映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』には、このメデューソイドをはじめ、自然や野生生物から強い影響を受けた生き物が登場する。(DISNEY, LIGHTSTORM ENTERTAINMENT)

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』には、このメデューソイドをはじめ、自然や野生生物から強い影響を受けた生き物が登場する。(DISNEY, LIGHTSTORM ENTERTAINMENT)

 有名な映画監督であり、ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラー・アット・ラージ(協会付き研究者)でもあるジェームズ・キャメロン氏が描く幻想的な惑星パンドラは、地球を模倣しつつ、その住民たちが環境とより調和した関係を築いている姿を想像したものだ。そして、米ウォルト・ディズニーの『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が2025年12月19日に劇場公開され、観客は新たな部族や動物たちに出会った(ディズニーはナショナル ジオグラフィックの親会社)。

 この映画に登場する興味深い生物は、新たな部族「ウィンド・トレーダーズ(パンドラの遊牧民)」が乗り物として使っている。メデューソイドと呼ばれる飛行船のような生物で、半透明の翼を広げて空を舞い、大切な乗客を運んでいる。

「巨大なクラゲからぶら下がったガレオン船のようなものです」と、この奇妙な生物の創作に携わった共同プロダクションデザイナーのディラン・コール氏は語る。(参考記事:「【動画】クラゲがすむ『湖』を発見、新種も多数」

 映画に登場する生物は架空のものだが、それらに命を吹き込むプロセスは、想像以上に科学に近い。映画制作陣はアバターの舞台であるパンドラの世界に、奇妙でしばしば発光する生物をどのように創り出したのだろう。(参考記事:「Tレックスは泳げたのか? 映画の描写はどこまで本当か科学で検証」

新たな世界を構築するプロセス

 アバターの中核を成すのは、自然界と深い関係を持つパンドラの先住民族ナヴィだ。ナヴィは周囲の生物と強い絆を結ぶことが多く、メデューソイドは新たに登場した生物のひとつだ。

 チームの一員として、コール氏は監督のキャメロン氏のアイデアの種を受け取り、それを完成形へと開花させる手助けを行う。キャメロン氏は時々、「ぼんやりしたビジョンを持っています。それを明確にするのが私たちの仕事です」

 多くの場合、目指すべきものがはっきり見えない状況から始まる。「まるで会ったこともない子どもの肖像画を描くようなものです」とコール氏は説明する。完成品へと導くのは直観だ。

 幸いなことに、自然が最高のインスピレーション源になる。自然界を模倣することは「長きにわたって効果を発揮してきた戦略です」と米ニューヨーク大学の実験物理学者であるレイフ・リストロフ氏は言う。リストロフ氏はこの映画に関わっていないが、自身の研究ではしばしば生物をモデルにしている。「自然に目を向ければ、想像できる解決策の種類が広がります」

ギャラリー:映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の空飛ぶクラゲ「メデューソイド」 画像5点(写真クリックでギャラリーページへ)

ギャラリー:映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の空飛ぶクラゲ「メデューソイド」 画像5点(写真クリックでギャラリーページへ)

メデューソイドは主にクラゲから着想を得ている。(DISNEY, LIGHTSTORM ENTERTAINMENT)

『アバター』はSF作品だが、デザイナーたちはその世界を現実の場所として捉えようとしている。地球の断片を取り入れ、再構築したり、文脈を変えたりしているのだ。「何百万年にもわたる自然の営みより、午後のスケッチで優れたものができると思うのは、かなり傲慢(ごうまん)です」とコール氏は語る。

次ページ:メデューソイドの創造

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