Interview & Text:荻原 梓

Photo:SHUN ITABA

 Billboard JAPANが新しく書籍の複合チャート“Billboard JAPAN Book Charts”をローンチするにあたり、読書好きの著名人にインタビューする企画がスタート。
本稿のゲストは、テレビドラマや映画への出演のほか、今年は写真集『ナニモノ』を発売するなど、多岐にわたる活動で人気上昇中の吉澤要人(原因は自分にある。)。読書が趣味で、休日はお気に入りの書店でジャンル問わず本を探しているという彼が挙げる、お気に入りの一冊は?

指針となる本を人生の支えに

――吉澤さんは普段どんなジャンルの本を読んでいますか?

吉澤要人:あまりジャンルには縛られずに、結構“ジャケ買い”をすることが多いです。最初にタイトルや表紙に惹かれて手に取ってみて、裏表紙のあらすじを読んだ時に「これは絶対読みたい」と思ったものを買うようにしています。本当にその場で気になったものを買っているので、いろんなジャンルを読んでいる気はします。でも、その中では恋愛小説が多いかもしれない。表紙に惹かれてあらすじを読んでみたら青春恋愛小説だったということが多いんです。綺麗な色の使い方をしているものとか、すぐ買っちゃうんです(笑)。

――原因は自分にある。(以下、ゲンジブ)のパフォーマンスに本から得た着想を反映させることはありますか?

吉澤要人:踊りに関しては文章から着想を得ることはないですね。ただ歌に関しては、僕らはりょんりょん先生というボイストレーナーの方に教えて
いただいているんですが、りょんりょん先生は「歌詞を語るように歌いなさい」と教えてくださるんです。なので、歌詞を分解して理解することに関しては、読書をしていると想像力が広がるので、歌には読書が活きていると思います。たとえば楽曲にテーマがあったり、確実な情景がある歌詞だったらいいんですけど、曲って意外とそれぞれの解釈でよい面もあるので、そういう歌詞をどう表現するかに関しては、読書をしてきたからこそいろんな妄想ができると思います。言葉からいろいろと妄想するのが大好きなので、そういうことはライブ中よりも、レコーディングで「この歌詞をどう吹き込むか」って時に役に立っていると思います。

――いつも本はどんな時に読んでいますか?

吉澤要人:面白いと思ったら空き時間にいつでも読みたくなるので、移動中でも読むことがあります。休日に本を持ってカフェで読むこともありますし、もちろん家で読むこともありますが、自分は好きなことが多くて、映画鑑賞も好きだし、テレビドラマも観たいし、でも本も読みたい。最近は自分の中で優先順位をつけるのが難しくて、今何をするべきなのか勝手に争っています。本って、買った直後が一番読むモチベーションがあるんですよ。僕の中ではそこで100ページくらい読み進めることができれば、絶対最後まで読める。買ったらすぐ読むのが鉄則ですね。じゃないと気になっていた映画とかドラマを観ちゃうので……。

――積ん読も多そうですね。

吉澤要人:多いですね。今日も家の本棚で「あれ?これ読んだつもりだったけど読んでない」って本を見つけました。『spring』(著:恩田陸)という本です。真っ白なジャケットが輝きを放っていたので、それに惹かれて手に取ったらバレエの小説だったので、僕はバレエを習っていたのもあって買ったんです。でも、なんで手に取ってすぐに読まなかったんだろうって。

――読んだ本の内容を他のメンバーとシェアすることはありますか?

吉澤要人:(長野)凌大とはします。凌大はそれこそ本を読むので、よく本の話をしています。僕は、『アルケミスト 夢を旅した少年』(著:パウロ・コエーリョ)が大好きなんですけど、凌大に貸したことがあります。

――以前ブログに書いてましたよね。(原因は自分にある。オフィシャルブログ

吉澤要人:そうですそうです。『アルケミスト』について凌大と語り合うのが好きで。2人とも夢見がちなところがあるので、夢の話をすると止まらなくなるんです。逆に凌大が僕に本を薦めてくれることもあります。凌大は意外と詩を読むんですよ。この前も『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(著:最果タヒ)を読んでいて、「凌大ってそういうのも読むんだ」と驚きました。

――ゲンジブの曲をBGMに本を読むとしたら?

吉澤要人:絶対無理です(笑)。何も頭に入ってこないと思います。「蝋燭」みたいなチルな楽曲はありますけど、潤くんの声が聞こえたら頭に武藤潤が過ぎるじゃないですか(笑)。そもそも、ゲンジブの曲を聴いたら小説を読んだ気になりそうですし、「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」のように文学作品にちなんだ楽曲もあったり、歌詞に哲学的な表現も多いから、読みながら曲を流すというよりは、読み終わった後に聴いてもらいたいと思います。

――リリック自体がすでに一冊の本のようでもあります。

吉澤要人:そうですね。リリックを深く読んでいただくのはすごく楽しいと思います。

――好きな作家さんはいますか?

吉澤要人:『ストロベリームーン』を書かれた芥川なおさんという作家さんが好きで、出版された時に読んだことがあったんですが、『ストロベリームーン』が映画化されるにあたってたまたまオーディションを受けさせていただくことになったんです。作中にカワケン(川村健二)という主人公の親友が出てくるんですけど、すごく好きで、ありがたいことにそのカワケン役を映画で演じさせていただきました。それで、「読書が好きでよかった」と思えました。好きだった作品の映画に自分が出演するって本当に幸せなことですし、こんな夢みたいなことがあるだなと思いました。続編の『コールドムーン』もすごく好きで、芥川さんの作品はとても好きです。直接お話をさせていただく機会もあって、小説家の方から聞く言葉はすごく美しいな、と思いました。

――今まで読んだ本の中でお気に入りの本は何ですか?

吉澤要人:お気に入りは『星の王子さま』(著:サン=テグジュペリ)です。断トツで一番好きで、僕の中ではどの本を読んでもこの本を超えるものはないと思っています。

――不朽の名作ですよね。

吉澤要人:世界中で傑作と呼ばれる理由がわかります。みなさんも子供の頃に読むことが多い気がするんですけど、何歳になっても感動できる素晴らしさがあると思います。僕ももう何回も何回も読み返しましたし、グループ活動とかで行き詰まったら必ずこの本を読みます。

――読むごとに感じるものは違いますか?

吉澤要人:その時その時の感情によっても違いますし、年齢によっても受け取り方が変わると思います。僕は4歳の頃に父親に買ってもらったんですけど、当時は親に「読書しなさい」と言われていたので、この本は最初、嫌々読み始めたんです。でもすごく読みやすくて、すらすら読めました。王子様の冒険物語だと思って読み進めていくと、王子様の言うセリフやバラの言葉、キツネの言葉とかが本当に人生の核を突いている気がして。どこを辿っても結局その言葉に辿り着く名言がたくさんあって、大人になって読んでみると、より人生の支えになると思います。

――特に好きなセリフはありますか?

吉澤要人:キツネが言う「肝心なことは、目に見えない」という言葉が一番好きです。あと、そのセリフを言ったすぐ後の「面倒を見た相手には、いつまでも責任がある」って言葉も好きですね。それって自分に置き換えてみると、グループ活動をしていく上でもすごく大切なことだと思うんです。「面倒を見る」というと上から目線になっちゃうけど、特にこの仕事をしているといろんな人に出会います。でも、出会ったからには責任があると思うし、出会って何かを一緒にするとかじゃなくても、もう出会っている時点で、僕とその人の物語が始まっている以上は責任を取らなきゃいけない。この先に何かいいことがあるかもしれないし、何かよくないことが起こったとしても、僕らが出会っている事実があるなら責任があるということはすごく思います。

――グループ活動をしている吉澤さんが言うとより重みがあります。生きていく上での指針になるような本ですよね。

吉澤要人:人生の辞書じゃないですけど、本当にそうですね。あと「儚いものは美しい」ということも、この本から勉強させてもらいました。『星の王子さま』で言えばバラがその喩えにあたると思いますけど、儚いからこそ美しく見える。ずっとあるものを、ずっとあると思わないだけでもたぶん美しく見えるし、見え方も変わる。普通に生きていたらあまり考えないことかもしれないけど、考えてみると自分の人生の幅が広がって、感性も豊かになると思います。

――最近読んだ本の中では何か印象に残ったものはありましたか?

吉澤要人:ずっと気になっていて、ようやく最近読んだのが星野源さんの『いのちの車窓から』です。つい先日『いのちの車窓から2』が出版されたので、これを機にまずは最初に出たものから読もうと思って読みました。星野源さんの綴る言葉がすごく好きで、あのリズム感と、文章からでも伝わる温かみが僕は好きです。僕、自分のエッセイを出すのが夢なんです。『いのちの車窓から』を読んで、その夢が深まりましたね。ただ、やっぱり人生いろんなことを経験しているからこそ面白いエッセイは書けると思うんです。だから自分自身も何かあったことはすぐにグループのブログで綴るということは意識してやってますし、この先自分もいろいろと人生経験を積んで、何かのタイミングで書けたらいいなと思います。

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