北アイルランドの写真家フィリップ・アーニールによる写真集『Tokyo Jazz Joints 消えゆく文化遺産 ジャズ喫茶を巡る』が2025年8月21日に青幻舎より発売された。

 ただの喫茶店でもバーでもない、音楽と向き合うための特別な場所「ジャズ喫茶」。静かな空間で高音質のジャズに耳を傾け、コーヒーや酒を嗜む。そんな日本特有の文化の魅力に心を奪われたのが、北アイルランド出身の写真家フィリップ・アーニール。約20年日本に暮らした経験を持ち日本語も堪能な彼は、同じくジャズ喫茶に魅了されたアメリカ出身の放送作家ジェームス・キャッチポールとともに、「Tokyo Jazz Joints(東京ジャズジョイント)」を立ち上げた。

 「Tokyo Jazz Joints」は時代とともに消えつつあるジャズ喫茶やバーを記録するプロジェクトで、2015年、東京・蒲田にある「直立猿人」の訪問から始まると、やがて舞台は「Tokyo」 を飛び出し、全国津々浦々のジャズ空間を巡る旅へと広がっていった。「Joints」は店という意味を表すスラングで、「Tokyo」と付いているのはプロジェクトが始まったのが東京の店だったからだという。

 3年以上の歳月をかけて撮影された写真は、2023年にドイツの出版社ケーラー(KEHRER)より写真集として刊行。イギリスの大手新聞「The Guardian」やBBCでも取り上げられ、国境を超えて高い評価を得た。今回、本作の日本語版を刊行することなった。

 本書には、全国に点在するジャズ喫茶から厳選した店舗をオールカラーで掲載。東京「ジャズ喫茶いーぐる」「DUG」、岩手「BASIE」、京都「jazzspot YAMATOYA」などの名店から、現在は閉店してしまった幻の店も収録し、写真には一軒一軒のまとう空気、質感が写し出されている。日本語版では原書から仕様を変更し、コンパクトなB5判型横長に。ハードカバーの原書とはまた異なった、愛らしさを感じさせる仕上がりとなった。巻末には、アーニールの書き下ろしテキストを追加収録。初めての写真集刊行から2年経った現在の心境、2025年の来日時の旅の記録、そして今後のプロジェクトについてなど、日本語版への思いが込められた内容になっている。

フィリップ・アーニール

北アイルランドのベルファスト生まれのドキュメンタリー写真家兼ライター。ロンドン芸術大学でフォトジャーナリズムとドキュメンタリー写真の修士号を取得している。数々のメディアで作品を発表、世界各地でグループ展や個展を開催。現在、アルスター大学でAHRC Northern Bridgeの博士課程に在籍。

■書誌情報
『Tokyo Jazz Joints 消えゆく文化遺産 ジャズ喫茶を巡る』
著者:フィリップ・アーニール
価格:4,180円(税込)
発売日:2025年8月21日
出版社:青幻舎

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