冤罪によって、長い間、引き離された赤阪さん家族(映画の場面)©︎2025カンテレ

砂田 明子:フリーランスライター、編集者)

 日本の刑事裁判の有罪率は「99.8%」。ひとたび起訴されると、裁判で有罪となる確率は99.8%だということだ。この極めて高い有罪率のなかで、「逆転無罪」が続出した事件がある。「揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome/通称:SBS)」である。

 2010年代、乳幼児を強く揺さぶって「虐待」したとして親などが逮捕・起訴され、センセーショナルに報道される事件が相次いだ。逮捕されると容疑者として実名を晒され、長きにわたる勾留を余儀なくされる。しかし、弁護士や研究者らによって「SBS検証プロジェクト」が立ち上がり、裁判が始まると一転、無罪判決が相次ぐ*注。

※注:2018年以降、「SBS検証プロジェクト」が関与した裁判での無罪判決は13人(うち2人は公判中)。

 なぜ多くの冤罪が生まれたのか──。

 この事件を8年間取材してきた関西テレビ・上田大輔記者が監督を務めた映画『揺さぶられる正義』が公開された。「虐待をなくす正義」と「冤罪をなくす正義」のぶつかり合い、引き裂かれた家族の苦悩、“犯人”のレッテルを貼るメディアの責任……。映画は日本の刑事司法とメディアの在り方を問うと同時に、誰の身にも起きうる冤罪とは何かを描く。

 若き日に刑事弁護人に憧れ司法試験に合格するも、挫折して企業内弁護士から記者へとたどり着いたという上田監督。初となる映画作品の公開を機に話を聞いた。

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