2度目のBillboard Live OSAKAで迎えた、特別な日
『WITHDOM PREMIUM LIVE SUITS vol.15』一部レポート

京都発4人組ヴォーカル“パフォーマンス”グループ・WITHDOMが、9月14日(日)、Billboard Live OSAKAにて『WITHDOM PREMIUM LIVE SUITS vol.15』を開催した。『SUITS』とは、毎年恒例となっているWITHDOMの自主企画で、“メンバーも来場者もオシャレに着飾って、歌と音楽を楽しもう”というコンセプトのもと、2019年から行われているもの。今年は昨年に続き、2年連続でBillboard Live OSAKAでの開催となった。まずは一部の模様をレポートする。

開場時間を少し過ぎた頃、会場のBillboard Live OSAKAに到着すると、ドレスアップしたオーディエンスやスタッフが行き交い、活気に満ちていた。Billboardは多くのミュージシャンにとってそうであるように、WITHDOMの4人にとっても特別な会場だ。ちょうど1年前の9月、初めてBillboardのステージに立ったメンバーは、「ひとつ夢が叶いました」と感慨深げに語っていた。

今年は2回目の開催とあって、オーディエンスもリラックスした雰囲気。グループロゴのネオンが灯るステージをバックにして嬉しそうにセルフィーを撮ったり、ドリンクを片手に談笑したりと、思い思いに開演までの時間を過ごしていた。普段はオケでライブを行うWITHDOMだが、『SUITS』はフルバンド編成だ。スーツ姿のバンドメンバー、奈倉翔(Vn)、山本晃平(Gt)、秋山ひろき(Ba)、橋爪拓(Drs)、オカダトモヤ(Key)がステージに登場。軽く音を鳴らして会場の雰囲気を高めてゆく。

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やがて『Who Are You?』のイントロが奏でられると、スーツをばっちり着こなしたSMOOTH(leader.vo)、Ryo(vo)、ROY(vo)、SHVNYA(rap.cho)が上手側から登場。会場は黄色い歓声に包まれる。4人はステージに向かうと思いきや、1階の客席通路を練り歩きながら歌い始めた。いきなりの展開にオーディエンスは歓声をあげて大興奮。パワフルに放たれるボーカルと躍動する楽器隊のアンサンブル、SMOOTHやRyoのがなりからは、この日に対する十分な気合いが伝わってきた。2サビ終わりでステージへ上がり、1曲を歌い上げると続けざまに『Happy Verse Day』へ。大人っぽい雰囲気を漂わせ、歌いながら軽くダンスまでこなす4人。足を蹴り上げる振付はスタイリッシュで佇まいはどこかゴージャス。アクティング要素のあるSHVNYAのラップや、囁くようなSMOOTHのウィスパーボイスにも酔いしれた。そして「Billboardの皆さん楽しんでますか?とろけるような1日にしよう!(SHVNYA)」と放ち、『ICE CREAM』でアーバンに駆け抜けた。

SHVNYAは「今日は特別な空間、Billboard Live OSAKA、そして特別な音、フルバンドで俺たちWITHDOMをたくさん堪能できる、そんな1日です。まだまだ楽しむ準備できますか!」と笑顔で煽り、SMOOTHは「今日はみんなにフルバンドで愛を届けるよ!」と叫び、『Million Ways』 を披露。目まぐるしくフォーメーションを変えつつ、情熱的に美声を響かせていった。彼らの地元・京都をレペゼンした『Romantic Kyoto』では、京都の観光地が続々登場する歌詞に合わせ、手をワイパーにして巻き込み楽しませる。和と歌モノを融合したサウンドは耳心地が良く、懐の深いアンサンブルに絡まり合うハーモニーで聴く者を魅了した。

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MCでSHVNYAは、ちょうど1年前の2024年9月15日の『SUITS』を思い返す。「またBillboard Live OSAKAに帰ってきました。由緒正しきこの会場でできること、本当に嬉しく思ってます」と喜びを語った。SMOOTHは今日の日を楽しみにしすぎたあまり、3日前にものもらいができたと告白。病院で親切な先生に診療してもらった時のエピソードを2段オチで話して爆笑をかっさらう。WITHDOMのもうひとりのお笑い担当のRyoは「ようできた作り話ですねえ」とツッコんで盛り上げ、仲の良い彼ららしい和やかなトークを展開した。

バンドメンバーを紹介し、ここからはバイオリンの奈倉翔もジョイン。初の弦楽器とのコラボで奏でられたのは、バラードソング『報告』。ROYの透き通る歌声、Ryoの伸びやかなロングトーン、やわらかなコーラスを包括するバイオリンの音色が美しく、またWITHDOMの楽曲の可能性を広げてくれた。

岡田のピアノと奈倉のバイオリンが極上のアンサンブルを紡ぎ出した『Ghost』では、オートチューンをきかせたボーカルで、曖昧な関係で葛藤する恋愛感情を切なく歌い上げ、幼馴染への秘めた恋心をテーマにした『嫌い』では、泣きそうになるほどの高音や、<全部好きで、嫌いだ>とリアルな感情を叫ぶように表現したSHVNYAのセリフパートに共鳴して、じっと聴き入るオーディエンスの姿が印象的だった。3曲をバイオリンと共に演奏し、ここで一旦奈倉がステージを去る。と、いなくなったはずのバイオリンがどこからか聴こえてくる……。正体はRyoのエアバイオリン。昨年のエアサックス同様に「無駄にクオリティ高い(ROY)」と言わしめる実力で、会場を湧かせつつ笑わせていた。

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さらに「今日ね、僕好きな人来てるんですよ」というSHVNYAの言葉にざわつく客席。その人は「お母さん」。そこから「もう1人の好きな人探しに来ました」という不思議な展開になり、「僕のカッコ良い一言で、みんなイチコロになると思うんで」とハードルを上げて<Hey Girl♪>というも、客席の反応はいまひとつ。そこで白羽の矢が立ったのはバンドメンバーの岡田。急に振られた岡田は慌てていたが、じっくり溜めて<Hey Girlー!>と高らかに叫び、『Hey Girl』へ。曲中はメンバー4人が最前に座っていた観客2人にロックオンし、目を見てグルーヴィーに歌いかける。なんと贅沢で素敵な時間。漢らしい姿を見せると、「夏にぴったりの曲を」と言葉を添えて『Mermaid』を情熱的に歌い上げた。ステージの後ろでは、Billboardならではのブルーのカーテンがキラキラと光っていた。

ここからはラストスパート。ヘヴィなロックサウンドからクラップが弾けた『Popcorn』で牽引し、クールながらも熱いパフォーマンスで声量も熱量もぐんぐんアップ。さらに『VENUS』では、稲妻の軌道を思わせる振付や2:2の軽快なダンス、アクティングやターンで耳も目も楽しませる。SMOOTHの「Make some noise!」という煽りに呼応した客席も、楽しそうに手を上げて身体を揺らしていた。

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一部も残り1曲というところで、出演者全員で記念撮影。SMOOTHは「フルバンドはオケと違って全員で音を奏でてるわけやんか。生きてるよね」と、普段のライブとは違う生演奏の実感を口にする。SHVNYAは「今回バンドメンバーは変わりつつも、サポートメンバーも1人増えて、Billboardに向けてめちゃくちゃ進化していきました。改めて今日は来てくれてありがとうございます。1年ぶりにBillboardのステージに立てたことが嬉しいし、みなさんが来てくれて笑顔になってくれたことが本当に嬉しいです。これからもWITHDOMの音楽をよろしくお願いします」と感謝を述べた。

6月に行われた国際的なタレント発掘プログラム『JAPAN TALENT EXPO』で、Billboard Live OSAKAに立ったRyoは「1年ぶりの『SUITS』、たくさんの方にWITHDOMの音楽を届けられたことを幸せに思います。実は僕、ソロでこのステージに立つ機会がありまして。自分の中で悔しい思いをした部分もあったんですけども、今日WITHDOMと最高のバンドメンバーとたくさんのお客さんのおかげで、さらに楽しい思い出になったと思ってます」とBillboardでの思い出を更新したと力強く語っていた。

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リーダーのSMOOTHも、改めて1年ぶりのカムバックの喜びを述べて「長いこと生きていると経験が増えて、楽しいことも全部既視感に思えて、新しい楽しみを発見することが徐々に難しくなっていくじゃないですか。楽しいことばかりじゃないし、”楽しいことあるかな”、”退屈やな”と思って生きてる人もいるんじゃない?でもその中で、いつもと違う空間で、こうやってたくさんの人と時間を共有できるのは、本当に素敵なことやなと思います。こういう時間を大事にして、これからもWITHDOMをやっていきたいなと思います」と、特別な時間の尊さを噛み締めた。

ROYは「悔しい気持ちもこの1年でいっぱいあったし、スム(SMOOTH)さんが言ったように、何気ない毎日の中でも自分にとっての幸せを見つけていった結果、今この舞台に立ててると思います。Zeppワンマンもあったし、みんなのおかげで『Algorhythm』(5月リリース)がCDアルバムデイリーランキング1位を獲れたし、ツアーも回れたし、目に見えて大きいことはいっぱいあったけど、やっぱり日々生きてたらそうじゃないことの方が多いやんか。多分ここにいるみんなは、俺たちと同じ想いを持って、WITHDOMの音楽が好きで、今この空間を共有してると思います。だから俺たちの想いも、みんなの日々の想いも全部紡いでこれからも歌っていきます」と丁寧に述べて、ラストチューン『日常』を披露。これ以上ないほどあたたかな雰囲気で、優しく満たしていった。最後にSHVNYAは「ありきたりな毎日も今日という特別な1日も、これからもみんなで上を向いて笑って過ごしていきましょう! Billboard Live OSAKA、特別な時間になりました!」と高らかに叫び、4人でお辞儀をし、手を振りながらステージを去っていった。

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昨年の『SUITS』は、一部・二部ともにソロコーナーやカバー、即興を織り交ぜた構成で特別感を演出していたが、今年の『SUITS』の一部はシンプルに演奏と歌唱でガツンと魅せていた。昨年1月のZepp Nambaワンマン公演や今年2月のZepp Shinjukuワンマン公演やアルバムリリースなどの経験を経てさらに実力をつけたからこそだろうか。洗練されていくパフォーマンスと堂々たる佇まいは頼もしく、同時に変わらないゆるっとした4人の空気感に安心した。この日の特別な空間の思い出は、しっかりとそれぞれの日常の中にも溶け込んでいくだろう。

退場時には、早くも来年2月8日に東京・EX THEATER ROPPONGIと2月28日大阪・BIG CATで行われるワンマンライブ『DREADOM』のフライヤーが配布された。WITHDOMはこれからも武道館という夢へ向かって歩みを進めていく。彼らの今後が楽しみだ。

Text by 久保田 瑛理
Photo by Rickey

(2025年10月 6日更新)


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