったんだ。だからサウンドに関しても、何かを克服したいものがあるとしたら、それを乗り越えられる力を与えるようなものにしたかった。また克服した瞬間、一緒にセレブレートできるような音にもしたかったんだ。
▲「Everywhere I Went, Led Me to Where I Didn’t Want to Be (Album Trailer)」