2026年1月5日7時0分
当局と闇社会の間で、情報屋とブローカーを併せたような役割を果たす存在を韓国では「ヤダン」と呼ぶそうだ。
「YADANG ヤダン」(1月9日公開)は、そんな闇のブローカーを主人公にした異色のクライムアクションだ。
大統領選を間近に控え、候補者は資金調達にしのぎを削り、真偽交えた情報戦に明け暮れている。
そんな時、野心家の検事グァニ(ユ・へジン)に腕を見込まれたのがヤダンのガンス(カン・ハヌル)だった。ガンスは「最強のヤダン」として麻薬摘発で功を挙げ、兄貴と慕うグァニはスピード出世を遂げていく。ところが、逮捕者の中に有力候補の息子フン(リュ・ギョンス)がいたことから事態が暗転する。
有力候補に取り入るため、グァニはガンスを切り捨てる。麻薬漬けで廃人のような状態で放り出されたガンスは、フン逮捕に執念を燃やすあまり閑職に追いやられた刑事サンジェ(パク・へジュン)、フンの情報を流したことで放逐され売人に落ちぶれた元女優のスジン(チェ・ウォンビン)とともに逆襲を企てる。無力に見える3人は、巨大権力にいかにして立ち向かうのか…。
「イカゲーム」シリーズで知られる二枚目ハヌルの廃人モードの汚れっぷりは見事だが、どこか脱けきれない好青年の匂いが、その後の復活劇に説得力を生んでいる。
何でもこなす巧者グァニはたたき上げの見てくれといつか破綻しそうな危うさを醸し出す。一本気の刑事にハマるへジュンの目力、ウォンビンの冷めた感じ、そして格差社会の嫌悪感を一身に背負うようなギョンスのわがままぶり。俳優としての実績も積むファン・ビョングク監督が適役俳優陣それぞれを存分に生かしている。
鮮魚運搬トラックを利用した麻薬流通の描写から、ガンスのライターに込められたトリックまで、大道具小道具の仕掛けにうならされるポイントも多い。エンタメ心に満ちた快作だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)
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