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HOLIDAY! RECORDS・植野秀章さん×『Hyper Luv Pop 2026』
主催 / Live House Pangea・住田悠真さん
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【第1回】『Hyper Luv Pop 2026』直前対談企画
HOLIDAY! RECORDS・植野秀章さん×『Hyper Luv Pop 2026』
主催 / Live House Pangea・住田悠真さん
2026年2月28日(土)、大阪・心斎橋でサーキットイベント『Hyper Luv Pop 2026』が開催される。会場はANIMA(メイン/サブステージ)、Pangea、火影の3会場4ステージ。総勢30組のアーティストが集う。『Hyper Luv Pop』は、主催であるPangeaのブッカー・住田悠真さんの感度の高さが際立つ豪華なラインナップで知られている。2024年の初開催から注目を集め、今回の最終出演者解禁時にはイベント名がXのトレンドに浮上するなど、その熱は年々大きくなってきた。本連載では、そんな『Hyper Luv Pop』というイベントの輪郭を、出演者・関係者×住田さんの対談を通して、様々な視点から浮かび上がらせていく。今回は、セレクトCDショップ「HOLIDAY! RECORDS」店長の植野秀章さんをお迎えした対談を公開。植野さんから見た『Hyper Luv Pop』、本イベントにかける住田さんの想いはもちろん、二人の仕事での意識なども訊いた。
ライブハウスのブッカー&CD屋さんとして見えている、音楽の形
――住田さんはLive House Pangeaで、植野さんはHOLIDAY! RECORDSというセレクトショップで、音楽とそれぞれの関わり方をされてきていると思うのですが……。住田さんは、どのようなタイミングで植野さんのお名前が浮かびますか?
住田「HOLIDAYでまだ扱っていないかっこいいバンドを見つけたときとか、誰に聴いてほしいかな、観てほしいかなってときにパッと名前が浮かぶ。関係者の中でもいちばん最初に名前が浮かぶかも。Pangeaの役割っていうか、僕の役割として、まだ全然誰も知らないようなバンドが出るタイミングで、そのバンドを次に繋げるっていうか。世の中に広げるための動線はある程度作ってあげたいなとかも思ったりするんで……そういうときに植野さんに紹介したいなって。だから、(植野さんに)聴いてほしい音楽がそこにあるときに来てもらってる。逆に、植野さんから”出店していいですか?”って言われたりもするし」
植野「俺がLINEとかで住田くんに”この日のライブ見に行ってもいい?”って言うときはどう思ってるの?」
住田「めちゃくちゃ嬉しいです。俺も来てほしいなと思ってる日に植野さんから連絡が来るイメージですね」
――植野さんにも住田さんにもお伺いしたいのですが、音楽に関わるうえで「この考えはずっと変わってないな」っていう軸や行動、普段から意識してることはあったりしますか?
植野「(バンドを)評価をしていると思われてるかもなって感じることがあるんですけど、 良し悪しを判断していると思ってほしくない。レビューで批評してるつもりはないし、自分はこのバンドが好きっていう前提を大切にしながら取り上げてる。”評価する立場ではない”って(自身に)言い聞かせてるっていうか、リスペクト前提っていうか。実際に話してて、バンド側からするとちょっと物足りないなみたいな感じがあるのかもなって思うこともあるけど……」
住田「俺はどっちかというと逆ですね。素直に言うっていうのはずっと意識してて。ライブハウスの普段のブッキングで、バンドにちゃんとお金返せる日ってそんなにないんで……。バンドがちゃんとスタジオ入って、交通費払ってライブハウスまで来て、お金払って今日出てくれてるんだから、何かは持って帰ってもらわないと申し訳ないと思う。自分の一方的な意見になるかもしれないし、それが本人たちにとって合ってるかどうか分からんけど。それで俺が嫌われても別にいいし、”そんなん言われるんやったらもう次出んとこう”とか思われてもいいから、とりあえず思ったこと言うみたいな。自分がバンドをやったこともないからこそ、リスナー目線で言えることもあると思うし。何かしらバンドに持って帰ってもらおうっていうのは意識してますね。ずっと変わってない」
――お二人とも、常にアンテナ張って色々な音楽をリサーチされてると思うのですが、新しい音楽ってどういうふうに出会うことが多いですか?
住田「SNSか紹介か。植野さんからの紹介もそうですし……岡山のバンドは、揺れるは幽霊のコウリョウ、ヨークシンのベースのTaylor」
植野「バンドの子と、普段LINEとかでやりとりしながらそういう会話になるってこと?」
住田「いや、やりとりはしないんですよ。急に来るんですよ、LINEが。”このバンドがなんか大阪行きたがってんねんけど”みたいな。岡山は、コウリョウとTaylorがめっちゃ紹介してくれるんですよね」
植野「住田くんにこう言っておいたら何か良い影響があると思ってくれてるんだろうね」
住田「それなら嬉しいです」
植野「ね」
住田「けど、やっぱりSNSで流れてくるのがメインかな。あと、他の箱で最近よく名前見るなとか」
植野「僕もXでチェックはするし、もちろん気になったら聴いてみるっていうことをするんですけど……例えば住田くんは、”この人がポストしてたらチェックするな”みたいなのはあります?」
住田「雪国の京くん。(ポストが)よく目に入ってくる。でも、それで言ったらマジでHOLIDAYですけどね。HOLIDAYが俺の知らないバンド上げてるなと思ったら、まずXに貼ってる動画とかを見るようにはしてますね」

――逆に、植野さんはどうですか?
植野「直接バンドの子に聞くかも。”最近何聴いてんの?”って。”次に来そうなバンドいる?”というよりは、普段何を聴いてるんだろうっていう興味で聞くことが多い。雑談みたいな感じで。人との繋がりで音楽に出会っていくような感じですかね。あと、プレイリスト掲載希望の応募フォームを作ったんですよ。あれはけっこう頼り」
――Xでチェックしている人は、他には誰かいますか?
住田「ニイムラさん(TOKIO TOKYOブッキングスタッフ)」
植野「ねぎしのはんさん(sidenerds 、トップシークレットマン)とか……」
住田「oaiko(インディーズレーベル)のアカウントとか」
植野「そうですね。oaikoのプレイリストは、やっぱりメンツ見るよね」
住田「oaikoのプレイリストの並びは定期的に見ますね。(ラインナップが)けっこう意外なときあるし。”それ入ってくるんや!”みたいなのもあったりする。それがお客さんの感覚にも直結してるような気がするな。音楽っていうか、ジャンルは違うけど”こことここって、なんかお客さんの中で共有されてるよな”みたいなときありません?」
植野「例えば?」
住田「ジャンル全然違うけど、なんかこのバンドのお客さんとこのバンドのお客さんって趣味嗜好が近いよねみたいな」
植野「それで言うと、フェスとかイベントのラインナップもそういう視点があるかもね」
住田「あとは、Pangeaに出たいですっていう人たちが出てくるから、そういう出会い方もありますよね。俺、一回Xで募集したんですよ」
植野「おー、”Pangea出たいバンド連絡ください”みたいな」
住田「音源聴いていいなって思ったバンドに出てもらったんですけど……。話してて”別にPangeaじゃなくてもいいな”みたいなときがあって。そこでめっちゃ反省したんです。気持ちが乗ってるメールをくれる子らは、やっぱりPangeaに出ることに意味を見出してるし。逆に、”とりあえず出たことない箱出てみたかったから”みたいな人らもおったし」
植野「それは嫌なん?」
住田「嫌というか、それで次に繋がることがあんまりないっていうか。”Pangeaは出てた方がいいな”と思って連絡くれるバンドの方が力になれそうやなって思う」
『Hyper Luv Pop』の立ち位置
――植野さんから見て、『Hyper Luv Pop』はどのような役割を果たしているイベントだと思われますか?
植野「『COME TOGETHER MARATHON』(植野さん、Pangea店長の吉條壽記さんによるサーキットイベント。通称、CTマラソン)と比較するなら、さらにトレンド感をちゃんと捉えてるというか、重視してるように見えるラインナップだし。まあ、尖ってるって言ってもいいですけどね。若手にとって出たいイベント、憧れのイベントっていう存在に既になっていると思うし。目標とかになってるんじゃないですかね」
住田「ありがとうございます」
――『Hyper Luv Pop』に呼ばれることの意味って何だと思われますか?
植野「こういうイベントに呼ばれることで、注目されてるバンドの仲間入りできたみたいな達成感は多分あると思うよ」
住田「本当ですか?」
植野「うん。”よっしゃ出れた。これをきっかけにステップアップしたい”みたいな。そういう気持ちにはなるでしょう」
住田「そんな風に思ってもらえてるなら嬉しいです」

住田「今回は特に好き勝手したから。宇宙ネコ子、月野さん、ゴリラ祭ーズ、天国注射、iVy……とか、ほとんど面識ないバンドも半分くらいいます。『CTマラソン』は、普段Pangeaに出てるからとか、ホリデーで音源扱ってるからみたいな「繋がり」(文脈)を大事にしてるけど、『Hyper Luv Pop』では半分以上そうではなくて」
植野「じゃあ(『Hyper Luv Pop』では)何を大事にしてる?」
住田「存在感です」
植野「今何をみんなが観たいかなって?」
住田「そうですね。そこにアンテナ張って誘ってるっていうのが半分くらい」
――『Hyper Luv Pop』は今回で3回目ですけど、そういう憧れや目標みたいな位置まで行ってるっていうのがすごいですよね。どのような部分が、この結果を生んでいると思いますか?
住田「『Hyper Luv Pop』のブッキングと、僕が普段Pangeaでやってる『Luv Pop』っていうイベントのブッキングは、イコールではなくて。お客さんがちゃんと集まるラインナップにしようっていうのを、けっこうシビアにブッキングしてるつもりで。それはあるかもしれないですね」
――『Hyper Luv Pop』は、そういった現実的な部分も捉えつつ、絶妙なポイントをついたラインナップだなと感じます。
住田「俺がわりともう好き勝手やってるんで(笑)。シビアにブッキングするけど、今観たいなってバンドを集めてるみたいな感じもあるんで。だから、俺がめっちゃリスナー目線なのかもしれない」
――住田さんが『Hyper Luv Pop』をやろうと思い立った、そもそもの理由は何だったんですか?
住田「ブッキング自体は、僕がPangeaで働き出して1年経った2023年9月くらいから始めてて。『CTマラソン』に出たいからPangeaに出るみたいなことの、僕バージョンを作りたかったという。僕のブッキングに出てたらこれに繋がるかもしれへんからっていう、みんなの目標みたいなのを作りたくて始めました。1年くらいPangeaでブッキングやって、もう一個でかいことやってみたいなあみたいな。素直に、やったことないことをやりたかったからみたいなのもある。色んなサーキットがある中でも、さらに新しい風を吹かせたいみたいな感じですかね」
ヘッドライナーのいないイベントにしたい
――『Hyper Luv Pop』と『CTマラソン』との違いや共通点は何だと思いますか?
住田「お客さんも全然違うしな」
植野「客層が『Hyper Luv Pop』の方がちょっと若いイメージ。バンドも若いイメージがあるから」
――植野さんが、『CTマラソン』のブッキングで意識されてることってあったりしますか?
植野「吉條さんと二人で決めてる感覚が強いけど……。”HOLIDAYらしさは、吉條さんも意識してくれてて大事にしてくれてるな”って思ってて。でもやっぱり、これまでのPangeaらしさも出したいというか、このバンドはやっぱり出てほしいみたいなのはあって。そういう部分では、Pangeaに出てきたバンドと僕の関係性も重視してるし。一方で、やっぱり一年に一回なんで、それまでの一年で出会ってかっこいいと思ったバンドをお客さんに観てほしいっていうのはありますね。そういう意味では、毎回同じにはならないようにっていうのは意識していますね」
住田「『Hyper Luv Pop』と『CTマラソン』との違いで言うと……ラインナップは別に被ってるところも全然あるけど、なんか来てる人が違う」
――同じバンドが出ていても、それぞれに違う見え方をしているイメージがありますね。
住田「でも『CTマラソン』は、植野さんと吉條さんの人柄がけっこう出てるイメージ。”吉條さん、植野さん、呼んでくれてありがとうございます”みたいな気持ちでみんなライブに出てるような」
植野「あー」
住田「逆に『Hyper Luv Pop』は、全然俺と面識ないバンドめっちゃ誘ったりするんで。俺とバンドがそもそも初対面とかよくあるし、Pangea出たことないけど誘うバンドもいっぱいいるし。だから、みんながみんな僕に感情移入してるようなイベントではない」
植野「ある意味ドライっていうか。でも全く(感情移入)してないとは思わなくて、その感情移入の仕方がさらに”仲間”っていうか、”住田ありがとう!”って感じ」

――『Hyper Luv Pop2025』でトリを務めた水平線も、MCでそんな感じの雰囲気でしたね。
住田「そうですね。仲間として言ってくれてる感じがする。俺は今25歳で、水平線はちょっと年上やけど、友達みたいな感じですね」
―― 今回の『Hyper Luv Pop2026』のラインナップを改めて眺めたときに感じた印象を聞いてみたいんですけど……植野さん、どう思われました?
植野「めちゃくちゃいい。毎回だと思うけど、”音楽ファンが今観たい”アーティストをちゃんと持ってきているイメージですね」
住田「それはめっちゃ意識してますね」
――個人的には、バンドが揃う中に月野恵さんがいた点に驚きました。ご本人もSNSでびっくりされてましたけど。
住田「30分で決めてくれました。ありがたい。出演形態がどうこうとかは、別に意識したことは全くないかも。誘いたいなと思ったら、ラッパーの方もヒップホップの方も誘うと思うし」
――『Hyper Luv Pop』に呼ぶアーティストの基準というか、共通点ってあるんですか?
住田「人気かどうかもありますけど……。埋もれてへんなって思う人。こんなの言ったらあれやけど、たとえば”〇〇界隈”みたいなのあるじゃないですか。ジャンルや活動しているシーンで一緒くたにされることが多分あると思うけど、Linen Friscoはやっぱ浮いてるし、異質。(界隈の中でも)そういう独特の存在感があるかどうかはめっちゃ見てるかも」
植野「あー」
住田「穴熊やHighvvaterも結構同じこと感じてるし」
植野「オリジナリティを感じるバンドってこと?」
住田「そう、目立ってるバンド。オートコードも開始も同じことを感じて誘ったし、iVyとかもそう。ハシリコミーズとかも、目立ってるっていうか存在感があるなっていう」
植野「確かに」
住田「あと、多分今の自分の感覚が結構リスナーに近いんやろうなと思うし。その純粋なリスナーとしての感覚を見失わないようにしようっていうのは、ずっと思ってますね。あと、『Hyper Luv Pop』はヘッドライナーがいないイベントにしたくて。みんな横並びみたいな」
植野「なんでですか?」
住田「(ヘッドライナーが)いなくても成り立つっていうのが」
植野「そうね。バンド同士の相乗効果っていうか、相性っていうか、そういう精度もめちゃくちゃ高いのかもしれないね」
取材・文/竹内咲良
(2026年1月30日更新)