『豊臣兄弟!』第12回より。小一郎に紹介された安藤守就の娘・慶(吉岡里帆)(C)NHK
豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。
3月29日放送の第12回「小谷城の再会」では、結構な苦労人であることが明かされた明智光秀の背景を紹介。空白地帯の多い秀長の妻についても、おもしろいキャラ付けがされそうな予感だ。
■ 女遊びがバレて夫婦喧嘩に…第12回あらすじ
藤吉郎(豊臣秀吉/池松壮亮)は、明智光秀(要潤)や丹羽長秀(池田鉄洋)とともに京都奉行になることを命じられる。様々な訴訟や公家との付き合い、さらにいろんな場所に出陣を命じられるなど、兄弟は多忙な日々を送っていた。
信長の小谷城来訪後、2人は久々に家族のいる岐阜に戻り、小一郎は直(白石聖)の墓参りに。そのとき寺の祠から怪しい男が出てきて、その後から出てきた美しい女性と、小一郎は目を合わせてしまった。
『豊臣兄弟!』第12回より。寧々(浜辺美波)に謝罪する藤吉郎(池松壮亮)(C)NHK
藤吉郎の妻・寧々(浜辺美波)は、藤吉郎が京で派手に女遊びをしていることを知り、無理心中を考えるほど悩む。寧々は子どもができないことを理由に、本当に好きな女性ができれば致し方ないと言うが、藤吉郎は「そなたがおればええのじゃ」と寧々を抱きしめた。
一方、小一郎は、信長から安藤守就(田中哲司)の娘・慶(ちか/吉岡里帆)をめとるように命じられる。それは小一郎が、寺で目撃したあの女性だった。
■ 要潤版・明智光秀「本能寺の変」の動機は…
日本史最大のクーデターの一つ「本能寺の変」の首謀者として知られる明智光秀。筆者が子どもの頃は、かなり悪名高い存在となっていたけど、彼が治めた丹波では名君として領民に慕われたという側面も語られるようになってきている。
『豊臣兄弟!』第12回より。藤吉郎に過去を語る明智光秀(要潤)(C)NHK
そのため最近では、作品によって結構キャラクターが分かれる存在となった。前回大河ドラマに登場したのは『どうする家康』(2023年)だったけど、酒向芳が演じた小物感あふれる光秀像は、最近ではなかなか珍しいものだったと思う。
そして、要潤版の光秀だが、今回でちょっとキャラクターが見えてきた。まず公家たちが感心するほどの知性・教養にあふれて、秀吉をさり気なくアシストするほど有能。
『豊臣兄弟!』第12回より。蹴鞠で藤吉郎(写真右、池松壮亮)を助ける明智光秀(写真左、要潤)(C)NHK
しかし、それは単なる親切というより「自分と同じ幕府側の人間が、公家に侮られるわけにはいかないから」という、やや利己的にも思える理由だった。この辺りが信長にとっては、姑息に見えてしまうんだろうなあ・・・というのが、今から想像できる。
さらに熱烈な、足利義昭強火担でもあった。光秀の半生は、斎藤道三が討たれたあと、美濃から脱出して以降の消息がはっきりとわかっていない。義昭の兄・足利義輝に仕えていたともされているし、医者として生計を立てていたなんて説もあり、未だに光秀のミステリアスな部分となっている。
明智光秀を主人公にした大河ドラマ『麒麟がくる』(2020年)は、その辺りを上手くミックスしていたので、「光秀の人生はこうだったかもしれない」という、一つの強いフィクションを作るのに成功したと思う。
『豊臣兄弟!』第12回より。壁の向こうに隠し通路を見つける15代将軍・足利義昭(写真左、尾上右近)と明智光秀(写真右、要潤)(C)NHK
今もなおその動機がわからない「本能寺の変」だけど、この「義昭に人生を救われた」と、相当なレベルの忠義心を抱えている光秀なら、義昭に有利な情報を得るために信長の家臣になる→義昭に命じられて本能寺の変を起こす・・・ぐらいのことはやりかねなさそう。
従来から言われている「義昭の無能ぶりに失望した」とはならなさそうなので、今後のこの主従の動きに注目しておきたい。
■ 「その女、本当に大丈夫?」吉岡里帆が初登場
そして、今回もう一人、ミステリアスな人物が登場した。秀長の妻となる女性・慶だ。元斎藤家家臣の安藤の娘というのはこのドラマのオリジナルで、信長の別の家臣の娘というのが有力な候補となっている。
『豊臣兄弟!』第12回より。小一郎に紹介された安藤守就(田中哲司)の娘・慶(吉岡里帆)(C)NHK
彼女の名前が記録に出てくるのは、秀長が大和国を治めるようになってから。兄弟の母・なか(坂井真紀)としばしば参拝に出かけたり、あさひ(倉沢杏菜)の平癒祈願などの記録が残っているので、豊臣ファミリーとはかなり仲が良かったようだ。
ただ、今回の秀長正室は、あえてかつての敵方だった斎藤家の重臣の娘という立場にした。しかも怪しい男と寺で密会をしているとか「その女、本当に大丈夫?」と、心の中の黄色信号が点滅する感じだ。
さらに次週以降の予告を見る限りでは、織田家に良い印象を持っていないようなので、なんとも前途は波乱気味・・・脚本家・八津弘幸はなぜ「敵の女」をヒロインにしたのか、その狙いは単純なものではなさそうだ。
秀長と慶は、結果的には「死が2人を分かつまで」な関係となるのは確定しているので、これから彼女のキャラクター付けの理由が、いろいろと浮上してくるだろう。
『豊臣兄弟!』第1回より。主人公・小一郎と話す、幼なじみ・直(白石聖)(C)NHK
そして、直といい、どうやらツン系美女が好みらしい秀長は、上手く人たらしを発動するのか?それとも思いがけない形で、グッと歩み寄ることになるのか? 吉岡いわく「すぐに距離が縮まるわけではないが、じょじょに変化する」そうなので、秀長の第2の春の行方に注目したい。
■ 嫁まで探す、面倒見がいい上司・織田信長
しかし信長、直属の家臣ではない・・・立場的にはただの家臣の弟でしかない秀長に、いいところのお嬢さんを探し出して嫁に選んでくるとは、なんとも面倒見がいいことだ。
『豊臣兄弟!』第12回より。京で女遊びをする小一郎(写真左、仲野太賀)と藤吉郎(写真右、池松壮亮)(C)NHK
それだけ秀長のことを買っているとも言えるのだろうけど、実際の信長も割と面倒見の良い人だったらしく、結局秀吉の女遊びが止まらなかったことに対して、寧々に「あの禿ねずみにそなたはもったいない」的な励ましの手紙を送ったりしているのは有名だ。
今回の、言いたいことを全部言うタイプの寧々様だったら、信長にも遠慮なく秀吉のグチを言って、信長も信長で体を斜めにしながら親身に話を聞いてくれる気がするので、ちょっと期待しておきたい。
『豊臣兄弟!』第12回より。訪ねてきた前田利家の妻・まつ(写真左、菅井友香)と話す藤吉郎の姉・とも(写真中央、宮澤エマ)と妻・寧々(写真右、浜辺美波)(C)NHK
ただその一方で、信長が今回二条御所を建てるに当たって、その前に義昭が滞在していた本圀寺の建物の一部や絵画などを持って行って、僧侶たちに訴えられるという史実も、しっかり反映されているわけで・・・小栗旬の信長、本当に一筋縄ではいかないキャラだ。
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大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。4月5日放送の第13回「疑惑の花嫁」では、秀長と結婚した慶をめぐって黒い噂が流れるところと、織田と浅井の関係が大きく変化するところが描かれる。
文/吉永美和子
