レジ脇の特設の平台に4列に平積みして展示する(リブロ汐留シオサイト店)

レジ脇の特設の平台に4列に平積みして展示する(リブロ汐留シオサイト店)

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。

今回は、定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。ビジネス書の売れゆきは年初ということもあって、周辺の企業からまとまった注文が相次ぎ、好調だという。そんな中、書店員が注目するのは、パブリックリレーションズ(PR)の持つ力で企業価値を高める経営を説いた広報系シンクタンクによる経営書だった。

広報にとどまらないPRの機能

その本は企業広報戦略研究所編著『PR式経営』(日経BP)。編著者の企業広報戦略研究所は電通グループのPR会社、電通PRコンサルティング内に設けられた研究組織だ。研究者や実務家と連携して企業価値向上に向けたPRや経営の戦略・体制について調査・研究を進めている。

日ごろの研究成果を基に、PR機能を経営の核に据え、企業価値向上を目指す方法を多面的に検討したのが本書だ。PRというと、個別の商品の宣伝のように狭い意味で捉えられがちだが、パブリックリレーションズの本来の意味であるパブリック(公衆)とのリレーションズ(関係性)に立ち返り、そこを経営の観点から深掘りしていく内容だ。

冒頭で「本書は、企業にとって大切な人々との関係をより良くしていくための本です」と宣言する。企業を取り巻く人々は多様だ。株主や機関投資家、個人投資家、さらには従業員やその家族、取引先、顧客や地域社会の人々と、数え上げればきりがない。その中から鍵となる「Keyステークホルダー」を見極め、その人たちの不安や期待にしっかり寄り添っていくことがPR式経営の要諦だと本書は説く。

「ステークホルダーの期待と不安を、捉え・伝え・応えることで、将来価値を効率的に高める」。これが本書によるPR式経営の定義だ。PRの機能を、一般的なイメージの「伝える=広報(インフォメーション)」だけではなく、「捉える=広聴(インテリジェンス)」「応える=広益(インパクト)」を加えた3つの側面に分解して定義づけているのがポイントだ。

PRの機能は伝えるより先に、広く聴いてそこから有用な洞察を引き出すことから始まる。そして伝えた後はステークホルダーの意識と行動に変容をもたらすようなインパクトを与える必要がある。捉える・伝える・応えるの3機能そろってこそのPRなのだ。

調査分析や実践企業のインタビューも収録

上場企業の広報担当責任者から回答を集めた大規模な企業広報力調査の詳細な分析やPR式経営を実践している企業へのインタビューも収録し、PR式経営がどの程度日本企業に浸透しているか、企業はどのように具体的な取り組みを実践しているかも伝えている。

各部門の課題を発掘し、コミュニケーション機能を用いて解決をサポートしている日清食品ホールディングスの最高コミュニケーション責任者(CCO)へのインタビューや、クリエーションにフォーカスし、企業価値の向上を目指しているソニー広報担当執行役員へのインタビューは、PR式経営の具体的な実例として多くの示唆を得られるだろう。

「電通グループの本社が近いこともあって、特設の平台に置いたら来店客の反応が上がっている」と、店舗リーダーの河又美予さんは話す。もうけるだけでは企業価値を高められなくなっている時勢を多くのビジネスパーソンは感じ取っているようだ。

上位続く『すごい習慣大百科』

それではランキングを見ていこう。今回は1月の月間ベスト5を紹介する。

(1)定年後の日本人は世界一の楽園を生きる佐藤優著(Hanada新書)(2)稼ぐ地方近藤繁著(インプレス)(3)科学的に証明された すごい習慣大百科堀田秀吾著(SBクリエイティブ)(4)50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教えたーちゃん著(ダイヤモンド社)(5)【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学両@リベ大学長著(朝日新聞出版)

(リブロ汐留シオサイト店、2026年1月4~31日)

1位は元外交官で、著述家の佐藤優氏がお金から趣味、仕事、交友関係や家族関係まで「定年後に特化した知の技法」を伝授する本だ。好調な売れゆきが4カ月あまり続いている。1月の本欄の記事〈地方を再び「主役」に つながりを仕掛ける起業家が目指す新しい価値〉で紹介した、テクノロジーに着目して地方ビジネスの可能性を論じた本が2位に入った。

3位は本欄2025年7月の記事〈「すごい習慣」で仕事や人生を変える 科学的根拠に基づく小さなメソッドの大百科〉で紹介したスキル本。半年以上上位で売れ続けている。マネー系の息の長い売れ筋が4位と5位で続いた。今回紹介した『PR式経営』は13位だった。

(水柿武志)

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