サッカー日本代表が“王国”ブラジルから歴史的な初勝利をあげた。サポーターを熱狂させた驚きの逆転劇はどのように演出されたのか。そして、「まさかの敗戦」を喫した世界的名将は何を語ったのか。現地で聞いた“意外な本音”をスポーツライターの戸塚啓氏が詳しく伝える。(全2回の2回目/前編へ)

 クライマックスは71分にやってくる。伊東純也の左CKに飛び込んだ上田綺世が、GKを強襲するヘッドで3点目を奪い取った。

 直後に両ベンチが動く。どちらも3枚替えをする。カルロ・アンチェロッティ監督はこの時点で6枚の交代カードを使い切り、森保一監督は85分に残り2枚のカードを切る。

 最終盤はブラジルが日本ゴールに迫った。残り10分強で4本のシュートを浴びせたが、日本のGK鈴木彩艶が慌てるようなシーンはなかった。ブラジルにとって屈辱的な、日本にとって歴史的な逆転劇が、こうして幕を閉じたのだった。

 試合後の記者会見で、ブラジルのアンチェロッティ監督は「後半は日本の勢いをまったく止めることができなかったが」という質問を受けた。クラブレベルで数多くのタイトルを勝ち取ってきた66歳の指揮官は、「チームはバランスを欠いた。後半は非常に悪い内容だった」と、パフォーマンス低下を認めた。

 堂安律は「日本サッカーにとって、ブラジルという国を倒したのは間違いなく大きな一歩」と話した。そのうえで、「W杯本大会で勝ってこそ本物ですし、彼らが本大会のテンションかって言ったらそこは分からないですけど、手放しで喜ぶ時間はないと思うので」と、表情を緩めることなく答えた。

 世界のトップ・オブ・トップ相手の逆転劇と言えば、22年のカタールW杯が思い浮かぶ。ドイツとスペインを相手に、0対1から逆転勝利をつかんだ。堂安が頷く。

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