写真・堤博之
「とんでもないものができた」。完成した映画を見た妻夫木さんはそう感じたという。第2次世界大戦後、米国の統治下にあった沖縄が舞台の映画『宝島』。原作は直木賞を受賞した同名の小説で、公開前から大きな注目を集めている。
米軍から物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」の人生を描く。ある襲撃の夜、突如姿を消した町の英雄オン(永山瑛太さん)に隠された謎を追う物語だ。
オンの親友グスクを妻夫木さんが、オンの恋人ヤマコを広瀬さんが演じた。
実際の事故や事件も描かれ、沖縄に強いられた不条理や市民の葛藤を映す。広瀬さんは「知るって大事だなと思った。映画を通して沖縄のことを知ってもらえたら」と願う。
これまでにも、沖縄が舞台の映画に出演したことがある妻夫木さん。グスクを演じるにあたり、沖縄戦を伝える美術館を訪れたり、当時を知る人に取材したりした。「沖縄の方々にとって戦争はまだ終わっていない。東京の役者である僕が演じるからこそ、沖縄の映画ではなく日本の映画なんだと代弁したい」
2021年から予定されていた撮影はコロナ禍で2度延期。実際に始まったのは24年2月だった。撮影期間は、2人が「ありえない」と口をそろえるほど長い約4か月間に及んだ。こだわり抜かれた作品が戦後80年の今年、ついに公開される。
広瀬さんは「監督をはじめとするみんなの熱意というか、怒りというか、叫びというか。思いがすごく伝わってくる作品になった」。妻夫木さんは中高生に向けて「失敗を恐れず挑戦してほしい。そう感じてもらえる作品になっています」とメッセージを送る。(文・正木皓二郎、写真・堤博之)
写真・堤博之
1980年12月13日生まれ、福岡県出身。2001年に『ウォーターボーイズ』で映画初主演。沖縄が舞台の映画『涙そうそう』や『ある男』などで主演を務めた。NHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演中。
1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年から雑誌「Seventeen」の専属モデルとして活動。主演作に映画『ちはやふる』シリーズや『四月は君の嘘』など。
映画『宝島』は9月19日全国公開
(朝日中高生新聞2025年9月14日号)

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