(写真は、Apple TVの告知ムービーとそのタイトルより)

スターがリアルに世界を旅した壮大なシリーズ

ご存じスター・ウォーズでオビ=ワン・ケノービを演じたユアン・マクレガーと、その大親友の俳優チャーリー・ブアマンの半プラべートなバイクツーリングを描いたドキュメンタリーが『LONG WAY』シリーズだ。すべてApple TVで、見ることができる。

筆者はバイクも好きだし、旅も好きだし、なんならロードムービーも、スター・ウォーズも大好きなので、このシリーズをずっと見ている。

第1作はLONG WAY ROUND。2004年4月14日から、7月29日まで、彼らの住むロンドンから、フランスに渡り、ドイツ、ベルギー、チェコ……そしてロシアを横断し、アラスカに渡り、カナダを通ってニューヨークまで。バイク乗りなら誰もが憧れる文字通り世界一周の旅だ。走行距離はなんと3万km以上で、ロシアの道なき道を走り、川を渡り、死力を尽くした旅をする。

今にして思うと、ウクライナを通り、ロシアに入っていくのだから、現在なら不可能な旅だ。ロシアで無愛想な男に連れられていって、その男の家に泊まったり、野宿したり……今は紛争地域になっているかもしれない場所だが、そこにふつうに人の営みがあることがよく分かる。

バイクはKTMに提供を依頼するが、彼らは失敗すると予想して提供を断り、BMW R1150を使う(正解だったと思うが)。

第2作はLONG WAY DOWN。こんどは2007年5月12日から、8月4日まで。バイクはR1200GS。ロンドンから、いったんスコットランド北端に向かい、そこから南へ。フランス、イタリア、フェリーでチュニジアに渡り、そこからずっと南下して、アフリカを縦断し喜望峰まで走る。

国が国だけに、非常に危険なシーンも多く、ハラハラさせられる。

そして、第3作はLONG WAY UP。2019年9月5日から12月14日の旅。ルートは南アメリカの最南端から、アルゼンチン、チリ、ボリビアなどを通って北上して、カリフォルニアで終わる。

ちょっと趣向が変わって、アドベンチャーバイクに改造された試作型のハーレーダビッドソンLiveWire電動バイクを使用。サポートの制作チームもできたばっかりのリヴィアンの試作EVピックアップトラックを使用。エコ的なテーマを追ったわけだが、これらのEVの充電場所の確保と、トラブルに悩まされることになる。

いずれの旅もリアルなエピソード満載で、当初はユアンとブアマンのケンカとか、バイクならではの転倒や事故、国境でのトラブルなど、本当に旅が終わるのではないかということもたびたび発生するが、そのリアリティが魅力だ。欧米以外の国ではユアン・マクレガーの知名度もさほどではないようで、地元の人たちとの自然な交流も楽しい。

また、一部彼らの家庭の問題や人生の課題も率直に描かれるので、そういった点でもリアルなドキュメンタリーとなっている。

壮年も終わりにさしかかり、それでも走るのか? 旅するのか?

そして、4つ目のシリーズが、今回公開された、『LONG WAY HOME』だ。

筆者もそうだが、いくら旅が好きでも、バイクが好きでも年齢とともに無理はできなくなってくる。ブアマンもバイクで生死をさまよう大けがをしているし、スーパースターのユアンとはいえバイクに乗れば一人のライダー、事故に遭遇するリスクは変わらない(フォースで避けるわけにもいかないし!)。目も悪くなるし、反射神経も低下する。転んで骨を折った際の治りも悪くなるし、後遺症だって残りやすくなる。

1作目の時は30代だった彼らも、今や50代も後半にさしかかろうとしている(ブアマンは1966年、ユアンは1972年生まれ)。同世代の筆者もよく分かるのだが、何歳までバイクに乗れるのか? ここまできて事故をして人生を台無しにしていいのか? という疑問は湧いてくる。

若い時には、世界中の国を旅できると思っていたが、今となってはあと何カ国行けるのか? 絶対行っておきたい国から旅をしなければ……という考えさえ湧いてくる。おそらく体力的には、アフリカやインドで無謀な旅をする機会はないだろう。

そんな、壮年期(中年後期?)の悩みは、スターである彼らの身にもおいても同様。いや、持てるものが多いだけに、喪失感が大きいのかもしれない。

我々は、どこに向かって、どんな旅をするのか?

にも関わらず、彼らは(悩みつつ)旅に出る。

今度の旅は、もう30代の時のような無謀な旅ではない。『LONG WAY HOME』は身近なイギリス近辺の中欧、北欧を巡る旅だ。

バイクはユアンがモトグッツィのエルドラド(850cc)。チャーリーがBMWのR75/5(750cc)。いずれも彼らの生まれ年に近い、つまりは50年以上の歴史を経たビンテージバイクだ。最新のバイクのような猛烈なパワーも、重量もなく、年を経た彼らの身の丈にフィットしている。ビンテージバイクだから故障も多いだろうが、逆に現在のコンピュータづくしの最新バイクと違って手作業で修理もできる。

さほど遠くない自分たち生まれ故郷に近い場所を、ビンテージバイクで旅して、自分たちの人生の取りまとめ方を考えるというのがこの『LONG WAY HOME』のテーマなのだと思う。その結果、彼らはどういう結論に至るのか。もうバイクは降りるのか、それとも走り続けるのか?

筆者もまだ、見始めたばかりなので、この冬、最後まで見たいと思っている。

(村上タクタ)

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