朝食のシーン、悲喜こもごもな日中のシーン、そしてその日を振り返る居酒屋のシーン。中盤に差し掛かって変化球も混ぜてきたが、『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)は基本、この3つのシーンから成っている。規定演技のような構成を採る狙いは会話劇を浮かび上がらせるためではないか。

 11年ぶりの続編として耳目を集めるサードシーズンは以前にも増して、会話劇が面白い。劇中の時間軸は現実に従っており、吉野千明(小泉今日子)はドラマ制作部のゼネラルプロデューサーに上り詰め、長倉和平(中井貴一)は再任用制度で鎌倉市役所の指導監に就いた。若干おっとりしたふたりの掛け合いはベテランの夫婦漫才を彷彿とさせる。

 会話劇の山場は、なんと言っても居酒屋のシーンだ。アドリブじゃないかと思わせるほど臨場感があり、長回しとすることでその効果は否応なしに増幅される。このシーンを撮りたいがために物語をつくっているような気がするくらいだ。

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 胸襟を開いた語り口がそこに拍車をかける。火花を散らす朝食のシーンとは打って変わって、居酒屋のそれは歩み寄ろうとする姿勢が明らかだ。もちろん朝の丁々発止も戯れのようなものであり、心からいがみ合っているわけではないけれど、そのような前哨戦があるから一献傾けながらの語らいがより沁みる。そうしてふたりは自分の気持ちに整理をつける。

 白眉は第1話だった。同僚の葬儀に参列し、不倫のアリバイづくりに利用されたことを知った和平は、「今日はとっさに『それはわたしではありません』って言っちゃったんですよね。(中略)自分自身に嘘をつくのは嫌だったんですよ。それになにかこう、いままでみたいにごまかしてたら、いま目の前にいる奥さまになんか失礼になるんじゃないかって思ってしまって」と吐露する。ささやかながら、勇気ある一歩。千明は意外な態度に驚きつつも、そんな和平を受け入れる。

 千明の葛藤が描かれた第2話も良かった。「まだ若いんだから」とかかりつけ医からしきりに励まされた千明はその言葉に背中を押され、月9にふたたび挑戦することを決意する(指折り数えた千明によれば、医者が口にした“若い”の回数は12回に達したらしい)。そして――「もともとわたしの原動力ってどうやら怒りらしいんですけど。でもなんか最近、怒りだけでは調子が出なくてですね。怒りのこちら側にある自分を肯定する力とか言葉? まあ褒められるとか。そういうことが合わさったときに、わあなんて素敵なハーモニー? という感じで、力が湧き出るということに気づきました」とその心中を明かす。

 和平は自分に正直に生きようとし、千明は重くなった腰をあげた。片や63歳、片や59歳。人生の第一幕が下りかかってはじめて芽生えた、萌木のような覚悟だ。

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 歳月の重みを感じることができるのは、折に触れて彼らのその後が描かれてきたからである。

 日本が人口減少に転じたのは2011年。ファーストシーズンはその翌年に始まった。肌感として、少子高齢化はそこまで差し迫った問題ではなかったが、よくぞ中年の恋愛をテーマにもってきたものだ。

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