2025年9月12日

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鑑賞方法:映画館

西島秀俊演じる賢治はニューヨークの大学で建築学を教えている。専門は廃墟。グイ・ルンメイ演じる妻のジェーンは、移民であった親の食料品店を手伝いながら人形劇の舞台監督をしている。二人には4歳になる男の子カイがいて一見幸せそうな家族に見えるが内情はなかなか複雑である。
賢治はテニュア・トラック5年目であり安定した身分とはいえない。ジェーンの人形劇もかなり畸形な人体表現に基づくアブストラクトな色彩を帯びたものであって一般にうけるものではないだろう。そもそも廃墟にしても人形劇にしても、どこか影を引きずっている印象がある。そしてジェーンが言う通り彼と彼女のオリジナルな言語は英語ではない。二人とも夫婦喧嘩が英語で通してしまえるほどの話者であるものの、基本、この街ではストレンジャーであり、それがそもそもの影を落としている。
映画が進むにつれて、さらに、カイの出生について秘密があることがだんだんわかってくる。それに関連して、この家族を襲う暴力と犯罪、そして警察による捜査。影が正体を現し牙を剥いて向かってくるのである。
正直、最後の30分間の進展はよく分からない。ここで行動しているのはほとんど賢治一人なのだが彼の出版発表会における講演や発言はよく理解できないしその後の賢治の行動や心境も共感できるようなできないような曖昧な感じである。
でもこの映画で決定的に素晴らしいのはグイ・ルンメイの美しさ。例えば彼女が尊敬しているといっているマギー・チャンのように光を当てれば光り輝く女優ではないが、グイ・ルンメイは光を当てることによって、濃く、美しい影をつくり出すことができる。影絵のように動き、深い余韻を残すことができる。だから、この作品のラストカットは彼女のアップで終わるのだがその表情はやはり具体的な怒りであるとか喜びではなく、何か纏わりつくようなアトモスフィアなのである。

あんちゃん

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Dear Stranger ディア・ストレンジャー

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