AIによってつくられた架空のバンドが、本物のバンドへと変貌を遂げてステージに降り立つ──そんな物語を展開するメタルバンドが音楽シーンで話題となっている。
メタルとアイドル文化を融合させたサブジャンル「KAWAII METAL」の急先鋒として一部のメタルファンから支持を集めていたバンド・[[NEON ONI]]。当初は“実在するバンド”を謳っていたが、音楽生成AI・Suno AIでつくられた楽曲をリリースする、架空のバンドであることが発覚。
しかし、活動は終了せずに、人間のバンドメンバーを集めてライブを決行した。さらに世界最大級のメタルフェス「Wacken Open Air」への出場権をかけた日本予選ファイナリストにまで上り詰め、着々と活動の幅を広げている。
「KAWAII METAL」シーンの気鋭バンドとして注目を集めていたNEON ONI
NEON ONIは、2025年9月頃から音楽配信プラットフォームへの投稿を開始。当初は、「東京を拠点に活動する“実在の”7人組メタルバンド」として活動を行っているとプロフィールに記述されていた。
さらにはアイドルグループ・さくら学院から派生したユニット・BABYMETALが定義づけた「KAWAII METAL」の影響下にあるバンドとして、一部ファンの間で話題に。現在のSpotifyでの月間リスナー数は約8万人。
さらに、オフィシャルサイトで販売されているグッズも好調。海外のメタル専門サイト「Dead Rhetoric」にレビューが掲載されるほどだったのだ(現在、該当レビューは削除済み)。
しかし、MVや楽曲の投稿が増えるにつれ、コミュニティ内では「本当はAIなのではないか?」という疑念が噴出。
NEON ONI – xXSHINEXx (OFFICIAL VIDEO)
SNSやメタルコミュニティによる分析の結果、楽曲は音楽生成AI・Suno AIを使用して生成されたものであること、ビジュアルや映像も生成AIで作成されたものであること、制作者の拠点も東京ではなくヨーロッパであることなどが特定されていった。
AI生成であることが発覚したのち、“本物のバンド”へと変貌
しかし、特筆すべきところはAIだと明らかになってからの展開だ。
制作者はこの事実が発覚した後すぐ、実在するバンドから7人のミュージシャンを招集して、今までAIに生成させていた曲をライブで演奏させる計画を企てた。そして実際にメンバーが集まり、2025年12月18日に新宿のライブハウス・ANTIKNOCKにで初ライブが開催されたのだ。
初ライブの後もコンスタントにライブイベントに出演。公式Xでは、首都圏を中心に今後もライブ活動を行うと予定があると告知されている。
1月12日に開催されたライブの映像
Spotifyのプロフィールもそれに合わせて更新。かつてはAIによって生成された架空の存在だったが、コミュニティの声によって現実のバンドへと変貌したといった旨の説明が明記されている。
バンドのグッズ売上は、日本のバンドを支援/紹介する慈善活動に寄付しているという旨も説明されている。
ドイツのメタルフェス「Wacken Metal」出演に向けての挑戦
さらにNEON ONIは、ドイツで開催される世界最大級のメタルフェス「Wacken Open Air」への出場権をかけたコンテスト「Wacken Metal Battle Japan 2026」のファイナリストに選出された。
国内決勝大会は4月12日(日)に東京・渋谷CYCLONEにて開催され、各バンド20分のライブパフォーマンスによる最終審査が行われる。
同コンテストの応募期間は2025年12月22日から2026年1月31日まで。書類・音源による1次審査は2026年2月に行われた。人間によるバンド活動を開始した上でコンテストに参加している点は留意したい。
つまり、NEON ONIは「実在するバンド」として、正当にコンペティションの予選を勝ち抜いたことになる。
生成AIによるフェイクが出発点でありながらも、結果的に多くのファンを惹きつけ、ライブハウスでフィジカルとフィジカルのぶつかり合いを生み出すNEON ONI。
生成AIの活用方法と課題はその多くが途上にあるなかで生まれた稀有な存在だといえる。

