発売中のNumber1129号に掲載の[特別インタビュー]佐藤浩市「競馬もドラマもチームプレー」より内容を一部抜粋してお届けします。
「ザ・ロイヤルファミリー」の馬主役
写真撮影のため、蛍光灯の灯りを落とすと、そこに浮かび上がったのは、まぎれもない「馬主」の姿だった。
白髪は年齢を重ねることの尊さを感じさせ、シャツの下にはメンテナンスを怠らない肉体が隠されている。そして顔に刻まれた年輪は深く、歓喜に浸った時間もあれば、辛酸を嘗めてきた時間も同様にあったことを想像できた。
俳優、佐藤浩市。圧倒的な存在感が部屋に充ちる。
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10月12日からTBS系で放送される日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」。競馬の世界を舞台としたドラマで、佐藤さんは馬主役を演じる。
「山王耕造。これが今回の役名です。名は体を表すがごとく、僕らが生きてきた昭和の価値観のなかで生きてきた男です。ある種の尊大さがあって、昔気質。今の時代、そうしたタイプの人間は迷惑がられ、時代に即していないと見なすこともできるでしょう。それでもひじょうに情熱がある男です。演じていくなかでひとつ、ふたつ、みなさんにとって魅力ある瞬間が生まれるようにしたいと思っています」
「週末になるとよく渋谷の場外馬券場に行ってました」
佐藤さんと競馬の縁は深く、自らも馬券を買い、楽しんだ時期もあった。
「特に20代前半の頃は、週末になるとよく渋谷の場外馬券場に行ってました。そこに行けば顔見知りもいて……という生活をおくっていたんですよ」
佐藤さんが競馬を楽しんでいた1980年代から’90年代は、シンボリルドルフ、オグリキャップなどの名馬が覇を競い合う時代だった。そして’87年には武豊がデビュー。競馬が若い世代、女性に対しても人気が広がっていった時と重なる。
「面白い時代でした。いろいろなレースが記憶に残っていますが、なかでも’93年の有馬記念は忘れられません。前走が’92年の有馬記念だったトウカイテイオーがいきなり休養明けで出てきました。前年のレースでは11着でしたし、’93年に入ってからは参考にできるレースがありませんから、専門家も含めて誰も勝つとは予想できませんよね。それが最後の直線で1番人気のビワハヤヒデに並び、差し切った。あの興奮、感動は忘れられません」
