東京国立博物館(東京都台東区)で、開創700年記念 特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑ほんちょうむそうのぜんえん」が10月14日から開催されます。

天皇・武将・茶人に愛された禅の巨刹・大徳寺。京都紫野むらさきのの地に七堂伽藍がらんを構え、開山・宗峰妙超しゅうほうみょうちょう(大燈国師だいとうこくし)の峻烈な禅風を今に伝える、洛北随一の巨刹です。嘉暦元年(1326)、後醍醐天皇、花園上皇の帰依を受けた大燈国師が法堂はっとうを建立し、「龍宝山大徳寺」と号したのが開創とされています。なかでも、後醍醐天皇は大徳寺を「本朝無双之禅苑」と尊崇し、日本に二つとない禅苑としての光輝を放つことになります。

大燈禅の法灯はその後も長く受け継がれ、一休宗純いっきゅうそうじゅんや沢庵宗彭たくあんそうほう、江月宗玩こうげつそうがんら優れた傑僧を輩出するとともに、織田信長や豊臣秀吉ら戦国武将たちからも篤い信仰を集め、壮麗な障壁画と明媚な庭園を擁する数多くの塔頭たっちゅうが建立されました。また千利休せんのりきゅうや津田宗及つだそうぎゅうをはじめとする茶人や数寄者との所縁が深いことも知られています。

大徳寺開創700年の節目の年にあたる令和8年(2026)。この記念の年に、東京国立博物館において塔頭や大徳寺派寺院を含む大徳寺山内の寺宝を一堂に会し、その歴史と文化が紹介されます。

開創700年記念 特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」

会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)

会期:2026年10月14日(水)~12月6日(日)
※会期中、展示替えあり

開館時間、休館日、観覧料については、展覧会公式サイト等で順次発表

アクセス:
JR上野駅公園口、鶯谷駅南口から徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅から徒歩15分
東京メトロ千代田線根津駅から徒歩15分
京成電鉄京成上野駅から徒歩15分。

詳細は、展覧会公式サイトまで。

展覧会の主な見どころ
峻烈な禅風を示す肖像画の傑作
国宝「宗峰妙超像」自賛 南北朝時代・建武元年(1334) 大徳寺蔵 ※展示期間未定

大徳寺を開いた宗峰妙超(大燈国師)の肖像画。宗峰は入宋した南浦紹明なんぽじょうみょうの法を嗣ぎ、後醍醐天皇や花園上皇からも篤い帰依を受けて禅宗の興隆に尽力しました。本作は数ある禅僧肖像画のなかでも白眉と称されるもので、その峻烈な禅風を示すかのように、眉をひそめて眼光鋭く睨む表情が印象的です。

三門楼上の本尊が初公開!
「釈迦如来坐像および迦葉尊者・阿難尊者立像」 釈迦如来坐像:印慶作 室町時代・応永11年(1404) 迦葉尊者・阿難尊者立像:鎌倉時代・13~14世紀 大徳寺蔵(三門安置)※展示期間未定

大徳寺三門の上層は、天正17年(1589)に千利休の寄進で造られ、内部の天井の龍、柱の仁王像等の絵は長谷川等伯はせがわとうはくが描きました。奥の段に釈迦しゃか・迦葉かしょう・阿難像あなんぞうと十六羅漢像が安置されます。この三尊のうち、釈迦如来坐像の像内に応永11年(1404)印慶作の銘があります。印慶は、作風、構造から14世紀以降禅宗寺院を中心に活躍した院派に属する仏師とみられます。銘には「龍翔寺仏殿本尊」とも記します。この寺は13世紀前半の創建で、京都十刹に列せられました。天文10年(1541)に大徳寺山内に移転し、現在は雲水の修行道場になっています。この三尊像がいつ三門に移されたか、両脇侍がどこから移されたかは不明です。

一休の生き様を表す墨蹟
重要文化財「七仏通戒偈」 一休宗純筆 室町時代・15世紀 真珠庵蔵 ※展示期間未定

型破りな禅僧として知られる一休の代表的な墨蹟。その禅風を象徴するかのような奔放で気迫に満ちた書風です。「諸悪莫作、衆善奉行しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう」は仏教の基本を示す言葉。「悪いことをせず、善いことをせよ」という単純な内容ですが、「三歳の子供でも知っているが、八十歳の老人でも実践は難しい」として、中国の故事を通して広く受容されました。

迫力あふれる水墨画の名品
重要文化財「龍虎図」 伝牧谿筆 中国南宋時代・咸淳5年(1269) 大徳寺蔵 ※展示期間未定

牧谿もっけいは日本で最も尊重された中国の画僧。鎌倉禅林における受容を皮切りに、室町期には足利将軍家御物に編入され、さらに茶の湯の世界や大名家でも大いに珍重されました。日本の画家たちに与えた影響もきわめて大きいです。本作は牧谿の伝承を伴う龍虎図のなかでも最優品とされるもので、堂々たる龍虎の姿態が巧みに描き表されています。

茶の湯の粋、孤高の名碗
国宝「大井戸茶碗 喜左衛門井戸」 韓国慶尚南道 朝鮮時代・16世紀 孤篷庵蔵 ※展示期間未定

「高麗茶碗」のなかでも、井戸は見どころに富み、名碗が多く伝わっています。現在の韓国慶尚南道けいしょうなんどう一帯で16世紀に焼かれた日用器の一種で、その名は井戸のように深いからとも「井戸某」が所持したからともいわれています。本作は力強く豪快な姿が印象的で、いかにも戦国期当時の武将や茶人の好みを映しているように思われます。

京都・紫野に脈々と受け継がれてきた大徳寺の法灯。開創700年という記念すべき節目に開催される本展は、普段は目にすることのできない貴重な寺宝が一堂に会する、まさに「本朝無双」の機会といえるでしょう。後醍醐天皇や一休宗純、さらには織田信長や豊臣秀吉、千利休といった歴史上の偉人たちが愛した美と禅の精神。それらが放つ圧倒的な存在感と歴史の重みを、上野の地でぜひ体感してみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)

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