
10曲作って1曲すごくかっこいいものができればいい
去る7月26日、代官山の晴れたら空に豆まいてにて、DJ MITSU THE BEATSを講師に迎えたビート・メイキング講座が行われた。この企画は、ドン・ブラックマン「Holding You, Loving You」の音源を公式にサンプリングし、リアルタイムでビート構築の過程や手法を伝えるもの。主催はヒップホップやR&B専門のミュージック・スクール“GROOVE MUSIC ACADEMY(以下GMA)”で、イベント当日はスクールでの講師を務めるラッパーのCOMA-CHIがMCとして参加した。ここでは、その模様をレポートしよう。
Text:Kanako Iida Photo:Toshipachi

GROOVE MUSIC ACADEMYは、ヒップホップとR&Bに特化したミュージック・スクール。コースはラッパー/シンガー科、DJ/プロデューサー科の2つから選択可能だ。いずれの専攻も半年間のベーシック・コースと、1年間のプロフェッショナル・コースがあり、プロフェッショナル・コースでは音源リリースまでサポートする。
ラッパー/シンガー科は、R&Bボーカリストやラッパー志望者を対象としたコース。歌唱法やラップの基礎習得、リリック制作、ステージング指導などの講義が用意されており、講師としてCOMA-CHI、Mummy-D、有坂美香らが参加している。
DJ/プロデューサー科では、DJ WATARAIやDJ BAKUが講師として参加。トラック・メイカーやDJ、プロデューサーを目指す方に向けて、ビート制作やDJの基礎と実技指導、ミックスやマスタリングの基礎知識などの講義を用意。加えて、両コースでヒップホップの歴史や文化的背景、音楽ビジネスなどの講座も用意されている。
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ドラム配置は視覚的に設定
この講座は『DON BLACKMAN LEGACY PROJECT 2025』の一環として実施され、ドン・ブラックマン「Holding You, Loving You」をサンプリング素材として公式に使用。冒頭にはドンの息子であるカイル、娘のイリーナからのビデオ・メッセージも寄せられた。
その後、講師であるDJ MITSU THE BEATSと、MCでありGMAの講師としても活躍するラッパーのCOMA-CHIが登場。2人は旧知の仲で、「ミツさんはライブの楽屋でも、本番直前までずっと曲を作っている」とCOMA-CHIが裏側を明かす場面などもありつつ、MITSU THE BEATSによるトラック・メイクがスタートした。
この制作では、APPLE MacBook Pro+AVID Pro Toolsのみを使用。「Holding You, Loving You」のオーディオ素材をドラッグ&ドロップでセッション上に読み込むと、テンポを88BPMに設定した。
続いてはドラムの音色設定で、自作のライブラリーからキック、スネア、ハイハットをピックアップ。ライブラリーにはサンプラーのE-MU SP-1200を通したバージョンの音も用意しているというMITSU THE BEATSだが、このサンプルの処理については、「SP-1200にサンプルを1個ずつ通すのは面倒だから、キックやスネアのサンプルを連続で鳴らして録音し、その一連のフレーズをチョップしている」と話す。
サンプル選択後、MITSU THE BEATSは、キック、スネア、ハイハットを1個ずつセット。どのように鳴るか思い描きながら、耳で聴くのでなく視覚的に波形の配置を決めていく。キックはグリッド通り、ハイハットはややグリッドから遅らせ、スネアはややグリッド前に配置。それらを複製して再生すると、GAGLEの楽曲でも聴くことができる、独特のもたり気味なグルーヴのビートがスピーディに完成した。
サンプリング曲のドラムも生かす
続いて上モノに着手。フレーズを切り刻んで再構築するような場合、ドラム・ループを流したまま、上モノのトラックをオーディオ録音状態にして、AKAI PROFESSIONAL MPCやNATIVE INSTRUMENTS Maschineなどで打ち込んで構築することも多いそうで、「自分がたたいているのを、ノリも含めてそのまま録音する」と話す。間違えたところや声が入ってしまったものもそのまま使うことがあるそうだ。
次の工程はドラムと上ネタのタイミング合わせ。ベース・ラインを聴きながら不要なドラムを削ったり、音が合う位置に移動する。上ネタ内のスネアとサンプルのスネアの位置を合わせてなじませるなど、サンプリング元のドラムも生かして調整する様子が印象的だった。
ループ内の隙間をベース・ラインで埋め、ミックスの基礎も紹介しつつ、トラックが完成。「重ねて細かくやったから良いものができるわけではなく、キック、スネア、ハイハット、上物、ベースだけでもいい。短時間での作業でも良いモノができる」と話した。最後は、そのトラックにCOMA-CHIがこの日だけのオリジナル・リリックを乗せてラップを披露し、曲が完成した。
講座後に行われた来場者からの質疑応答コーナーも大盛況。「毎日作ってみて、10曲作って1曲すごくかっこいいものができればいいかなと思っています」と締めくくった。

参加していただいた皆さんの制作に対する疑問に対して、自分の経験を踏まえてディスカッションできたかなと思います。技術的なことのほかに“サンプリング”に対する向き合い方を考えるということも一つの重要なテーマであったと思いますし、それに関してさまざまな質問もありました。なんとなく頭にある自分の手法や考え方を発信して伝えることによって、自分自身であらためて気がつくことも多くあり、とても貴重な機会となりました。
GROOVE MUSIC ACADEMYのようなスクールは初心者だけでなく、技術がある人にも視点を広げるという機会になりそうです。こもって一人で作るトラック・メイカーが多いと思いますが、交流することで生まれるものもあります。ぜひ柔軟な視点でオリジナリティを強化してください!
