米人気歌手テイラー・スウィフトの存在感は不動だ。米大統領を除けば、全米の話題をここ何年間も独占してきた。12枚目のアルバム「The Life of a Showgirl(ザ・ライフ・オブ・ア・ショーガール)」が3日に発売され、この週末は映画館で限定公開の発売記念イベントが開かれる。
スターを持ち上げては容赦なく切り捨てるサイクルがソーシャルメディアによって加速しても、これだけ長期に人気を保っているのは異例だ。1人の有名人というより、最高経営責任者(CEO)としての自らにマーケティングや戦略、リスク管理の専門家チームを従えるという、一種の企業体に近い存在だ。
彼女の資産は21億ドル(約3090億円)。ブルームバーグ・ビリオネア指数が10億ドル超の富豪の仲間入りを伝えた2年前から、約10億ドル増えた。増加分の一部は興行記録を更新した「Eras Tour」や公開中のコンサート映画による収益だ。
ストリーミング配信からの収入も寄与している。スポティファイのランキングでスウィフトは、2024年まで2年連続、世界で最も再生されたアーティストに選ばれている。さらに、米プロフットボール(NFL)のトラビス・ケルシー選手から贈られた豪華な婚約指輪も話題になった。加えて、今年5月には投資会社シャムロック・キャピタルから初期アルバムの権利を買い戻し、音楽カタログの全作品の権利を自らの手に収めた。

「The Life of a Showgirl」のカバー
Photographer: Mert Alas & Marcus Piggott
純資産増加の背景には、退屈な話だが市場要因もある。資産の大部分は現金資産で、投資に回されているとみられる。メリルリンチで金融アドバイザーを務めてきた父親の助言もあるだろう。
2年前の富豪仲間入りの時点で、スウィフトはキャリアの絶頂に達したと見受けられたが、その後も勢いは止まらない。Eras Tourのさなかに発表したアルバムは評価が分かれたものの、彼女の影響力は音楽にとどまらない。
インスタグラムや楽曲表現を通じ、誰もが共感できる苦悩や、自身の喜怒哀楽を伝達。こうして、自分たちを引きつける強い物語を求めるファンに見事に応えてきた。スター選手との交際はロマンチック映画のようであり、同時にNFLにも新たなファン層を広げている。
スウィフトが異彩なのは、その巨額の富の源泉が自身の芸術表現そのものである点だ。化粧品や香水、広告契約などの副業に依存する他の著名人とは対照的に、音楽活動とその物語性で富を築いている。彼女の人生そのものが、進行形の壮大な叙事詩として価値を生んでいる。
今後も同じペースで資産を積み上げられるかは不透明だ。楽曲はこれまで、憧れや失恋、裏切りといった普遍的な感情を主題としてきた。結婚生活の幸福を題材にするのは、芸術にとって難しい領域だが、彼女とマネジメント会社13マネジメントなら、収益に結び付けることができるのだろう。
原題:Taylor Swift Has Another Billion Dollars: Businessweek Daily(抜粋)