【舞台裏インタビュー】<山人音楽祭2025>HAWAIIAN6、榛名ステージ初日トリ「全員が自由であるってことが俺にとってのいい景色」

<山人音楽祭>の第1回目から2022年を除いて毎回出演してきたHAWAIIAN6。まさに盟友と言える彼らに今回、G-FREAK FACTORYは榛名ステージのトリという舞台を用意した。

恐らく、第1回目の榛名ステージのトリを務めた彼らに10周年のタイミングで再び同じ舞台に立ってほしかったんじゃないかと想像するが、それに応えようとしたのか、そんなことはこれっぽっちも考えてなかったのか。

それはさておき、「いい景色の最後だ! いつも通りやるぞ!」とHATANO(Dr)の雄叫びを合図にステージの3人は「MAGIC」から演奏になだれこむと、あっという間にいい景色を作り上げていった。

「素晴らしい。G-FREAK FACTORYの主催で、俺達の前にlocofrankが出て、途中、土砂降りになった。ある意味、ちゃんとしている(笑)」(HATANO)

そんなMCを挟みながら、この日、彼らが演奏したのは、「I BELIEVE」まで鉄板と言える全8曲。シャッフルのリズムが跳ねる「PROMISE」では、観客が肩を組みながらぐるぐる回るピースフルなサークルピットも出現した。エネルギッシュなバンドの演奏もさることながら、この界隈随一の美しいメロディーを歌い上げるYUTA(Vo, G)の力強い歌声はさらに説得力が増したように感じられたのだった。

「みんながいろいろなバンドを楽しんでいるのを見てるのがうれしかった」とHATANOは観客に語りかけたが、そのHATANOをはじめ、演奏しながら自然と笑みがこぼれるステージの3人も観客と同じくらい、いや、それ以上に<山人音楽祭>を楽しみ尽くしていたに違いない。

バンドを代表して、HATANOが10周年を迎えた<山人音楽祭>のステージに立つ思いや今現在のフェスやライブハウスに対する熱い思いを語ってくれた。

   ◆   ◆   ◆

──ライブの冒頭で「いい景色の最後だ!」というふうにおっしゃっていましたが、いい景色を作れたんじゃないですか?

HATANO:そうだったらいいですね。ただライブって、これは自分の感覚なんですけど、俺が若かりし頃からライブハウスで見てきたいい景色って、決して盛り上がってることだけを言ってるわけじゃない。別に後ろのほうで酒を飲みながら見てようが、なんなら寝っ転がって見てようが、全員が自由であるってことが俺にとってのいい景色で。今のくだらねえ大人達は、あれするな、これするなってバカなことを言うじゃないですか。コンプライアンスが云々って。そうじゃなくて、自由になりたくてお金と時間を使って来た場所で、あなた達は本当に自由ですかっていうのが自分の中では一番大きいんですよ。だから、その自由があれば俺はいい景色だと思っていつもライブをやってます。自分達が選んだ場所では、自分のままであるべきだっていう。それが今、ライブハウスでも目指していることなんです。伝えたいというか、ライブで感じてほしいんですよね。だって、生きるってそういうことだと思うから。

──ところで、今年<山人音楽祭>は10周年を迎えましたが、G-FREAK FACTORYと近い関係で<山人音楽祭>に参加しつづけていることに加え、同じように<ECHOES>を主催しているHAWAIIAN6のみなさんにとっても感慨深いものがあるのではないでしょうか?

HATANO:そうですね。でも、俺にとっては10周年とか15周年とかってあくまでも節目であって。だから、言いやすいワードではあるんですけど、9年目も11年目も気持ちも変わらないし、実際、何も変わらないじゃないですか。だから、俺は10周年とか15周年とかって言うよりかは、ずっと続いていってほしいっていうだけで。自分達もそのページの中に入れたんなら幸せですよね。ただ、ライブでたまに言うんですけど、「ああいうイベントがあったよね」って言われたくないですよ。だから、「このイベントは昔からあったんだよね」って言われるように、20年も30年も続いてくれたらいいですね。この歳になってようやくわかったんですけど、永遠ではないんだなっていう。だから1年1年が全部奇跡。フェスのフライヤーに載っている出演者が全員出演できてるっていうのも、もはや奇跡なんだって、仲間達が死んでいく姿を見てやっと理解できるようになって。だから、10年目はこうだったけど、11年目はさらに進化してるみたいなね、そういうことを楽しみにしてますね。どのイベントに出してもらっても、俺は「10周年おめでとう」みたいなことはあんまり言ったことはないんですよ。9年目の時も来年があると思って出たわけじゃないし、今年も今年で来年があると思ってやったわけでもないし。毎回毎回、奇跡の中で生かさせてもらってるっていうところで楽しんでるだけです。

──なるほど。おっしゃることはすごくわかります。わかるんですけど、今回、HAWAIIAN6は榛名ステージのトリを任されたじゃないですか。

HATANO:よせばいいのに(笑)。

──第1回目でも榛名のトリを任されていることを考えると、今回の榛名ステージのトリはやはり10周年だからという気もするんですが。

HATANO:どうなんでしょうね。でも、この10年、いろいろなステージでやらせてもらえてありがたいですよね。ただ、トリだからって変な話、やってる曲にトリバージョンがあるわけじゃないじゃないですか。だから、やってる曲は同じなんだけど、やっぱり自分達がこの1日の締めなんだって思うと、ちょっと特別な気持ちにはなる。そういう意味では少しムキになりすぎて、空回りしかけました。

──えー、そうだったんですか。

HATANO:でも、それぐらいでちょうどいいかなっていう(笑)。

──今日、G-FREAK FACTORYのメンバーはどんな言葉でステージに送りだしてくれましたか?

HATANO:セットチェンジもあるから、最後まで見れないけどって。でも、最後まで見れないものを任せてもらえたんだったら、それはそれでうれしい。でも、G-FREAKとはもう言葉は要らないぐらい、いろいろなことをずっとやってきたし、いい時も悪い時も一緒だったし、改めてどうこうっていうのはないですよね。さっきもG-FREAKのメンバーと「またやろうね」って話をした後に、これは全然後ろ向きの話じゃなくて、笑いながら「お互い生きてたらやろう」「うん」って。その言葉がちゃんと言えるようになったんですよ。前は、なんとなく昔のノリでやってたような気がするんですよね。だから、「来年も再来年もやろう。5年後はこんなことをやろう」とか、みんな言ってたんですよ。「10年後はこうなれたらいいな」とか。でも、10年後って、もう保証されてないって、みんなわかったし。だからこそ、よけいにいいんですよね。

──保証されていないからこそ、1回1回が本当に大事なものになりますね。

HATANO:変な夢を見なくなったと言うか。あれがガキってことだったんだろうなって思うんですけど、それはそれでいいじゃないですか。だけど、今は仲間が教えてくれる。変な話、自分ちに仲間の写真だけになった姿とか増えてくるじゃないですか。でも、自分もいつかはそうなるんですよ。だけど、それがいつかはわからないからおもしろい。だったら今日ムキにならなきゃ、悔いが残るじゃんっていう。その繰り返しですよ。

──MCでも「今日めいっぱい楽しむしかない。G-FREAK FACTORYが作ったこの夜を。燃えようぜ」っておっしゃっていましたね。

HATANO:近しい仲間が何人もこの1年、2年で逝っちゃったんですけど、「おまえはまだやれるだろう」って言われてる気がするんです。

──なるほど。同じフェスに出演していても若いバンドとキャリアを積み重ねてきたバンドではあたりまえですけど、言うことの重みが違う。いや、若いバンドの、フェスを楽しんでいる感じももちろんいいんですけど。

HATANO:若いってそういうことだと思うし、自分もそうだったはずだし。ただ、その過ぎていく時間の中でそういうことを教えてくれるありがたい仲間達がいっぱいいたっていうだけのことで。昔の俺らの時代のライブハウスって、ある意味危ないところだったじゃないですか。それを知ってる奴らも減ってきて、代わりに「ライブハウスではいい子にしてなきゃいけない」なんてわけわからんことを言う出す奴が出てきて。でも、あの当時は人とうまく喋れない子とか、家の事情がすげえ複雑な奴とか、生い立ちがめちゃくちゃな奴とか、そいつらがいてもいい場所がライブハウスだったじゃないですか。そこでしか空気が吸えないような奴らがいて、でもそれが時代とともに変わってきて、今は女の子もいれば、子どももいればっていう。その変化の様にはすごく美しい部分もあるし、すごく寂しく感じる部分もあるし。それでも今の自分がやってる場所ってここなんだと思って、何ができるんだっていったら、その匂いをできるだけ残すこと。残しながら、「あなた達が選んでください」って、お客さんにも対バンの後輩にも伝えることを、ジジイの役目としてやっていけたらいいかなって思います。

──ありがとうございます。特集がびしっと締まるようなお話を聞かせていただきました。ありがとうございます。

HATANO:いやいやいや(笑)。

──せっかくなので、10月25日と26日に開催する<ECHOES 2025>の見どころを最後に聞かせてください。

HATANO:今年は北海道のSLANG ってバンドが出れなくなって。見え方は少し違うのかもしれないですけど、フェスでもよく言ってるように音楽を楽しんでほしいんですよね。オムニバスCDが売れなくなって、レーベルも出さなくなったじゃないですか。でも、1,000円で知らないバンドが20バンドも聴けるオムニバスって、いい出会いがあってすごくいいものでしたよね。フェスとかイベントとかってそれと同じものだと俺は思っていて。飯を食いに行く時間もあるかもしれないけど、チケット代として払ったお金で15バンド見られるなら見てみてほしい。もしかしたら人生変えてくれるバンドがいるかもしれない。そういう意味で楽しんでほしいですね。有名だからとか、この曲知ってるからとかじゃなくて。たとえばビートルズみたいな超有名なバンドだって、どこかで出会うから知るわけじゃないですか。であなたが足を運んだ会場には、他の人の人生は変わらないかもしれないけど、あなたの人生が変わるバンドがいるかもしれない。そういうワクワクを期待して、ジャパコアとかスキンズとかのバンドを見てほしいです。ハハハハ。

──そうですよね。それで人生が変わる人もいるかもしれない。

HATANO:俺達はそうでした。まぁ、堅苦しいことは抜きで、音楽を楽しんでもらって、1日を楽しんでもらえたら、<ECHOES>に限らずね、そういうふうにバンドに触れてほしいなって思ってます。

取材・文◎山口智男
写真◎淵上裕太
ライブ写真◎半田安政

■G-FREAK FACTORY主宰<山人音楽祭 2025 ~10th Anniversary~>
9月20日(土) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
9月21日(日) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
〒371-0035 群馬県前橋市岩神町1-2-1
open9:30 / start11:00 / 終演20:00※予定

▼9/20(土)出演者
Age Factory / ENTH / かりゆし58 / 氣志團 / KOTORI / G-FREAK FACTORY / SHANK / 上州弾語組合 / SKA FREAKS / 高木ブー / DJダイノジ(大谷) / 10-FEET / TOTALFAT / 花冷え。 / HAWAIIAN6 / The BONEZ / locofrank / ROTTENGRAFFTY(※五十音順)
“能登半島応援企画 MAKE A PROMISE TO NOTO (Tokyo Tanaka×バカビリー×高橋ちえ)”
▼9/21(日)出演者
片平里菜 / G-FREAK FACTORY / J-REXXX BAND / JUN SKY WALKER(S) / 上州弾語組合 / 四星球 / 竹原ピストル / NakamuraEmi / バックドロップシンデレラ / ハルカミライ / Hump Back / BANYAROZ / 04 Limited Sazabys / FOMARE / BRAHMAN / HEY-SMITH / 山嵐 / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS(※五十音順)

『山人MCバトル×戦極MCバトル』※開催は9/21(日)
Armadillo / bendy / DOTAMA / FCザイロス / GOMESS / KOOPA / 溝上たんぼ / NAIKA MC / 歩歩 / risano / Sitissy luvit
DJ:R da Masta
司会:K.I.G

『上州弾語組合』
9/20(土) 清水 明夫 / KIE Anderson / garb / 16号。 / 横山 ナオ / 上原梅弦
9/21(日) 高平 悠 / 山口 貴大 / 茂木 拳 / 鹿山 音楽 / ジュンペイ / 藤井 トモカズ

▼チケット
・各1日券 9,500円(税込)
・2日券 18,000円(税込)
・駐車場付 1日券(9/20)※SOLD OUT
・駐車場付 1日券(9/21)※SOLD OUT
・駐車場付 2日券 ※SOLD OUT
(問)DISK GARAGE https://info.diskgarage.com
主催:DISK GARAGE/BADASS/上毛新聞社
企画・制作:DISK GARAGE/BADASS

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