1960年夏ごろのモナリ座(國場組提供)
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映画配給チェーン「国映」(現スターシアターズ)を展開していた國場組で写真アルバムが発見された。100枚を超える映画館関係の写真が綴じられており、国映系列以外の沖映や琉映など、他系列の映画館も混在している。国頭村から宮古、八重山などの離島に至るまで範囲は広い。場所や人物が不明な写真も多いが、沖縄映画興行史の空白を埋める第一級の資料と言える。
その中に与那原町の「モナリ座」を捉えたと思われる1枚があった。「モナリ座」の写真は長い間見つからず、数カ月前に建物が小さく写った写真を提供されたことを契機に本連載で2度にわたって取り上げた。それが今回、大きく鮮明な写真があっさり見つかったことで面食らった。
「モナリ座」は劇場前面の壁に走る4本の横スリットが印象的な建物だ。以前、入手した【モナリ座】が小さく写った写真数枚と比較すると建物のあらゆる箇所の特徴が一致することから、「モナリ座」と言って間違いないだろう。
さらに、スリットの中央には丸い窓があって、その左半分は花ブロックで覆われており、想像以上に凝ったデザインの劇場であることが分かった。ただし、この写真の建物は館名がないので、前述の小さく写った写真がなければ(本連載189回参照)、「モナリ座」であることは判明しなかった。
ショーウインドーに貼られた成瀬巳喜男の『娘・妻・母』の他に、1960年前半公開のポスターが2枚見当たること、劇場前の学生らの服装から、60年夏ごろに撮影されたと推測できる。
新たな「モナリ座」の写真が見つかったことは、沖縄の映画興行史にとってきわめて意義深い。また与那原町の地域文化の記憶をよみがえらせる貴重な発見でもある。
國場組のアルバムには、まだ多くの貴重な映画館の写真が眠っている。
(平良竜次、シネマラボ突貫小僧・代表)
(當間早志監修)