先週末(9月19日から9月21日まで)の北米興収ランキングは、前週に日本のアニメ映画として、かつ北米で公開された非英語圏の外国語作品として異例のヒットスタートを飾った『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(日本公開中)が見事にV2を達成。既報の通り、前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)を抜き去り日本映画の全世界興収トップへとのぼり詰めたわけだが、当記事ではあくまでも北米の成績だけに着目していきたい。

『ミュウツーの逆襲』を超えて北米での日本映画最大のヒット作に!公開10日目に累計1億ドル突破『ミュウツーの逆襲』を超えて北米での日本映画最大のヒット作に!公開10日目に累計1億ドル突破 / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
まず日本映画が北米興収ランキングでV2を達成するのは史上初めてのこと。これまで同ランキングでNo. 1を獲得したことがある作品は『劇場版 ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(98)と『無限列車編』、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』(22)、『君たちはどう生きるか』(23)のみ。No.1を獲ること自体が歴史的快挙であるなかで、さらに偉大な記録を打ち立てたということになる。

しかしながら気になるのは週末3日間の興収だ。もともと日本のアニメ映画のようなファンダムに支えられるタイプの作品は“初動型”、すなわちオープニング週末(特に初日)に著しく成績が偏る傾向にある。『無限城編』も2週目に大幅な成績ダウンとなることが予想されていたが、その通りとなってしまったようで週末3日間の興収は1730万ドル。7000万ドルを上回るスタートを飾った前週対比で24.5%。ざっと4分の1の興収だ。

【写真を見る】全世界興収で日本映画歴代1位にのぼり詰めた『無限城編』が、北米でもアニメ界の救世主に【写真を見る】全世界興収で日本映画歴代1位にのぼり詰めた『無限城編』が、北米でもアニメ界の救世主に / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
これは歴代のオープニング興収から2週目興収への下落率ランキングで、ワースト81位に入る。オープニングNo. 1を獲得した作品に限定すると10番目に大きな下落率となり、上にいる9作品は先述の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』と、“初動型”の傾向が特に強いアメコミ映画で作品評価が伸び悩んだ『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(24)と『マーベルズ』(23)、そして残り6作品も“初動型”で知られるホラージャンルであった。

これらのなかで2週目も首位を守り抜いたのは『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(23)のみであり、同作も今回の『無限城編』も、初動の数字の大きさに幾分か助けられたことは明白だ。とはいえ『無限城編』は、他に二つの快挙を達成しており、このやや不名誉な記録を打ち消したといってもいいだろう。一つは週末に入る前に『ミュウツーの逆襲』を抜いて、北米における日本映画歴代興収No. 1に立ったこと。そしてもう一つは、公開10日目の日曜日に北米累計興収1億ドルに到達したこと。

「鬼滅」ファン以外にもリーチし、さらなる記録更新に期待がかかる「鬼滅」ファン以外にもリーチし、さらなる記録更新に期待がかかる / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
実は2025年は、サマーシーズンを終えた時点で興収1億ドルを超えるアニメ映画が一本もないという珍しい年であった。コロナ禍の影響を受けた2020年と2021年を除くと、そのような年は1997年まで遡ることになる。現地メディアの報道によれば、『無限城編』には日本のアニメに慣れ親しんでいるZ世代や「鬼滅」ファン以外の客層も多く足を運んでいるようで、アニメ界の活気を取り戻す起爆剤としての期待は日増しに高まっていることが窺える。3週目末はどこまで踏みとどまることができるのか。引き続き注目していきたい。

文/久保田 和馬

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