※本稿は、永松茂久『読まない人に、本を売れ。』(ライツ社)の一部を抜粋・再編集したものです。
「本を読まない人」に売るしかない
出版業界には、書店の数がどんどん減っているという現状がある。これはつまり、本の売り場が日本中で減っているということだ。
ということは、すでに本を読む習慣のある既存顧客にだけ向けて商品開発を進めると、当然、パイの縮小にともなって、売り上げ部数はジリ貧になっていくということになる。よって必須なのは、何をおいても新規の読者の獲得だ。
しかもそれには、ほかの著者のファンをこっちに引っ張ってくるというようなセコいことではなく、ふだん本を読まない人たちまでが読む本をつくる、というチャレンジが必要になる。その人たちがつい手に取ってしまうような本でなければ、日本一の大ベストセラーを狙うなど到底できない。
「読まない人に、本を売れ」という天からのお題が、僕たちのもとに降ってきた。そう感じた。
僕の大好きな番組で、NHKの「プロジェクトX」という番組がある。多くの人が「不可能だ」と言ったことに、わずかな勝機を見出し、あきらめずに立ち向かい、困難を乗り越えながら奇跡を起こした人たちのドキュメンタリーだ。
「いい商品」と「売れるか」は別
「日本一」も「100万部」も、この出版不況の中で、ほとんどの人が「不可能だ」と思うくらい壮大な夢だ。口にするたびにバカにされた経験もある。世の中から見ると「何を夢みたいなこと言ってるの?」と確実に突っ込まれるくらい壮大だが、自分たちで思い込むのは勝手だ。前提条件は十分だし、なんだかワクワクする。
ということで僕たちは、このチームのコンセプトを「出版業界のプロジェクトX」ということにした。
出版も含めてだが、ビジネスというのは本当におもしろい。いい商品だったら絶対に売れるというわけではない。「一生懸命」や「心を込めて」が通じないこともある。それはある意味、ビジネスにおける残酷な真実とも言える。
ではどうすれば、勝機が見出せるのか? それは、「読者が心の底で求めているものに対して、チューニングを合わせられるかどうか」つまり、「市場がはっきりと見えているかどうか」だ。
本づくりに力を入れることは大前提だが、一番のキモは、読者のニーズにピントを合わせるということなのだ。そのピントさえカチッと合えば、勝機はある。

