1週間がまだ始まったばかりの火曜夜、私たちは不安や焦燥感でいっぱいだ。週末まで3日も頑張れるだろうか? ああでも、あの仕事を終わらせなきゃ……そんな風に。けれど、このドラマを観ると決まって、そうした感情から解放されていくのを感じた。まるでお粥でも食べたかのように、心と体がポカポカと満たされ、よく眠れる。きっと今夜も。
数々の名作を生み出してきたNHKドラマ10枠。視聴者の心を揺さぶり、癒やしてきたこのドラマ枠に新たな仲間入りを果たすのが、桜井ユ…
『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)が最終回を迎えた。
司(宮沢氷魚)が山に出かけて2週間。心にぽっかりと穴が開いた状態のさとこ(桜井ユキ)は、団地に住む70代の女性が働き口を探していることを知る。
現実でも、60〜70代以上の高齢者がコンビニやスーパーなどで働く姿を見かけることが増えた。もちろん、年金収入だけでは生活費を賄えず、必要に駆られて働いている人もいるが、最近は健康や生きがいのために仕事を続けている人も多い。

若者の間でも巴沢(奥山葵)のように老後はゆっくりしたい人、マシコ(中山雄斗)のようにバリバリ働きたい人と意見が二分している。理想は唐(福士誠治)が言う通り、どちらの生き方も自由に選択できることだ。
しかし、現実は厳しい。特に65歳以上の再就職はハードルが高く、体も元気で働く意欲があっても年齢を理由に不採用となるケースも多いのが現状だ。フリマアプリを活用して不用品やハンドメイドを販売し、生活費の足しにするのも一つの手だが、スマホの操作が不慣れな高齢者にとってはそれでもハードルが高いだろう。
これまで配送手続きをしてくれていた司がいなくなり、鈴(加賀まりこ)もソーイングマーケットを辞めた。行き場を失い、机に積み上げられたままになっている新作のスカートが何だか物悲しい。パート勤めで将来に不安があるさとこも他人事とは思えなかった。
5月24日に放送された『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)の最終回直前特番『しあわせは食べて寝て待て〜ありがとうSP』で、…
そんな中、青葉(田畑智子)に“ゆる薬膳”をおすすめしていたさとこは、ふと司から「トウモロコシが高ければ、ヒゲを使えばいいじゃない?」と言われたことを思い出す。働ける場所が見つからないなら、働ける場所を作ればいい。さとこは弓(中山ひなの)に部屋を貸した経験から、使われていない団地の集会所をレンタルスペースとして活用することを思いつくのだった。
司がいない寂しさを紛らわすためでもあるのだろう。さとこは躍起になるが、問題はお金。集会所を改装し、レストランも開けるように設備を整えるための資金を団地の住民から募る必要がある。岩見(渡辺哲)に理事会で提案してもらうが、合意は得られなかった。こういう万策尽きたと思った時、いつも良いアイデアをくれるのが唐だ。レンタルスペースが街全体の活性化に繋がれば、地域の補助金が使える可能性を唐に示してもらったさとこはコミュニティデザインに興味を持つマシコの腕も借り、再び企画を練り始めた。
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