日向坂46の小坂菜緒と藤嶌果歩が、アニメの声優に初挑戦。2人が出演する劇場アニメ「劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編」が2月27日に全国公開される。
「転生したらスライムだった件」は、スライムに転生した元サラリーマンのリムル=テンペストが、仲間たちとともに理想の国作りを目指して奮闘する物語。劇場版第2弾となる「蒼海の涙編」は、水竜を守り神と崇める海底の国・カイエン国の平和を揺るがそうとする者が現れたことで、巫女・ユラが救いを求めて地上へと向かうところからストーリーが展開される。この作品で、小坂と藤嶌はユラに仕える侍女のミオとヨリをそれぞれ演じている。
ナタリーでは同作の公開を記念して音楽、映画、コミックの3ジャンルで特集を展開する。音楽ナタリーでは小坂、藤嶌と「転スラ」シリーズの主人公・リムルを演じる声優の岡咲美保の3人にインタビュー。以前から作品の大ファンだったという小坂と、本作で初めて「転スラ」に触れたという藤嶌が、それぞれの視点から作品の魅力を語る。また、初めてのアフレコに向けて準備したことや苦労した点についても言及。それらを受け、さまざまなアニメ作品で活躍してきた岡咲は何を思ったのか。愛とリスペクトに満ちたトークを通して「転スラ」劇場版の魅力を掘り下げる。
そのほかの「劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編」特集はこちら
取材・文 / 西廣智一撮影 / YURIE PEPEヘアメイク / TOHYAMA YUKI、SATO YURIスタイリスト / YONETA YUMI
「劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編」予告編公開中
バトルシーン、人情ドラマ…「転スラ」の魅力
──小坂さんは以前から「転生したらスライムだった件」の大ファンだったそうですね。
小坂菜緒 はい。私は転生モノのアニメを観ることが多いんですけど、この作品を知ったのはリムル様のことを見つけたことがきっかけで。最初はビジュアルに惹かれて、それから作品を観ていくうちに、リムル様が物語の中でいろんな仲間たちと出会い、彼らのために動こうとする姿勢やみんなを思いやる姿にどんどん夢中になっていきました。
──藤嶌さんは今回のオファーをきっかけに「転スラ」を観て、一気にファンになったとのことですが。
藤嶌果歩 私は普段、アニメよりも実写のドラマや映画を観ることのほうが多くて、あまりアニメには深く触れてこなかったんですけど、今回「転スラ」をきっかけにアニメの世界に飛び込んでみて、本当に個性豊かなキャラクターがたくさんいることに気付きました。「転スラ」にはカッコいいバトルシーンもありますけど、それ以上にキャラクター同士の関係性とか仲間に対する意識の強さが魅力的でしたし、最終的には推しキャラまで見つかって、どんどんハマっていきました。
岡咲美保 推しキャラはどなたですか?
藤嶌 ミリムちゃん(ミリム・ナーヴァ)がかわいくて大好きです(笑)。
岡咲 いやあ、自分のことのようにうれしいですね(笑)。まず、小坂さんにリムルのことを直接目の前で褒められたら、うれしいやら恥ずかしいやらで熱くなってきちゃいました(笑)。私にとってリムルは長年ずっと一緒に歩んでいるすごく距離の近いキャラクターなので、リムルを通して「転スラ」を楽しんでいただけたり、好きになっていただけたりすることはとても幸せなことです。藤嶌さんがテレビシリーズや劇場版までチェックして、推しキャラまで見つけてくださったこともすごくありがたいです。お二人がおっしゃる通り、「転スラ」は本当にバランスの優れたいい作品で。バトルのカッコよさもありつつ、そういう派手なところだけじゃなくて、いろんな場面に人情味がちりばめられているところに気付いていただけたのも、すごくうれしいなと思いました。
ドッキリなんじゃないかと思った
──小坂さんと藤嶌さんは、今回声優としてのオファーをいただいて、率直にどう思いましたか?
小坂 声優さんのお仕事自体初めてだったんですけど、その初めてが大好きな作品ということが嘘みたいで。最初に連絡をいただいたときはドッキリなんじゃないかと本気で思ったほどでした(笑)。でも、あとから台本が自分の手元に届いたときに、「あ、現実なんだ!」とやっと実感できて。それくらい、自分にとっては夢みたいなお話でした。
藤嶌 私は個人での演技のお仕事も初めてのことで、しかもそれが声優さんの仕事というのもびっくりしましたし、初めてなので不安も大きくて。でも、先輩の菜緒さんと一緒に出演させていただけることがすごい安心要素になって、新しい挑戦にポジティブな気持ちで向き合うことができました。
──お二人は声優としての岡咲さんにどういう印象がありましたか?
小坂 岡咲さんはもともと大好きな声優さんで、お声を聞いているだけで元気が出てくる、太陽のような存在なんです。
岡咲 え~、うれしい!
小坂 そもそも最初はリムル様の声を岡咲さんがやられていることを知らない状態でアニメを観て「この声、もしかして?」と調べたら岡咲さんだったので、これは運命の出会いだと余計大好きになりました。
岡咲 私のこと、知っていてくださったんですね。
小坂 もちろんです!
岡咲 何がきっかけだったんですか?
小坂 私はもともとアニメが大好きなのでいろんな作品を観て知っていましたし、あとお歌も好きでよく聴かせていただいていました。
岡咲 びっくりしました(笑)。リムルを演じ始めたときはまだ声優として2年目くらいだったので、そんな頃から気付いてくれている方がアイドルにいたなんて……すごく光栄です。
藤嶌 私は「転スラ」を観て初めて岡咲さんの声に触れたんですが、透明感があって、ちょっと中性的なお声がリムル様のキャラクターともすごくマッチしていますよね。しかも、「実際にこういう人、いそうだよね?」っていう自然体の話し方だからこそ、アニメ初心者の私でもすごく入り込みやすかったです。
岡咲 うれしい。初めて触れた方にそう言っていただけるなんて、声優冥利に尽きます。こんなに素敵でかわいらしい方々が「転スラ」チームに来てくださって、しかも「転スラ」を知ってくださって、愛してくださっているというお話を聞けたのも、めちゃくちゃうれしいです。お二人が持っているパワーやお芝居の要素には私たちとはまた違った魅力が絶対にあるので、そこをきっかけに「転スラ」に出会っていただける方もいらっしゃるのかなと思うと、「ありがとうございます!」っていう気持ちでいっぱいです。
初めてのアフレコで得た気付きや学び
──小坂さん、藤嶌さんはそれぞれが演じたミオ、ヨリという役に対して、最初はどんな印象を持ちましたか?
小坂 ミオはユラ様の側近というキャラクターなので、ユラ様に仕える者としての芯がありながらも、どこか優しさや温かさも伝わってくる子だなと思いました。
藤嶌 ヨリはミオと比べると活発で、どこか元気な少年らしさがある印象を持ちました。私は普段アイドル活動をしている中で、キュルキュルしたしゃべり方になることが多いんですけど(笑)、今回はその部分を全部封印して、元気な女の子になれるようにと意識しました。
──ミオとヨリの登場シーンを最初に観たとき、正直お二人が演じていることに気付かないくらい、普段のお二人の声とは違うふうに聞こえたんですよ。
藤嶌 えーっ、本当ですか?
小坂 うれしいです。
──実際、アフレコに挑戦してみていかがでしたか?
小坂 初めてだったこともあって、まずは自分の声を聞くことに慣れようと思って、ボイスレコーダーに自分の声を録っては聞いてという作業を繰り返しながら練習しました。アフレコ現場では「もう少し声のトーンを優しく」とか「ここはもっと力強く」とか具体的なディレクションをいただきながら進めていきました。もちろん緊張もしましたけど、最終的には自分が持っているものをしっかり出しきれたんじゃないかと思います。
藤嶌 ヨリはユラ様にお仕えする立場なので、遠すぎず近すぎず、適正な距離を保ったセリフの言い方をすごく意識しました。その中でどのように感情を出せばいいのかという部分に苦戦して、「声ひとつで何かを表現するってこんなに難しいことなんだ」って実感しました。家の鏡の前で「私、どんな顔してるかな?」と確認しながらセリフを言う練習をして、アフレコに挑みました。私も本番は緊張しましたけど、ディレクションのときに「大きな声を出すときは、壁1枚を突き破るぐらいの声で」と教えていただいたことがすごく印象に残っていて。目の前にその景色を想像しながら演じることってすごく大切なことなんだなと学びました。
岡咲 「壁1枚を突き破るぐらいの声」って、すごくいいディレクションですね。私も心がけていきたいなと、聞いていて思いました(笑)。それはたぶん、距離感の話だと思うんです。我々の業界だと、よく「“かけ”を強く」みたいな言い方をするんですけど、例えば「なりません!」みたいな言い方のときって、耳打ちするような距離感とは全然違うじゃないですか。目の前に相手がいたら自然にできることを、アフレコでは映像を通して距離感を自分で作り出さなきゃいけないので、そのたとえとして「壁1枚」だったのかな。ディレクションっていろんな角度から役者さんに伝えなきゃいけない仕事なので、私自身もすごく興味深かったです。
めちゃくちゃ適性を感じました
──小坂さんがおっしゃった、録音した音声を聞いて自分の声に慣れるというお話は、岡咲さんも理解できたりしますか?
岡咲 すっごいわかります。私は今でもボイスレコーダーに録音することをずっとやり続けていて、音声ファイルの数が今の西暦と同じぐらいになってます(笑)。それぐらい、毎日のルーティンにしていますし、リムルに関してもオーディションから第1話前くらいまでは特にやってました。でも、やりすぎると何が正しいのかわからなくなることもあって。
小坂 わかります。私もそうでした。
岡咲 先ほど小坂さんもおっしゃっていましたけど、事前に準備していく部分と現場で臨機応変に変えられる余白、そこのバランスの取り方ってすごく難しいんですよ。なので、小坂さんはそこに対応できていたという点で、めちゃくちゃ適性を感じました。
小坂 尊敬する方からそんなお言葉をいただけるとは思ってなかったので、すごくうれしいです!
藤嶌 何もかもが学びになります。
岡咲 私はそこにたどり着くまで、すごく時間がかかったんですよ。なので、最初から対応できているのは立派だと思いますよ。
──声優という職業に、適性みたいなものはあるんでしょうか。
岡咲 究極の話、お芝居が好きなら向いているんじゃないかな。私の場合で言うと、初期の頃はそれこそ準備の段階でガチガチに固めすぎて、現場で「ここはもうちょっと、こうしてみてもいいんじゃない?」と指摘されても自分の音や感覚で覚えてしまっているので、なかなかそこから離れられないことも多かったんです。言われた通りに変えたつもりでいるけど、実は変わってないみたいなことって、新人声優あるあるなんですよ。私もそれで何度もオーディションに落ちたことがあって、余白を残すところにたどり着くまでだいぶ時間がかかってしまった。結果的には、リムル役を通じて固めすぎないという姿勢が少しずつ身に付いたような気がします。
──では、小坂さんや藤嶌さんの作中での声や演技はいかがでしたか?
岡咲 お二人の声質にすごく合っているんだけど、ちゃんとキャラクターにも寄せていて。先ほど、普段のお二人のしゃべる声と違って気付かなかったとおっしゃっていましたけど、本人の地と役に入るところのバランスがちょうどよかったのかなと思いました。あと、ミオとヨリの配役が逆じゃなくて正解だったなというのも……何目線かわからないですけど(笑)、今日実際にお声を生で聞いて感じました。役どころとしても、私たちの日常生活では使わないような言葉選びをしていますし、ユラを立てつつ感情をあまり出しすぎないという難しい立ち回りの中で、キャラクター性やビジュアル面から感じ取れる声質を探られていたことも、声優というお仕事や「転スラ」という作品へのリスペクトがたっぷり伝わってきました。
──お二人は実際に演じてみて、ミオとヨリに対して自分に似ているところや共通点は見つけられましたか?
小坂 私はけっこう近いなと思うところが多かったです。日向坂46の中でも、私はわりと落ち着いているタイプだと思いますし、普段からそこまでわちゃわちゃ話すほうでもないので、雰囲気をつかみやすかったです。
藤嶌 ヨリはミオと比べて、より妹っぽい印象があって。私自身4人兄妹の末っ子なので、そこは自分に近いと思いました。でも、ヨリは思ったことをミオより先に発言することも多くて。私はまず頭の中でいろいろ考えてから発言するタイプなので、そこは見習いたいなと思いました(笑)。
次のページ »
「転スラ」初心者でも気楽に楽しめる
