日曜朝に放送されているビジネスバラエティ番組「発掘!スタートアップ ヒロミのおはようミーティング」(フジテレビ)で、若き起業家のアイデアや悩みに耳を傾けるMCのヒロミさん。芸能と経営の両方を経験してきた立場から見えたのは、「お金」や「成功欲」だけでは続かないという現実だった。挑戦を折れずに続けるための「逆境への備え」とは何かを伺った。

芸能と経営の両方を経験したヒロミさん。MCとして起業家の挑戦に寄り添い、折れないための視点を語る
https://www.fujitv.co.jp/hirominoohami/
才能の条件:成功の裏にある「リスク」を見抜く冷静な目
――番組の中で若き起業家たちとお話されていますね。
ヒロミ:いや、楽しいですよ。「へぇ、こういうのがビジネスになるんだ」っていう純粋な発見もありますし、今まさにスタートアップしてがんばっている会社の社長さんたちと直接話せるのはおもしろいですね。
――テレビタレントもご自身の看板で勝負をされるものだと思いますが、共通する大変さや面白さはありますか?
ヒロミ:経営者って、やっぱり大変じゃないですか。でもね、これは芸能人もまったく同じですけど、結局は「本人がどこまで楽しんでやるか」だと思うんです。目の前の苦労を苦労だと思わないようにしてやらないと、なかなか続かない。本当に芸能とかの仕事も何の仕事も結局一緒だと思うので。番組に出てくる皆さんも、未来を見ながら「こうしたいんだ」という強い思いを持って楽しんでやっている。そのエネルギーが、すごくおもしろいなと感じますね。
――これまで多くの若者を見てこられたと思いますが、「この人は伸びるな」と直感的に(ピンと)くるのは、どんな人物ですか?
ヒロミ:僕は結構、心配性なんですよ。だから、リスクマネジメントはちゃんと考える方なんです。インタビューしていても、成功したいという気持ちだけが前に出て、良いことしか見ていないような人を見ると、逆に危うさをすごく感じてしまうんです。
――と言いますと?
ヒロミ:成功は誰でもしたい。でも、「成功したい」という気持ち”だけ”で突っ走っていると、いざ失敗した時にポキっと折れて、そこで終わっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、ちゃんと物事の裏側というか、ダメだった時のことも考えられているか。物事には必ず光と影があることを分かっている子を見ると、「ああ、この子はきっとこの先も残っていくんだろうな」と思いますね。これは芸能もビジネスも、まったく一緒です。成功したいだけのヤツは、ちょっと難しいかなって。
30年越しの夢、全ての原動力は「遊び」にあり
――ヒロミさんご自身が今、個人的に「こういう課題を解決してくれる、こんなアイデアを持つ才能に出会いたい」と思うようなテーマはありますか?
ヒロミ:「遊び」ですね。
僕はね、人間が仕事をするモチベーションって何なのかなって考えると、突き詰めれば「遊ぶため」だと思ってるんですよ。日本人って仕事、仕事ってなりがちなので、遊びがそこまで上手じゃない人が多いなと。だから、その「“遊び”が人生にとって、ものすごく大事なんだ」というのを何か形にできるとか、一緒になって事業にできるような人がいたら、もう本当に即採用みたいな感じですよね。
――「遊び」を事業にする、と。
ヒロミ:実はこれ、僕が30年くらい前からずっと考えていることなんです。30歳のころに「遊びを教えますよ」「遊びってこうですよ」っていう会社を作って、施設まで作ったんだけど、ことごとく失敗してるんです。お金だけ使って、まったくダメだった(笑)。
でも、今考えると、30の小僧が「遊びを教えますよ」なんて言っても、誰も聞かないし、説得力がないじゃないですか。でも、もうすぐ僕も60歳になる。60のオヤジが言うなら、「まあ、ちょっとは話を聞いてもいいかな」って思われ始めている気がするんです。そういう意味で、やっと時代が来たかな、と。
人間、遊びから学ぶことってすごく多くて、そこから伝えられることもたくさんある。そういう「遊び」の価値を本気で信じて、事業にしたいって思ってくれる人がいたら、本当に面白いなと思いますね。
まだ見ぬ未来の才能の見つけ方
――そのような世に出ていないユニークな「遊び」の才能を、社会全体で見つけ出すにはどうすればいいでしょうか。
ヒロミ:まさにそこですよね。例えば、昔はテレビも雑誌も「王様」だったから、面白い人がいれば向こうから来てくれた。でも今は個人がメディアを持つ時代で、力関係がまったく変わった。コラボすることが当たり前になった。
――簡単ではなさそうですね。
ヒロミ:どうやって探すんだろうね……今まで探そうと思ったことがないからな(笑)。
テレビを作る側にしても、本当にテレビ局に入った人だけが面白いものを作れるのか。局には入れないけど、めちゃくちゃ面白いコンテンツを作れる人は外にたくさんいるはずなんです。そういう才能をオーディションで見つけるとか、やり方はいろいろあるはず。
企業も同じで、今は一社だけでやるより「こことここがコラボした方が面白いんじゃない?」って考えるのが当たり前。両方がWin-Winになる組み合わせを探すのがビジネスになっている。
メディアもまったく同じ。「テレビはテレビ、雑誌は雑誌、あっちはYouTube」なんてもう言ってる場合じゃない。テレビも雑誌もSNSも、何もかも、やっぱり「みんなでギュっとやって強くする」っていうのが、これからはありなのかなと。強みを合わせて、“総合的に”面白いものを探して、世に出していけばいいのにな、ってすごく思いますね。




