9月12日から9月14日までの全国映画動員ランキングが発表。「敬老の日」の連休となったこの週末。いまだに勢いの衰えない『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(公開中)が、『8番出口』(公開中)や福山雅治主演の『ブラック・ショーマン』(公開中)をはじめとした秋シーズンの目玉となる新作タイトルを抑えて9週連続No.1を達成。今回は、新たな大記録を打ち立てた『無限城編』と、それに続く新作タイトルの動向を分析していこう。
■累計動員2304万人&興収330億円を突破!『無限城編』はどこまで数字を伸ばせるのか『千と千尋の神隠し』を抜いて日本歴代興収2位!残すは『無限列車編』のみ / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
今週の『無限城編』の週末3日間の成績は、観客動員52万3000人、興行収入8億3000万円と、公開から2か月を迎えようとしているタイミングでありながら前週を上回る動員&興収を記録。祝日となった9月15日までの公開60日間での累計成績は、動員2304万2671人、興収330億5606万6300円。事前の予測通り『千と千尋の神隠し』(01)を抜き去り、日本歴代興収ランキングの2位に浮上。これで前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)とワンツーを飾ることとなった。
ちなみに『無限列車編』が『千と千尋』の興収(2020年夏の再上映を含めて316億8000万円)を超えたのは公開11週目の土曜日だったので、初日から数えて72日目。今回はそれよりも2週間近く早いペースで達成したことになる。こうなると、次に『無限城編』に期待されることは、やはり『無限列車編』の興収(公開時は404億2877万円だが、今年のリバイバルを含めて407億5000万円に到達している)を超えること一択だ。
今年の夏休み興行で、他を寄せ付けない圧巻の強さを見せつけてきた / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
それを分析するうえでまず頭に入れておきたいのは、『無限列車編』と『無限城編』の状況の違いである。前作はコロナ禍の映画界を救った存在で、ほかのライバル作品がほとんどなく、かつ10月中旬の公開。対して今作は夏休み映画で、すでに強力な大作映画を次々と完封。相手関係の面では前作が圧倒的に有利ではあったが、今作は平日も安定した動員が見込める公開時期の利を存分に活かし、驚異的なペースであらゆる記録を塗り替えることに成功してきたのである。
また、前作当時から映画の入場料金が値上がりしている点も、累計興収を考えるうえで重要なポイント。今作の現在までの累計成績から割り出される平均客単価は1434円だが、前作が“千尋超え”を達成した11週目末の時点では1350円だったので、その増加率は106%。また同時点の累計成績も動員2404万人&興収324億円なので、今作の現在の累計成績よりも100万人多い動員でありながら興収は6億円以上少ない。
『チェンソーマン レゼ篇』など、秋の大作映画を凌げるのか / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
これらを踏まえて、改めて『無限列車編』の“千尋超え”以降の推移を見てみると、その翌週(ちょうど年始のタイミングであった)以降に急激にペースを落とし、動員数を500万人ほど上乗せして興収400億円の大台に到達するまで約5か月。そこまでロングランしていること自体が驚異的なのだが。つまり『無限城編』があと500万人近く動員数を上乗せできれば、動員数で前作に届くよりも先に興収で上回ることができる。そのためには今後、成績の下落をいかに少なく抑え込むことができるかがカギとなるわけだ。
次週末の『チェンソーマン レゼ篇』(9月19日公開) を筆頭に、ライバルが多いのが気がかりなところ。とはいえ『無限列車編』の際は、公開まもない段階から入場者特典が配布される週末とそうでない週末で成績の乱高下が激しく、対して今作は夏休みの恩恵があったとはいえ、各週末の下落幅はいたって平穏に来ている。それが『鬼滅』という作品自体の盤石さの表れであれば、不可能だと思われていた“『鬼滅』超え”を、自らの手で成し遂げることも充分に有り得る話だ。
■『ブラック・ショーマン』『キミとアイドルプリキュア♪ 』らが初登場!
さて、「ガリレオ」シリーズに続いて東野圭吾の小説を福山雅治主演で映画化した『ブラック・ショーマン』は2位に初登場。初日から3日間で動員39万6000人、興収5億5600万円と、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』には届かなかったものの、今年公開の実写邦画作品としては第4位のオープニングを飾っている。
【写真を見る】東野圭吾×福山雅治は鉄板!『ブラック・ショーマン』の気になる初週末成績は? / [c]2025映画『ブラック・ショーマン』製作委員会
これまで多数の著作が映像化されてきている東野作品。そのなかでも福山とタッグを組んだ「ガリレオ」シリーズは、テレビドラマに始まり、劇場版3作品いずれもが大ヒットを記録。『容疑者Xの献身』(08)の記録した興収49億2000万円は、いまだに東野作品の映画化における最大のヒットであり、『真夏の方程式』(13)も興収33億1000万円、『沈黙のパレード』(22)も興収30億円と安定感が抜群。
ちょうど『沈黙のパレード』が公開されたのは3年前の同じ時期で、祝日を含めた公開4日間の成績は動員49万3000人&興収6億9600万円だった。今回の『ブラック・ショーマン』は、祝日までの公開4日間で動員53万人&興収7億円を突破している。「ガリレオ」のようなシリーズ作としての強みはないものの、今作も福山×東野タッグにふさわしいヒットとなることは確実だろう。
累計興収31億円を突破!『8番出口』も引き続き絶好調 / [c]2025 映画「8番出口」製作委員会
先週、先々週と『鬼滅』に食い下がった二宮和也主演の『8番出口』は3位にランクイン。週末3日間の動員は36万8000人、興収5億4000万円と前週比79%の成績をキープ。累計成績では動員226万人&興収31億円を突破しており、現時点で二宮主演作の最大のヒット作である『GANTZ』(11)の興収34億5000万円をすでに射程圏内にとらえている。
また、4位に初登場を果たしたのは「プリキュア」シリーズの第22作『映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』(公開中)。初日から3日間で動員28万3000人、興収3億4600万円と、昨年の同時期に公開され最終興収12億4000万円だった『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ・ゲームの世界で大冒険!』(24)の初週末対比96%の動員成績となっている。
近年好調が目立つ「プリキュア」シリーズ最新作は4位にランクイン / [c]2025 映画キミとアイドルプリキュア♪製作委員会
公開15週目を迎えた『国宝』(公開中)は、5週ぶりにトップ3圏内から外れて5位に。それでも9月15日までの累計成績は動員1013万人&興収142億7000万円と、観客動員1000万人の大台を突破。前週末から9億円以上の興収を積み上げており、日本歴代興収ランキングでは19位に浮上。今年公開された『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』(25)まであと4億円に迫っている。
バカリズムが脚本を務め、かげはら史帆の歴史ノンフィクションを実写映画化した山田裕貴主演作『ベートーヴェン捏造』(公開中)は6位スタートとなった。
19世紀のウィーンで起きたスキャンダルを描く『ベートーヴェン捏造』は6位デビュー / [c]2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates and Shochiku Co., Ltd. All Rights Reserved.
以下は、1〜10位までのランキング(9月12日〜9月14日)
1位『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
2位『ブラック・ショーマン』
3位『8番出口』
4位『映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』
5位『国宝』
6位『ベートーヴェン捏造』
7位『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』
8位『カラダ探し THE LAST NIGHT』
9位『ジュラシック・ワールド/復活の大地』
10位『ヒックとドラゴン』
今週末は、藤本タツキの人気マンガを原作としたテレビアニメ「チェンソーマン」の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』、第160回直木賞を受賞した同名小説を妻夫木聡主演で映画化した『宝島』(9月19日公開)、ウェス・アンダーソン監督の最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』(9月19日公開)などが控えている。
文/久保田 和馬