
坂東祐大、yuma yamaguchi、君島大空が考える
100年後の火星で奏でる音楽
NHK放送100年を記念して制作され、2025年12月より放送されているSFドラマ『火星の女王』。その音楽制作を担うのは、作曲家の坂東祐大(写真左)とyuma yamaguchi(同右)だ。そして、劇中に登場する架空のバンド“ディスク・マイナーズ”には、君島大空(同中央)が参加。音楽の方向性やルーツも異なる3人だが、本作では主題歌「記憶と引力」をコライト形式で生み出したというから驚きだ。そんな彼らが、本誌の取材のために再び集結。“自分1人では生み出せない”ものが出来上がったと口々に語る、その制作の手法について解き明かしていこう。
Text:Kanako Iida Photo:Chika Suzuki

NHK総合、NHKBSプレミアム4K 2025年12月13日(土)〜 22:00~23:29/毎週土曜、全3回
※NHK ONE(新NHKプラス)で同時/見逃し配信予定
人類が火星移住を果たしている100年後の未来を描く大型SFエンターテインメント。突如現れた謎の物体をめぐり、火星と地球の人々の欲望と希望が交錯する科学的ヒューマン・ドラマです。
モダンのアプローチを排した
──坂東さんは『17才の帝国』(2022年)以来のNHKドラマの音楽ですね。
坂東 『火星の女王』も、『17才の帝国』のときの座組でやるからと誘っていただいたのがきっかけでした。
yuma 僕はトレーラーを作るときに坂東君から誘ってもらいました。トレーラー映像に合わせて僕が作った曲を元に、坂東君が“もうちょっと鬼気迫る感じが良いよね”と言って、3連符のメロディを16分音符にして少しタイム感を変えるとか、発展させて1日でアレンジしてくれたのがメイン・テーマです。すごすぎてビビりました。
坂東 制作の過程は3段階で、トレーラーを作る段階と、劇中に出てくるバンド=ディスク・マイナーズの曲を君島君を呼んで作る段階と、映像ができた状態で作曲するポスプロの段階がありました。
──物語の舞台は100年後で、しかも火星ということで、音楽的なコンセプトはどのように?
yuma 100年後に楽器はこんなふうになってるんじゃない?とか話しましたよね。
坂東 今の時点で本当の100年後の音楽は作れないから“100年後にありそうな音楽に見えるようなものを作る”ほかない。そのときに“何十周も回って昔の名曲をリバイバルで歌うバンドがオシャレになってるんじゃない?”というアイディアがNHKチームから出て、その方向で考えてみました。
君島 その状態でお二人から“想像してほしいんだけど、100年後の火星で……”って話をいただいて。とりあえずSpotifyで“Mars”って打って火星関連の曲のプレイリストを作って“うーん……”と悩みましたが、レコーディングに参加させてもらうころには大枠はできていました。僕がアイディアを出すこともありましたが、坂東さんとyumaさんがシェアしている外観をなぞっていくような形で携わった記憶です。3曲カバーを作ったのですが、好き勝手やらせてもらいました。
──それを具体的にディスク・マイナーズの曲として落とし込む作業はどう進めましたか?
君島 素朴な演奏のイメージだったので、僕がいつもトリオ編成でやっている2人を呼びました。モダンのアプローチを排して、かなり古めかしい音になったと思います。「You are My Sunshine」はザ・フレーミング・リップスみたいにしたかったんです。途中から出てくるひずんだベースはいろんなディストーションをかけて、位相をぐちゃぐちゃにしています。ほか2曲はスタジオ・ライブして帰るみたいな感じでした(笑)。終わるたびに皆さんが“おお~!”って言ってくれて、楽しいだけの現場だったと記憶しています。
yuma レコーディングはライブを見てるみたいな感じで、音楽的なところは君島君に丸投げでしたよね?
坂東 本当に僕、君島君に“良いね!”としか言ってなかった(笑)。
君島 この3曲はミックスも僕がしました。構成要素が楽器3つと自分の声だけなので、音場を広く使って、STEINBERG Cubase内でミックスしました。
──皆さんDAWは何をお使いですか?
yuma みんなバラバラなんですよね。僕はAPPLE Logic Proです。
坂東 僕はABLETON Liveです。
坂東祐大

【Profile】作曲家/音楽家。Ensemble FOVE主宰。作品はオーケストラ、室内楽からトラック・メイキング、立体音響を駆使したサウンド・デザイン、シアター・パフォーマンスなど多岐にわたる。米津玄師や宇多田ヒカル、嵐などの編曲なども手掛ける
君島大空

【Profile】音楽家/ギタリスト。2019年以降、2枚のフル・アルバムと4枚のEPをリリース。作品はどれも自宅録音を基盤に、ミックスまで自身で行う。独奏、合奏形態、トリオでの演奏活動を軸に活動中。2025年にはEP『音のする部屋』をリリース。
yuma yamaguchi

【Profile】作曲家。2016年より音楽プロダクションYUGE inc.に所属。Netflix映画『新幹線大爆破』、アニメ『時光代理人』などの劇伴や、RADWIMPS「賜物」のストリングス・アレンジなどを手がけるほか、自身のアーティスト活動も精力的に展開。
3人集まったら2コードの曲に
──ドラマーの石若駿さんも参加する主題歌「記憶と引力 feat. ディスク・マイナーズ」は、どのように作ったのですか?
君島 この曲は長い時間をかけて作りました。今年(2025年)の頭に友達の家に行くみたいな感じで坂東さんの家にyumaさんと集まって。
yuma シュークリームとケーキ持って行ったんですよね(笑)。
坂東 撮影のために先にテンポとビート感が必要で、3人いたら1日で何とかなるだろう、という希望的観測で集まっていただき、良いイントロができました。会ってとりあえずやったのが、最近良いと思った曲を聴き合うことだったのも面白かったです。宇宙っぽい曲を聴こうと思って、ポール・エプワースの『Voyager』とかコールドプレイの『Moon Music』を聴いて方向性を話しました。
──そこからどのように作ったのですか?
坂東 君島君がギターを弾いてくれて、yumaさんと僕はたまにピアノを弾き、こんな感じかな?とかやってたらできました。
yuma 3人とも個人ではやらない要素だけど、集まったら2コードの曲になって。
君島 普段の作曲のスタイルはyumaさんも坂東さんも僕も全然違うんです。でも共通項として和声感が強いものを作る。僕は自分ルールがあって、ギターだけどピアノみたいなボイシングで、歌モノだけどループがなくて、毎回チェンジが違うみたいなのが好きなんです。お二人もそういうところがある気がしてて。複雑性は三者三様だと思うんですけど、そんな3人が集まって“コード2つでいいよ”ってなったんですよね。
坂東 トリッキーな転調に飽きていたので逆張りで行こうって(笑)。
yuma そのときに弦は入れたくないって話もしていましたよね。
坂東 僕はパブリック・イメージと真逆で、ポップスに弦楽器を入れなくても、4リズムでか
っこ良ければいいと思ってるんです。なんなら弦楽器とか全然入れたくなくて(笑)。火星の主題歌でオーケストラが入ってたらありきたりすぎない?と思って弦を入れたくないと主張した気がします。

坂東宅で行われた主題歌のためのコライト作業。yumaがNORD Nord Grandを弾き、そこに君島がギターやボーカルを重ねて試行錯誤している様子だ
──イントロ以外は後日作ったのですか?
坂東 仕切り直しがありましたよね。
yuma 2日続けて集まって、1日目にコードをみんなで話して決めました。
君島 合宿みたいでしたね。基本的に坂東さんのLiveで組んだんですけど、僕がめっちゃ印象に残っているのが、坂東さんが空のMIDIトラックに構成の設計図を作っていたことです。Aメロが8小節、Bメロが8小節、というタイムラインがすごく見やすくて衝撃的で、最近真似してます。
坂東 普通に作ると1分半なんてすぐ終わっちゃうから、いかにうまいこと構成するかを考えて、そこから何を入れる?転調どうする?とか決めていった気がします。
yuma 坂東君と僕が鍵盤を交代で弾いて、君島君はずっとギター弾いていて。
君島 僕はボイスメモをずっと回して、基本的にずっと楽器を触っていた印象です。
──セッションで構想を練ったのですね。
坂東 このセッションをやって、コライトがすごく楽しかったなって思って。日本ではラフなコライト文化ってまだ全然ないと思うんですけど、それには全員が楽しく同意が取れることが必要なんだなって。かつ、日本ではほとんどの場合、スタジオは清書のために行くじゃないですか。デモを差し替えに行く。でもこの前ロスに行ったときに、向こうではライティング・セッションのために箱を押さえている時間が普通にあって。そういうのができないとダメだよな、でもコストかかるしなって。でも、普通に集まってやったほうが楽しいってあらためて思ったりしました。
──コライトを経て発見はありましたか?
坂東 お二人ともレスポンスがめちゃくちゃ速いので本当に掛け算になっている感じがしたのと、僕はギターが全く弾けないので、君島君の演奏を至近距離で聴けてすごく楽しかったです。
yuma 3人ともそれぞれ個人では書かないような曲が出来上がった感じがします。我が出たり納得できない部分があったりするかと思ったんですけど、思った10倍ぐらいスムーズに行った感じでした。
君島 僕はピアノが全然からっきしなんで、2人が鍵盤を触ってるときに“わあ~!”ってなってました(笑)。担当楽器が違う人と作曲へ向けたセッションをするのは刺激的でした。自分の制約をどんどん外していって、こういうシンプルなのも2人がいるから大丈夫みたいな自分を許していくみたいな感じでした。
──最終的にどうまとめたのですか?
坂東 合宿で作ったのはワンコーラスだけだったんです。そこからは不思議な制作過程で、2人ずつで引き継いでいって。
yuma 2番を作るNHKでのレコーディングは僕が行けなかったんです。
坂東 yumaさんから送ってもらったエッセンスを参考にしつつ、君島君とプリプロみたいにフル尺を作って。そこからは僕が遠隔でお二人にやってもらいました。
君島 イマジナリー坂東さんを置いて(笑)。坂東さんも多分これならオッケーだよな、みたいなやり合いがありました。
yuma 石若さんは3人ともやったことがあるから“坂東さん、これ良いって言うんじゃないですか?”と言ってくれたり。
石若さんに“ジャズ禁止令”
──石若さんとは、皆さん共作経験があるんですね。
君島 僕は最初のソロ音源から石若さんにお願いしていて、“めちゃくちゃやってください”って言ってます。
yuma 僕は大事な仕事で石若さんしかできない曲のときにお願いしています。
坂東 僕は高校から一緒で。僕が高校3年生のときに1年生で入ってきたのが石若駿で。だから大体ドラムをイメージするときは完全に駿の手癖と共にインストールされていくみたいな。
──それぞれの音楽性を理解しているということで招かれていたんですね。
yuma 君島君はずっとバンドで一緒にやってるから、僕が録るときと近さが違って。普段ならコントロール・ルームからこうやってくださいって頼むだけですけど、君島君は“いや、もっと行けるはずです”って途中からブースに行きましたよね?
君島 “ちょっとシュンシュン、僕もブース入って一緒にギター弾いていい?”って言ったら、獣の石若が徐々に出てきて、それそれ!って。かなり際どいことをやっているのがOKテイクです(笑)。石若さんは譜読みも速いし、初見で何でもできるし、世間からもミュージシャンからもスーパーマンの印象を持たれてると思うんです。でも僕はめちゃくちゃ繊細な人だと思ってて。空気の機微とかを見てるから、一緒の現場にいるときはそれを突き崩したい。音楽的じゃない抽象的なもので石若さんの中に景色を作っていって、ブースに一緒に入ってライブっぽくやるとか、そういうアプローチを探すようにしています。
──どんな音を目指したのですか?
君島 僕、バコバコにひずんだジャンクなドラムが大好きなんです。石若さんのドラミングはめちゃくちゃ上品だから、たまに“ジャズ禁止令”を発動するんです。“今、スウィングしてるぞ!”って(笑)。石若さんだからこそ汚しがいがあると思います。
──録ったものはどのような処理を?
君島 大枠のデータを僕が一旦お預かりして、エンジニアの奥田(泰次)さんにステム・データでまとめてもらいました。僕が基本的にサウンド・メイクをさせてもらって、特にドラムのサウンド・メイクを大事にしているので、サチュレーション感などの土台を作って、お二人に共有しました。
──何を使ってひずませましたか?
君島 ほぼプラグインで、FABFILTER SaturnとかSOUNDTOYS Decapitator、Devil-Locとかが大好きなんです。変な音作りをしていて、ひずみをかけるにしても、センド&リターンとインサートの各信号を混ぜたりしています。まねされたくなくて過剰にそういうことをするんですけど(笑)。キックは、リア・バスっていうミックスの考え方があるらしくて。コンプレッサーをAUXに挿してからM/SのMidだけをアクティブにしてキックを送るとキックがすごく前に出るんです。本来のキックのトラックと、センドで送ったコンプの音量を調整して、キックの打点の強さを担保します。スネアとオーバーヘッド類はトラックを分けていて、オーバーヘッドは思いきりDevil-Locを入れたりして1回ひずませるだけひずませてから、破綻しないレベルまでひずみを減らします。キックがずっと前に出ているからあまり破綻しないんです。オーバーヘッドにDevil-Locをセンド&リターンで常にかけることで、ずっとひずんでいる状態を作っています。
──ボーカルや歌詞の作業はどのように行われたのですか?
yuma 坂東君と文月(悠光)さんは韓国で歌詞の作業をされていましたよね。
坂東 そうそう。帰国してからはコーラスのラインを提案したりもしました。
君島 ボーカルは坂東さんから送られてきたラインをリアルタイムで宅録して投げて、“下ハモも作ってみたんだけど”って来たら“やってみます!”ってまた歌って。
yuma あのときはもう十分満たされてると思ったけど、できた曲を聴くとハモを入れて良かったです。
君島 シンセも結構足しましたよね。
yuma 坂東君が駆け下がりのフレーズを入れているのと会話するような感じで、ペンタトニックで下がっていくようなフレーズを入れたら面白いかなとか、そういう感じで君島君に送りました。
君島 自分のアイディアには全くない素材が送られてきて“楽しい!俺には思い付かねえ!”ってなってました。ルーツが三者三様なので刺激的でしたね。
プライベート・スタジオ機材

主題歌のボーカル録音も行われた君島のプライベート・スタジオ。写真は所有機材の一部で、チャンネル・ストリップのCHANDLER LIMITED TG Micr ophone Cassette(下から2段目)は本作のボーカル録りにも使用。写真には写っていないが、マイクはNEUMANN U 87を使用したという。そのほか、YAMAHA FX500(マルチエフェクター)やUNIVERS AL AUDIO OX(ロード・ボックス/ギター用スピーカー・キャビネット&マイク・エミュレーター)などが並んでいる
エフェクト・ボード

君島のエレキギター用のエフェクト・ボード。左から、STRYMON BigSky Midnight Editi on(リバーブ)、BOSS FV-30(ボリューム・ペダル)、FAIRFIELD CIRCUITRY The Unpleas ant Surprise(ファズ)、F.E.T. Fuzz Octave Swell(ファズ)、ELECTRO-HARMONIX Big M uff(ディストーション)、TC ELECTRONIC Polytune(チューナー)、EMPRESS EFFECTS Heavy(ディストーション)、SUHR Riot(ディストーション)、LOVEPEDAL Amp Eleven Gre en(オーバードライブ)、YOUSAY SOUNDS NSD(オーバードライブ)
ドラムのキック処理

君島がミックスを行ったSTEINBERG Cubaseの画面。「記憶と引力」では石若駿がドラムを演奏。キック処理では「フェーダーはあまり触らない」と話す君島。各トラックでEQ処理を施した後にモノラルのバスにまとめ、最終的にWAVES API 560で低域を持ち上げるという。さらに、センド・エフェクトとしてPURPLE AUDIO MC77を立ち上げ、M/SモードのMidのみを生かし、レシオは全押しに。そこへキックの信号を送ることで“眉間に直接くるようなアタック感”を付加する
ドラムのグループ処理

こちらはドラムのグループ処理の様子。スネアとタムでバスを作り、それぞれで音作りしてからスネア+タムのバスを作成。キックはバスから外しているという。シンベの帯域にかぶる150Hz付近は、FABFILTER Pro-Q 3のダイナミックEQで少しカット。さらに、汚れた質感を出すためにSOUNDTOYS Decapitatorで少しモワッとさせてから、X FER RECORDS OTTでジャンクさを足している
実機とソフトを重ね迫力の低音に
──劇伴もいろいろなテクニックを盛り込んだ曲が入っていますね。
yuma 坂東君が中心になって作った部分が大きかったです。大げさじゃなく、映画10本分ぐらい作ってますよね?
坂東 全部フィルムスコアで、映像の尺が違うバージョンも作っていたので、バリエーションも合わせて5時間分ぐらいの曲を作ったんです。ミュージック・エディターとしての作業が大変でしたね。オーディオ・ドラマのように登場人物の状況や心情、どういうキャラクター・アークを持っているかを全部音楽で説明しつつ、観客側の心情のアクセルとブレーキの曲線をずっと考えながら作る必要がありました。脚本の構造が分かっていないと成り立たないので、めちゃくちゃ難しいんです。あと、いかにリッチなサウンドを効率的に録るかという、オーケストラのレコーディングの予定も書きながら並行して立てつつ作曲しました。
──1人でそこまでの役割をされているとは! SF的な音を作るポイントはありますか?
坂東 複層的でレイヤー感があるとかですかね。あとはパッドと低音がすごく大事です。日本だと実写のSFはあまりないですが、海外にはベンチマークがいっぱいあるので、音楽的に劣らないものにしたいと思いました。
──どのような音源を使いましたか?
坂東 パッドはLive付属でMPE対応のWavetableを多用しました。プリセットにめちゃくちゃな設定のリバーブをかけて加工したり、レコーディング・スタジオで録った管楽器や弦楽器の音をすごく加工してパッドっぽくしたりもしました。オルガン音源のSPITFIRE AUDIO Shakespeare’s Church Organも買いました。ハードウェアでは、SEQUENTIAL Trigon-6を一度使い倒してみたくて多用しました。
──迫力のある低音はどのように?
yuma ベースを重ねるのは難しく感じるかもしれませんが、僕は聴覚的に違和感がなければ実機とソフトのユニゾンもします。サブベースはBEHRINGER Poly DとXFER RECORDS Serum 2を混ぜました。2つのシンセのブレンド信号がオーバー・レベルしても、一度オーディオに書き出して使えばコントロールが効いて扱いやすくなるんです。

坂東がサウンドトラックの制作に使用したABLETON Liveのプロジェクト・ファイル。ここで注目したいのが、上部に用意された「作曲MEMO」というグループだ。このMIDIトラックには音源などは入れず、プロジェクトの展開を示す役割を果たしている。インタビューでも語られた通り、君島はこの手法に感銘を受け、自身の制作でも取り入れたという
複数のベースで低音の迫力を出すby yuma yamaguchi

yuma yamaguchiのAPPLE Logic Proのプロジェクト画面。すべてベースのトラックで、上からソフト・シンセのXFER RECORDS Serum 2、LENNAR DIGITAL Sylenth 1、ハードウェア・シンセのBEHRINGER Poly Dをオーディオ録音したもの。3音色をユニゾンして1つの音色として扱うことで、厚みのある低音を作り出している

XFER RECORDS Serum 2(画面上)では2系統のオシレーターにウェーブテーブルを立ち上げ、LENNAR DIGITAL Sylenth 1(同下)では、リード系の音色を読み込んでいるのが見て取れる
──最後に、制作を振り返っていかがでしたか?
坂東 演奏はいつも演奏を一緒にしているEnsemble FOVEのチームなのですが、たまたまお盆の時期で、主要メンバー以外にも日本中のオーケストラのコンサート・マスターが5人ぐらい集まって(笑)。誰がトップでも成立するので、曲ごとに入れ替えて演奏してたりしました。すごく良い演奏で、聴き応えのある盤になったと思います。
君島 僕はお二人の主だったところに異物として自分を投入していくつもりでやらせていただいたんですけど、お二人の仕事を近くで見られたのがすごく楽しかったです。アイディアとか作り方への姿勢の持ち方とか、ミックスや音の選び方や処理など、お二人と自分の違いをすごく自覚的に落とし込んでいけました。割といつも通りの自分のままいられたのが面白かったし、それでいていつも全然見られない景色が見られるすごく充実感のある制作でした。普段の動きと違う流れの中に突入できてうれしかったです。
yuma 僕も本当に尊敬するミュージシャンと一緒に仕事ができて、終わってもすごく楽しかったと言えるのが素敵な経験でした。特にメイン・テーマは、作詞の文月さんも合わせて4人で作って、愛着がある曲ができました。
君島 “最高の成功体験感”がありますよね。俺らならできるんだ、みたいな最強の気持ちになっていました。
──皆さんの達成感や充実感が伝わってきます。ぜひ良い環境で聴いてほしいですね。
坂東 本当ですね。ミックスもマスタリングも素晴らしいのでぜひお聴きください。

Release
『ドラマ「火星の女王」オリジナル・サウンドトラック』
坂東祐大 yuma yamaguchi / 君島大空
日本コロムビア:COCP-42616
Musician:君島大空(vo、g)、石若駿(ds、syn)、坂東祐大(p、syn)、yuma yamaguchi(syn)、UA(vo)、藤本ひかり(b)、多久潤一朗(fl)、荒木奏美(oboe)、上野耕平(sax)、大家一将(perc)、戸原直(vln)、町田匡(vln)、小畑幸法(vc)、地代所悠(contrabass)、篠崎和紀(contrabass)、他
Producer:坂東祐大、yuma yamaguchi
Engineer:田中義章、佐藤宏明、奥田泰次、君島大空、佐藤陽介、森田誠
Studio:NHK、音響ハウス
