NHK大河「べらぼう」で主人公・蔦屋重三郎の妻として登場するていは実在する人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「蔦重が妻帯していたのは間違いないだろう。彼の菩提寺にある墓碑銘には、妻が蔦重の最期を見届けた様子が書かれている」という――。


2025年6月15日、中国・上海で開催された上海国際映画祭「日本映画週間」のオープニングセレモニーに出席した女優の橋本愛。

写真提供=CFOTO/共同通信イメージズ

2025年6月15日、中国・上海で開催された上海国際映画祭「日本映画週間」のオープニングセレモニーに出席した女優の橋本愛。



蔦重の妻になる「てい」はどこまでが史実か

小芝風花が演じた五代目瀬川が吉原を去ってからというもの、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、主人公の蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)には女っ気がまるでなかった。


それがようやく、第24回「げにつれなきは日本橋」(6月22日放送)で、蔦重が女性にプロポーズともいえる言葉をかけた。「じゃあ、いっそ俺と一緒になるってなあどうです?」。相手は日本橋通油町の地本問屋(江戸で出版された大衆向けの本や浮世絵をあつかう出版業者)、丸屋の女将で、橋本愛が演じる「てい」である。


時は天明3年(1783)。この時点で蔦重は、多くの売れっ子作家をかかえて成功に成功を重ね、大きな勢いがあったものの、所詮は吉原の小さな書店であることがネックだった。真に一流と認められ、出版物が江戸の外まで広く流通するためには、日本橋に店を構える必要がある――。


書物問屋(歴史書、医書、仏書など固い本をあつかう出版業者)の須原屋(里見浩太朗)から、そうアドバイスされたこともあり、日本橋への進出を真剣に考え出した蔦重は、日本橋の地本問屋街で売りに出されていた丸屋を買い取ろうと決意した。


その流れのなかで蔦重が、蔦屋と丸屋をひとつにして本屋を続けないかと「てい」に提案し、拒まれると、先述の「プロポーズ」が飛び出したのである。


ところで、この「てい」という女性、どのくらい史実に即して描かれているのだろうか。


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