Text: Mariko Ikitake
Photos: Provided by TAICCA/ Photographer Hiroki Nishioka

 台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(Taiwan Creative Content Agency、以下 TAICCA)主催による【2025 Taiwan x Japan Music Meet】が11月12日~14日に開催された。開催に合わせて、台湾からアーティストや音楽関係者が来日し、日本の音楽関係者とのネットワーク構築を図った。14日には、台湾と日本のアーティストによるセッションイベント【Emerge Fest: Japan 2025】が開催され、国境を越えた音楽の輪をアーティストとファンが確かめる機会となった。

 12日は2つのパネルセッション――前半「Japanese Music Market and Trend(日本国内の音楽マーケットとトレンドについて)」と後半「”LIVE” in Taiwan- Road tothe Live Performance」――を通して、日本と台湾における音楽とライブでの成功のカギを互いに見つけあう時間になった。

野村優太氏(左)、野本晶氏(右)

 前半には、本ショーケースの共同オーガナイザーであるCUEWの代表、野村優太氏と、大手レコード会社やDSPを経て、現在は日本コロムビアグループの執行委員である野本晶氏が登壇し、台湾の音楽関係者に向けて、日本国内の音楽マーケットや音楽フェスティバルがわかりやすく伝えられた。

 まず日本では、有料ストリーミングサービス利用者数が増加傾向にあり、YouTubeで音楽を聴くリスナーが圧倒的に多く、次にサブスクリプションサービスを通して音楽に触れるユーザーが多いことがデータをもとに説明された。野本氏は「若いファンベースを持つアーティストは、ストリーミング利用率が高い傾向にある」と分析。ラジオやテレビといった従来のメディアとストリーミングや動画配信サービスでは属性やタイプが異なるため、発信方法をうまく使い分ける必要があると推奨した。ストリーミングサービスなどを通して、ライト層への知名度を広げつつ、リアルライブを通して、実体験でしか得られない楽しみをファンに提供することが重要と唱え、日本・台湾の音楽関係者たちも大きく頷いた。

 ここで日本と台湾のアーティストコラボの実例とその効果が説明された。まず、Wendy Wonder(台湾)とBillyrrom(日本)による「Nightglow Dreamer」(2024)。ミュージック・ビデオは台湾で撮影され、ビジュアルからも台湾らしさを前面に出すことで、2組の息の合ったコラボレーションをアピール、国境を越えた音楽コラボレーションがより意味を持つことになった。Billyrromは数年前から台湾の音楽フェスに出演するなど地道な活動を続け、今では大きなステージを任されるまでに成長、台湾内での知名度獲得に成功している。

 LIU KOI(台湾)は2024年にSala(日本)と「May flowers」、reina(日本)と「10 out of 10」をリリース。複数アーティストとコラボレーションすることで相互送客が起きやすくなり、また、Spotify TaiwanのRADAR Artistに選ばれたLIU KOIの台湾内のストリーミングが高まることで、日本のリスナーへその話題性が届きやすくなるというクロスプッシュ効果があったという。

 しかし、日本と台湾では言語の壁がある。このセッションに参加した台湾アーティスト、Everydazeからの「台湾人アーティストにとって、英語と中国語のどちらが効果的でしょうか?」という質問に「SNS発信は現地の言葉が最も効果的(日本なら日本語)。ファンベースができたときに日本語発信があるとファンは喜ぶでしょう」(野本)、「逆に音楽には言語の推奨はない。オリジナリティにフォーカスしたほうがいい」(野村)と返答が来た。中国語の書体に対応できない、もしくは検索されにくいという観点から、公式英語名があるといいと口を揃える。

 トピックは日本の音楽フェス事情に。全国で400以上のフェスが開催され、動員数は過去最大にまで伸びてきている昨今。大小問わず、アジアにフォーカスしたステージやアジア圏アーティストの出演も増加傾向にあるという。また、香港の音楽フェスティバル【Clockenflap 2025】のVaundy、ジャカルタ【Joyland Festival 2024】のHYUKOH & Sunset Rollercoaster、韓国【Incheon Pentaport Rock Festival 2025】のASIAN KUNG-FU GENERATIONのように、音楽フェスのトリを日本人や台湾アーティストが任される機会も増えており、アーティストにとっても新たなファン獲得のチャンスが増えている。

 一方、音楽関係者を対象に、アーティストの紹介やビジネスミーティング、レーベル契約、フェス出演オファーへとつなげるショーケースや関連イベントは、日本でも台湾でもまだまだ少ない(日本は年間3~4つ、台湾はもっと少ないという)。イベンターは、メジャー/インディー問わず、“輝く”アーティストを見つけることができ、企業やレーベルは新たな作品やアイデアを生み、ビジネス拡大につなげることができるため、こういった機会が増えれば音楽の国際交流はもっと盛んになるだろう。

 後半パネルセッションには台湾の大型音楽フェス【浮現祭 Emerge Fest.】を手がけるEmerge Musicの代表・老諾(Nuno CHEN)氏と、若手ミュージシャンが多く所属するレーベル〈Shabby Boyz〉の代表である高翔煜(XY KAO)氏が登壇し、イベンター/アーティストの視点で台湾のライブ/フェス実情を説明した。

 まず、ここ3年間のコンサートのメイン客層は15~39歳だが、コロナ禍以降、ライブ産業収益は微幅な成長にとどまっている。TAICCAの調査によると、2024年のポップ・ミュージックイベントの参加率は4.3割で、過去5年間で2番目に高い数値を記録した。そして、TAICCAの2023年音楽産業に関する年間調査によると、2023年のコンサートや音楽フェスなどのイベント数は1,800件を超え、2022年と比べて0.48%の成長率を示した。チケットプラットフォームのデータによれば、2023年のセールス金額は67.17億台湾ドルで、2022年比で131.39%の成長率に達している。


Nuno CHEN氏(左)、XY KAO氏(右)

 日本や韓国など海外アーティストによる台湾公演が盛んで、フェスやコンサートにはお金を使うが台湾アーティストの単独コンサートにはあまり使われていないという。Nuno氏曰く、「コロナ前は政府機関と一緒に無料イベントを多く開催していましたが、コロナ禍はリスク回避のためそれが減り、ファンの有料参加が増えました。パンデミック終了後、無料参加の機会が増えたため、無料と有料を天秤にかけるお客さまが増えました。今は、特に若い客層にはフレッシュなものを提供することが肝であり、課題です」と説明。台中で開催される【Emerge Fest.】は毎年100組以上のアーティストが出演、その4割を海外アクトが占めている。地域連携を大切にし、ローカルグルメにも力を入れることで、一つのフェスでいろんな国の音楽が楽しめる魅力的なフェスとして、各日2.5万人来場に成功している。また、【Emerge Fest.】は国際交流にも注力しており、バックステージの食事会やアーティスト同士のセッティングの機会を設けるなどして、台湾と海外アーティストの交流に手を貸している。

 そうした機会を通して、日本と台湾のアーティストにはどういった可能性が広がるだろうか。限られたリソースで効果が見られるプロモーションはやはりSNSだ。「ライブ体験がいちばん重要ですが、SNSだと開催後も長い期間、現場や観客の温度感が話題になるのでいいツールです」(Nuno)、「25歳以上には長文テキスト、若いオーディエンスには短いリールを活用して、アーティスト個人の魅力をどう出せるか重要視しています」(XY)と、イベント側もアーティスト側もSNSとは切っても切り離せない関係にある。

 アーティストブッキングの選考基準はどうだろうか。【Emerge Fest.】の場合、客層や集客の面から、話題性のあるアーティストを常に探している。「日本のアーティストをブッキングする際、SNSを参考にすることはありますが、センスで選んでいることも多いです。観客に『自分たちが見つけた!』と思わせるアーティストを見せていきたいと思っています」と、あくまで数字やバズは参考にするだけで、アーティストの音楽性を重要視すると話す。【2026年浮現祭Emerge Fest.】は、2月28日と3月1日に台中清水鰲峰山運動公園で開催される予定で、こちらには結成25周年の台湾の人気バンド=滅火器 FIRE EX.や今年自身初のアジアツアーを行ったAmazing Show(美秀集團)、日本からはthe cabsやハク。、すりぃ、go!go!vanillas、kurayamisaka、韓国からTOUCHEDやcan’t be blue、Ghost Bookstore、タイのSERIOUS BACONやpamiといった国際色豊かなラインナップが発表されている。今後も続々アーティスト発表が控えているが、現時点でまさにアジアンミュージックを網羅したイベントになることは想像できる。

 2日目のパネルセッション「Success case: Taiwan and Japan & status update of Japan market(台湾と日本の成功例、日本市場の最新事情について)」には、株式会社ポニーキャニオン音楽マーケティング部の石井慎一氏と、ライブハウスの月見ル君想フに15年勤務、現在はCUEWをはじめ、日本と台湾の架け橋となるコーディネート業務やイベント企画などを行うタカハシコーキ氏が登壇。ここでも実例をあげながら、アーティストやレーベル側が他国で知名度を上げる参考となるエピソードが明かされた。

 ポニーキャニオンは、chilldspotやHakubi、Kroiといった所属アーティストと台湾アーティストのコラボや台湾のイベント出演、単独公演の機会が近年増えている。Kroiは2022年の本ショーケース関連イベントの出演を機に台湾の音楽フェスの出演を獲得した。現地でMV撮影やメディア取材対応を行い、台湾内で中長期的な露出を実現。その効果をバンド側やレーベルスタッフが実感し、ほかの所属アーティストへもその知見が広がっていったという。また、HakubiのMV「何者」は台湾・嘉義市で撮影されたのだが、TAICCAを通してできたコネクションが嘉義市政府文化局の協力へと導いた。

 両日とも1on1ミーティングなる参加者同士の20分程度のテーブルミーティングが設けられた。各テーブルには通訳が同席し、短い時間ながら、日本を代表する音楽フェスティバルを主催するイベンター、ライブ事業やアニメ&ゲーム事業を主とするレコード会社や企業が台湾アーティストのマネジメントと直接コミュニケーションを図った。手を組むことで実現できそうなアイデアの共有や、活発な情報交換が行われた。


懇親会ではEverydazeによるパフォーマンスも

 Billboard JAPANはNuno氏とXY氏に個別取材を実施。Emerge Musicは日本、韓国、タイに独自のコネクションを持っており、レーベルに直接オファー、【フジロック】や【Busan Rock Festival】側と協力してフェス間でアーティストをスワップ、そして応募制オーディションを通して、アーティストブッキングを行っているという。台湾、日本のどちらにおいても、グローバル展開を考える際にはまず互いが思い浮かぶほど、両国は良好な関係性と多くの成功例を積んできた。近年はアーティスト同士の交流やコラボも増え、その流れを受けてフェス側も率先して日本のアーティストに目を向けていると話す。

 XY氏も、日本と台湾の長年の良好関係がこうしたコラボレーションや音楽ビジネスの発展を支えていると考える。一方で、台湾と中国の関係や規制の関係上、香港や中国人アーティストを台湾に招聘することが難しいため、必然的にヨーロッパとアメリカ圏アーティストの次に、日本と韓国アーティストの招聘に選択が集中する。また、30歳以下はJ-POPやJ-ROCKになじみがあり、アーティストも日本の音楽に影響を受けているという。台湾で人気の日本人アーティストは5,000~10,000人規模の会場を単独公演で埋められるため、台湾の音楽フェス出演のメリットがそれほど大きくなく、イベンター側はどうにかして出演してもらえるよう策を講じているとも話してくれた。

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