和田はつ子さんの「料理人季蔵捕物控」シリーズが50冊目が刊行された。
凄腕の料理人であり隠れ者の季蔵が、極上の料理で人々を愉しませつつ、江戸の悪にも立ち向かう人気シリーズだ。
50冊目を迎えた心境とは?
和田はつ子・エッセイ「料理人季蔵五十冊記念に際して」
角川春樹事務所の編集の方から、料理人が主人公の時代小説シリーズを書いてほしいというお話をいただいたのが、ついこの間のことのように思い出されます。それがもう本作で五十冊目の刊行なのですから感無量です。十八年の歳月が流れています。ここまで続けられてきた理由は二つあります。
まず一つは江戸時代にあったかもしれない料理を季蔵の手で綿密に紡ぎつつ、北町奉行烏谷椋十郎の命により、市中や季蔵の身に降り掛かる事件を深掘りして解決していくという、かなり欲張った構成、極めて映像になりにくい変わった読み物の形を、小説ならではのものとして出版社が理解してくださったことです。
もう一つは季蔵を取り巻く多彩な人たちの優しさです。厳しい命を下しつつも市中の人々の暮らしを心から思いやっている烏谷だけではなく、先代からの賑やかな常連客や元噺家の大店の主、下戸で人情家の岡っ引き等のわかりやすい優しさもさることながら、手練れで寡黙な大酒飲みの同心と、生い立ちに陰りを宿している同心、二人の秘めた優しさと、心を病みながらも、季蔵を想い続ける許婚が人智を超えた優しさの花を添えています。こうした人たちの優しさに支えられてわたしは筆をとっているような気がします。料理人季蔵シリーズはまさにわたしの贅沢な癒しでもあるのです。
