ビジネス書棚前の平台に4列並べて平積みで展示する(三省堂書店有楽町店)

ビジネス書棚前の平台に4列並べて平積みで展示する(三省堂書店有楽町店)

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。

今回は、2〜3カ月に一度訪れている準定点観測書店の三省堂書店有楽町店だ。ビジネス書の売れゆきはマネー関連の新刊などを中心に好調だという。そんな中、書店員が注目するのは、外資系コンサルティングファームの仕事の進め方を実践的な技術として体形的に解説した本だった。

「生きた現場」の知恵を体系化

その本は藤井篤之監修・金地毅・田辺元・柳田拓未著『外資系コンサルの仕事の進め方』(東洋経済新報社)。副題に「実践の場で使える問題解決の基盤スキル」とある。監修者と3人の著者はいずれも大手コンサルティングファーム、アクセンチュアの社員で、監修の藤井氏は15年以上、他の3人も10年以上の実務経験がある。同社の戦略部門における「生きた現場」の知恵を、わかりやすく体系的に伝えるために書かれたのが本書だ。

冒頭で藤井氏は言う。「私たちが働いているのは『生きた現場』です。……このような場面で個人のスキル以上に重要なのは、チームやプロジェクト全体として最大限の成果を出すための働き方です」。個々のコンサルタントの働き方や個人のスキルに焦点を当てた本は多いが、それらとは一線を画し、チームやプロジェクト全体の働き方に焦点を当てたのが本書の特徴だ。

全体は3部に分かれる。パート1は「コンサルの仕事の全体像」、パート2は「コミュニケーションの作法」、パート3は「仮説検証の作法」という構成だ。全体を把握した上で、全体とのつながりを意識して個別のスキルを使いこなすにはどうすればいいのかが、丁寧に解説されていく。

まず押さえておくべきなのは、仕事の基本単位「プロジェクト」だ。プロジェクトとは「問題解決」であり、これを効率的に営むには「論点設定・仮説構築」⇔「仮説検証」の繰り返しが必要であり、プロジェクト期間は1週間単位で構成され、各週には決まった流れと時間配分があると示される。

仮説を表現する「サマリ」や議論の仕方も解説

仮説を早期に構築した次には「構築した仮説をチームで認識できる形に表現する方法」に焦点を当てる。アクセンチュア流では「サマリ」「ストーリー」「ワークプラン」という3つの中間成果物で表現するという。「サマリ」は答えるべき問いと、その答え、それを支える論理展開をまとめたもので、これに論拠と根拠を肉づけしたものが「ストーリー」、ストーリーを元に検証作業の計画を整理したものが「ワークプラン」となる。

これを踏まえて具体的に調査や分析を繰り返してストーリーを更新し、問題解決につながる仮説を練り上げていく。その過程で必要になってくるのが議論だ。ここも1章を割いて解説される。聞き手である上司が検討内容・状況を理解でき、話し終わったときは仮説が進化しているといった議論をするには、何をどのように伝えればいいのかが、陥りがちな状態とあるべき状態を比較しながら語られていく。

資料作成の仕方や仮説検証の方法もステップに分解し、資料作成なら使える定性・定量チャートの種類を細かく解説するなど、各段階で使えるスキルの型が示されていくので、読者は考え方と実践方法の両方を本書から学ぶことができるだろう。生成AI(人工知能)の活用についても段階に応じた利用の仕方などに触れながら、生成AIも含めたチーム全体で価値を出す方法を解説している。

「コンサル関連の本はこの店と相性がいい。ビジネス書ランキングでは入荷以来、毎週10〜15位ぐらいの位置で売れており、コンスタントな売れゆきが続いている」とビジネス書を担当する春田真吾さんは話す。コンサル業界の若手や志望学生向けに書かれた本だが、プロジェクト型の仕事は多くの業界に広がっており、関心を持つビジネスパーソンが多そうだ。

2位に『移動する人はうまくいく』著者の最新刊

それでは先週のランキングを見ていこう。

(1)科学的に証明された すごい習慣大百科堀田秀吾著(SBクリエイティブ)(2)賢く生きる習慣三上功太著(すばる舎)(3)豊かな人だけが知っていること長倉顕太著(あさ出版)(4)本を読む人はうまくいく長倉顕太著(すばる舎)(5)やりたいことが見つかる 世界の果てのカフェジョン・ストレルキー著(ダイヤモンド社)

(三省堂書店有楽町店、2026年1月19~25日)

1位は習慣化テクニックを網羅的に紹介した本。本欄2025年7月の記事〈「すごい習慣」で仕事や人生を変える 科学的根拠に基づく小さなメソッドの大百科〉で取り上げた息の長い売れ筋だ。

2位は、リスキリング教育サービスを展開する起業家が毎日の習慣を「人の役に立つこと」へと変えることで人生を好転させる方法を説いた自己啓発本。3位には、『移動する人はうまくいく』が大ヒットした長倉顕太氏の最新刊が入った。今回は「時間貧困」から抜け出す方法を説く。これに関連して同氏による25年のヒット本が4位で続いた。5位は、新訳で趣を変えて刊行された世界的ベストセラーの自己啓発ストーリーだった。

(水柿武志)

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