現在、NHKドラマ10枠にて放送中の『しあわせは食べて寝て待て』。4月1日に放送された第1話が、これまでNHKプラスで配信された朝ドラ、大河ドラマ以外のドラマの中で、同時または見逃しで最多視聴数を記録したと話題にもなっている(※1)。

 本作は、水凪トリの同名漫画を原作としたヒューマンドラマ。桜井ユキ演じる主人公の麦巻さとこは、「一生付き合って行かなければならない」病気を患ったことで生活が一変する。デザイン事務所で週4日パートをしながら、築45年の団地で質素に暮らしている。隣に住む大家・美山鈴(加賀まりこ)と同居人・司(宮沢氷魚)を通じて、さとこは食事で体調を整える「薬膳」と出会い、少しずつ人生が変化していくというストーリーである。

桜井ユキがなぜ画期的な主人公なのか 『しあわせは食べて寝て待て』の真摯な病気の描き方

スタート以来、良作を生み出し続けているNHK夜22時からのドラマ放送枠、「ドラマ10」。何度かの改編を経て2010年より掲げてい…

 病気が発覚して以降、体調面だけでなく経済的な不安定さも抱えるさとこは、いつもどこか不安げな表情。体調が悪いときには、家に閉じこもり、ネガティブ思考になりがちだ。病気のせいもあるが、さとこは自己主張をあまりしない、大人しいタイプ。筆者は原作を読んだこともあるのだが、さとこを桜井が演じると知って少し驚いた。なぜなら、桜井にはどちらかというと“強気”なキャラクターを演じてきた印象を持っていたからだ。

 例えば、連続ドラマ初主演作品『だから私は推しました』(2019年/NHK総合)では、あるきっかけで、歌もダンスも下手な地下アイドル・栗本ハナ(白石聖)と出会い、オタク化するOL・遠藤愛を演じた。人生初の「推し活」に精を出す愛の姿は、最初こそ微笑ましいのだが、ハナにどんどんお金を費やすようになり、ついには推し活資金を貯めるために、いかがわしいバイトまで始めてしまう。物語中盤からはハナの熱狂的なファン・瓜田勝(笠原秀幸)も巻き込み、話は思わぬ方向へと進んでいく。推しのためならなんでもやるという“強気”なキャラクターがハマり役となり、第46回放送文化基金賞の演技賞を受賞している(※2)。

 さらに朝ドラ『虎に翼』(2024年度前期/NHK総合)で演じたのは、主人公・寅子(伊藤沙莉)の学友であり、華族生まれのお嬢様・桜川涼子。母・寿子(筒井真理子)や桜川家のために、高等試験の断念を宣言するシーンは、いつも穏やかな涼子の秘めたる“強さ”が垣間見れた瞬間でもあった。また『ライオンの隠れ家』(2024年/TBS系)で演じた工藤楓は、“気の強さ”が全面に出たキャラクターだったように思う。元々は大手新聞社の記者だった楓だが、強すぎる正義感と手段を選ばない“ストロングスタイル”な働き方のせいで退職に追い込まれ、週刊誌の記者になった。ネタのためなんでもやると思いきや、物語の終盤、意図しないタイミングで記事を勝手に公開させた後輩の記者・天音(尾崎匠海)の胸ぐらに掴みかかるシーンには、信念を持ってやってきたという楓の本当の“強さ”を感じさせた。

土居志央梨、伊藤沙莉、平岩紙ら『虎に翼』“魔女5”の現在地 朝ドラ放送後も続く躍進

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