
笑顔を見せる尾上眞秀(撮影・河野 光希)
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公開中の映画「港のひかり」(監督藤井道人)で銀幕デビューした歌舞伎俳優の尾上眞秀(13)。両親を失った弱視の少年役に挑戦し、その演技に絶賛の声が相次いでいる。本紙のインタビューに応じ、映画初挑戦を支えた背景には、母親で女優の寺島しのぶ(52)との絆があったことを明かした。(西村 綾乃)
初の映画撮影でいきなりの難役。眞秀は「孤独の表現が難しかった」と、両親を失って視力も失いつつある少年の心中を懸命に理解しようとした。現場入りの前には、盲学校を訪れて白杖(はくじょう)の使い方を教わり、日常を想像して演技に臨んだ。
寺島とフランス人クリエーティブディレクターのローラン・グナシア氏の一人息子。祖父は七代目尾上菊五郎(83)、祖母は女優の富司純子(79)、叔父は八代目尾上菊五郎(48)という芸能一家に生まれた。
4歳で初お目見えし、歌舞伎役者としての実力は着実に積み上げているが、映画の撮影は別世界。「表現者としての目標」とする母・寺島の姿が常に頭に浮かんでいた。
寺島は第一線で女優としての地位を築きながらもなお道を切り開き続け、2023年10月に成人女性として異例の歌舞伎本興行に出演。来月4日に幕明けする「十二月大歌舞伎」に「芝浜革財布」で再び歌舞伎座に立つことが決まっている。
そんな「何でもできちゃうお母さん」から演技について「表現する時に大切なのは心」と教わった。その言葉を支えに挑んだ今作の撮影。最も苦労したのは「涙を流す場面」。どうしたら涙が出るのか。1人で考え「ゲームで負けたこととか、悔しかった時のことを思い出して泣きました」。悔しさを昇華させ、「心」を込めて全身全霊で表現。その結果、舘ひろし(75)演じる元ヤクザの漁師を“心の目”で見て交流する姿に引き込まれる人が続出した。「眞秀君の演技が素晴らしかった」「泣けた」などと絶賛の声が次々と上がっている。
「歌舞伎は一発勝負だけど、ドラマとか映画は何度も撮って良いものを使うから大変」。新たな経験を得た思い出を残そうと、寺島が今作を撮影した石川県でブレスレット=写真=を購入してくれた。「お母さんとおそろい。2人の絆の証」。母の背中を追い、自身も今作で“ひかり”を見つけた。
◇尾上 眞秀(おのえ・まほろ、本名寺嶋眞秀=てらじま・まほろ)2012年(平24)9月11日生まれ、東京都出身の13歳。23年5月に初代尾上眞秀を名乗り初舞台。屋号は音羽屋。俳優としては22年にドラマ「ユニコーンに乗って」でデビュー。翌23年、NHK大河ドラマ「どうする家康」に出演した。
▽港のひかり 北陸の漁村を舞台に過去を捨てた元ヤクザの漁師(舘ひろし)と、事故で両親を亡くした弱視の少年・幸太(尾上眞秀、青年期を眞栄田郷敦)との間に芽生えた友情と再会を描く。お互いの存在が“ひかり”となっていく心温まるストーリー。石川、富山でのオールロケで、輪島朝市などでも撮影が行われた。2023年12月23日にクランクアップし、9日後の24年1月1日に能登半島地震が発生。舘は舘プロの俳優ら約60人で炊き出しを行い、被災地を支援した。
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