「私の人生を賭けた最高傑作です」
「お聞かせしましょう、なぜ私が我が子を含む美しい少年たちを標本にしたのか」
長野県の山中で標本にされた6つの少年たちの遺体が見つかった。物語は、蝶の研究者の大学教授・榊史朗(さかきしろう/西島秀俊さん)のセンセーショナルな告白から始まる。6人の少年の中には、自分の息子も含まれていた……。
原作は、ベストセラー作家で「イヤミスの女王」こと湊かなえ氏の小説『人間標本』。構想10年以上をかけて新たに書き下ろし、“禁断の衝撃作”と呼ばれている。小説の発売から2年を経て実写ドラマ化され、2025年12月19日(金)から全5話がPrime Videoにて世界独占配信がスタートし、注目を集めている。
この物語で市川染五郎さんは、榊史朗の息子、榊至(さかきいたる)を演じている。染五郎さんといえば、現在、押しも押されもせぬ“歌舞伎界の若きプリンス”の一人として活躍中だが、今回初めての現代劇ドラマ出演であることも大きな話題になっている。そんな染五郎さんのインタビュー前編では、『人間標本』に挑戦した想いを中心に話を伺う。
人間が持つ欲望や闇と美しさが魅力だった
染五郎さんにとって『人間標本』は初めての現代劇ドラマ出演となるが、この作品に出演しようと思った理由はどこにあったのだろうか?
「湊先生の原作の世界観にとても惹かれました。読んでいくほどにぐいぐいと引き込まれ、それぞれの人間がもつ欲望や闇を、ときにこんなにも美しく、自分の想像を超える描写に圧倒されました。そして、この世界の中に自分も登場人物としていられたら、うれしいなという気持ちになり、出演のお話を受けさせていただきました。
確かに、今回の作品は現代劇ドラマへの初挑戦ではありましたが、正直、自分としては特に未知の世界に挑む、というような気持ちはまったくありませんでした。歌舞伎の演目の中にもいろいろなジャンルがあり、新作を含めて現代劇のような作品もたくさんあるので、演じ方の違いについては、あまり感じることはなかった……、そういう意味では、日頃から歌舞伎の一つひとつの作品のお話をいただいて、毎回、それに向き合っていく、という姿勢とほとんど変わりはありませんでした。
ただ、歌舞伎のような舞台作品と、映像作品の演じ方の違いというものは、もちろんありました。舞台では常にお客様と対峙して演じていますが、映像作品では、お客様の息遣いを近くに感じるようなことはありません。これまでにも映像作品(現代劇以外)を何度か経験させていただきましたが、しばらく映像作品に関わっていると、歌舞伎の舞台に戻ったときに、ああこんなにも違うんだと気づかされるような、違いを痛感させられることがありました。そのときに、歌舞伎の演じ方に戻せるかなと感じたこともあったのですが、今回の『人間標本』も、作品を撮り終えた後で歌舞伎の舞台に臨んだら、少しそんな気持ちになりそうでした。でも、言い換えれば、それだけインパクトの強い現場だった、ということもいえるのかもしれません」


