「将来のために」の将来っていつ来るの?
ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんは、『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』という本のある一節を読んで、ずっとうすうす気になっていたことを正面から考えることになりました。(編集・写真/ダイヤモンド社・今野良介)

書籍『弱さ考』には、双極性障害を発症した著者の井上さんと、井上さんが偶然出会ったガン患者のSさんが「チームその日暮らし」を結成した話が出てくる。
「チームその日暮らし」
なんて素敵なネーミングだろう。
前からうすうす気になっていたのだ。「将来のために、今を我慢する」生活を、私たちはいつまで続ければいいんだろう。
10年前も「将来のために」と思って頑張っていた。
ってことは、5年後も10年後もそう思っているんじゃないだろうか。
そうやって、我慢したり努力したり歯を食いしばったりして備えた「将来」はいつくるんだろう。私たちは、いつ、その貯蓄(比喩)を使って遊ぶ(比喩)んだろう。
『弱さ考』で紹介されている、書籍『「その日暮らし」の人類学』の文章は以下だ。
子どもの頃は「将来についてきちんと考えなさい」と言われることに反発した人も、大人になるにつれて未来に備えるために、現在を消費する生き方を身体化していく
(小川さやか『「その日暮らし」の人類学』P215より)
先日、大学で教えている友人が、こんな話をしてくれた。
「ある学生さんがね、『僕はA国とB国が好きで、一度行ってみたいんです』って言うのね」
うんうん。海外旅行の定番国だ。
「『だから、一生懸命働いて、定年後、AとBに旅行するのが夢です』って言うの」
……40年後?
「そう。思わず、『え? 40年も待つの?』って聞いちゃった」
私はその学生さんに、40年後といわず、就職したら最初のボーナスで行っちゃえばいいのにと言いたい。
だけど、ふと気づく。実は、私もその学生さんみたいなこと、してないだろうか。未来のために今を消費するような。そんな生き方を、ここ20年くらい、続けてないだろうか。
バッグの中の『弱さ考』を見せて、友人と「その日暮らし」について話をした。
その夜、私たちも「チームその日暮らし」を結成した。
「将来のために今を犠牲にしない。その日暮らしのまま、ある日、死ねたらいいね」と言って、私たちは2026年の新年会を解散した。

(※本記事は、書籍『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の 弱さ考』についての書き下ろしです)
書籍ライターとして、ビジネス書、実用書、教育書等のライティングを担当する一方、独自の切り口で、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆している。さとゆみビジネスライティングゼミ主宰。卒ゼミ生によるメディア『CORECOLOR』編集長。著書に『書く仕事がしたい』(CEメディアハウス)、子育てエッセイ『ママはキミと一緒にオトナになる』(小学館)、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)など。1976年北海道知床半島生まれ。

