LOSTAGEというバンド

海外のムーブメントをリアルタイムかつストレートに反映したオルタナ~メロディックパンクなバンドたちが続々メジャーデビューを果たした90年代中頃から2000年代初頭――の、数年後。いわゆる“バブルの夢の跡”から出てきたバンド群の中にLOSTAGE(ロストエイヂ)もいた。

“バンドはもう古い”と揶揄する言説が広まった2010年代初頭を経て、それが時代に迎合しようとする旧世代の戯言だったことが証明された2020年代、バンドサウンド全盛の音楽シーンにおいて高まる影響力。LOSTAGEは今、本人たちの知らぬところで最盛期を迎えているのかもしれない。

ベース・ボーカルの五味岳久と、実弟でギタリストの五味拓人、バンドの支柱であり緩衝材でもあるドラムの岩城智和。1月2日(金)より公開中の映画『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』は、四半世紀にわたるLOSTAGEの軌跡を振り返りつつ、これからもバンドと共に生きていくであろう彼らの姿をありのまま世界に届ける音楽ドキュメンタリーだ。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

四半世紀にわたる<音楽生活>の記録

ファンには言わずもがな、LOSTAGEは奈良を拠点に活動するスリーピース・ロックバンド。2001年の結成から現在に至るまで、一時はメジャー契約~デビューも経験しながら活動を続けている。とくに国内ロック好きであれば、日本中どこかのライブハウスで彼らのパフォーマンスを見たという人、音楽フェスでたまたま耳にしたという人は少なくないはずだ。

良くも悪くも率直なバンドだから、ライブ会場などで活動の内情を耳にしたという人もいるだろう。彼らのミュージックビデオも手がけてきたMINORxU監督による、「こんな古の映像よく撮ってあったな……」という驚きはさておき、メンバー各々の口から訥々と語られる、古参ファンも知らないバンドの内情は微笑ましく、ときにスリリングであり、胃がキリキリとする瞬間もある。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

くすぐったい物言いを嫌う岳久の率直すぎるライブMC、無頼なイメージのある拓人のエモーショナルな述懐、ある意味そんな二人の精神的な拠り所でもある岩城が飄々とした様子で語る、バンド活動の核心について。幾度となくメンバーの脱退を経験し、バンド存続の危機も一度や二度ではなかった。予期せぬトラブルに見舞われた直後の岳久の“ゲンナリ顔”は必見だ。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

ときにはファンを不安にさせるほど愚痴をこぼしながら、しかし最終的に苦境を覆すのも彼ら自身であるという、バンドとしての強度。虚飾のない言葉や音が人々の心を動かし、全国に強固なファンベースを築いてきた。当然そこにはメンバー各々の葛藤や人知れずの努力、そして理解者の助力もあった。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

「ぜんぶ自分たちでやる」は本当に難しいのか?

まだCDの売上げが音楽シーンを支えていた時代から、違法アップロードが社会問題化した2010年代、サブスク全盛の2020年代まで、大いに翻弄されながらも不器用に抗い、活動を続けてきたLOSTAGE。現役のロックバンドが作品の売上枚数を平然と口にする、その瞬間だけを切り取っても貴重な記録映像ではあるが、経験した当事者たちしか知り得ない証言の数々は、結果的にインディーバンドのハウツーとしても機能している。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

自主レーベルの立ち上げから作品の流通まで、当然すべてが初めての経験、手探りのインディー活動。不特定多数の”潜在的リスナー”にランダムに届けるよりも、実際に足を運べる範囲に全力で届けること、それをマイペースに続けること。より多くに聴かれるという理想と、現実に則した妥協。結婚し親となり、バンドマン兼フリーターから地元に根ざした個人事業主へ。そこにもインディー活動の経験が活きてくる。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

「好きだからこそ」続けてきたバンドが、人生そのものになっていく過程。愛する音楽をお金に換える/代えること自体に対する葛藤。お金が理由で諦めるのならば、すべてを自分たちでやってみよう。音楽家にとって極めてシンプルかつ最も難しいとされる活動スタイルだが、それは本当に“難しい”のか? 実際にやってみなければわからないし、納得できない。

バンドの音の要である機材、活動資金の重要な一端であるマーチャンダイズ、レコーディング、ライブ……。バンドの“当たり前”を映し出す本作は、極めてプリミティブなLOSTAGEというバンドと、やがて時代が彼らに追いつくであろう(偶然の)先見性を示唆しているようにも見える。人が人であるかぎり、身体性を伴わないバンドサウンドはやがて淘汰されていく。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』©2026映画「LOSTAGE」製作委員会

本作はLOSTAGEの新旧楽曲がふんだんに使用されているので、ぜひ劇場の大音響を浴びながら鑑賞してほしい。少なくとも彼らの音楽を生で体験してみたいと思わせるはずだし、たとえばコロナ禍以降ライブハウスから足が遠のいている、なんて音楽好きの腰を上げさせるだけの熱量がある。蛇足を付け加えれば、日本全国の“個人事業主デビュー勢”を勇気づけてくれる作品でもあるだろう。

『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE-ひかりのまち、わたしたちの-』は2026年1月2日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開中。そしてLOSTAGEは新年も早々から春にかけて全国各地でのライブが決定している。

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